はねおかの麻雀遍歴 第0章その2~ガンダムウォー 前編~
ごきげんよう、はねおかです。
今回は前回の続きとしまして、ガンダムウォーというTCGについて書きたいと思います。
MTGにはローテーションというシステムがあり、大雑把に言えば「新しいカードが出ると前のカードは使えなくなる」といったシステムで、これによってMTGは新鮮なプレイ環境をプレイヤーに与えています。
さて、僕が同級生に誘われてMTGを始めた頃は高校生でした。
当時はまだ今ほどインターネットが身近な世界ではありませんでして。
TCGプレイヤーが情報を得るなら、「ゲームぎゃざ」という雑誌が唯一でした。
プレイ環境が変わるということは、今まで使っていた愛着あるデッキを捨て、カードプールから新たなデッキを探り、構築してはメタゲームを読みブラッシュアップしていくことを迫られるということです。
当時は自由に使えるお金もない高校生。この制度は当時の僕にとっては厄介なシステムでした。
そこで出会ったのが、ガンダムウォー。ローテーションのないTCGです。
とはいえ、ローテーションのないTCGといえば、遊戯王なんかもありますが、なぜかそちらには手を出さずにガンダムウォーを選びました。
別にガンダムという作品にはあまり興味はありませんでして、プレイし始めた当時は0083を見たことがある程度で、他はスパロボに出てくる機体、という印象しかありませんでした。
当時、僕は「幻想水滸伝II」というゲームをやっていて、それには通常のRPGパートとは別に、戦争イベントという戦略シミュレーションゲームを行うイベントがありました。
僕はこの戦争イベントが好きで、その延長上として戦略シミュレーションゲームの「スーパーロボット大戦F」に手を出します。
ご存知、「ニュータイプにあらずは人にあらず」という、ゲームバランスが不安定なゲームとして有名ですね。
さて、幻想水滸伝IIの戦略シミュレーションパートでは、歩兵は移動力1、騎馬能力を持つ兵は移動力3になります。
そんな中、スパロボFをリアルルートで始めた僕に、衝撃が走ります。
「なんだこの移動力!?」
MSでありながら、メタス(MA形態)に匹敵する移動力。
画面を埋め尽くさんばかりの緑色の移動可能範囲に、僕は心を奪われます。
まぁ、スパロボFのリアルルートといえば、序盤からMSのメイン武装であるビーム兵器を潰してくるビームコート持ちのヘビーメタルが敵に出てきたり、コロニー内では地上扱いなので陸BのGP-01Fbは役立たずという、リアル系に厳しいゲーム。
攻略サイトにおいても、最弱機体に名を連ねています。一応主人公機なんですけどね…
とにかく、この特徴ある機体に心を奪われた僕は、レンタルビデオショップで0083をレンタルして見ました。最初のガンダムというアニメです。
まぁ、0083という作品については今でも賛否両論ありますが、緻密なメカ描写と「ガンダムとガンダムが戦う」という描写は、後のガンダム作品へと影響を与えたようでして。
とにかく、ローテーションのないTCGとして始めたガンダムウォー。
ギレンの野望編スターターを買いまして、そこから僕のガンダムウォー人生が始まります。
MTGは、「デッキ下限枚数は60枚、同じカードは4枚まで」というルールがあります。そして、これを初心者が勘違いすることがあります。
「キッチン・シンク」と呼ばれているそうです(当時はそんな用語知りませんでしたが)。
初心者は、「デッキに入れていいカードが分からない」ので、「なんでもデッキに入れてしまおう」とデッキ枚数が無意味に増え、その結果「キーカードを引く確率が下がる」ことで勝てないという負のループに陥ります。
デッキコンセプトに則ったカードを入れること。
デッキ枚数は下限ギリギリにしてキーカードを引く確率を上げること。
デッキに投入するカードを選別してデッキパワーを上げること。
これらはTCGプレイヤーとしては常識なのですが、MTG、ひいてはTCG初心者の僕は気が付きませんでした。
さて、このガンダムウォーですが、デッキ枚数が残りライフというゲームシステムなので、デッキ枚数は50枚と決まっています。
僕は人生の内十数年はTCGに関わってきまして、それはもう自分の好き勝手にデッキを組んで遊んできましたが、流石にルールには従わなければなりません。
ここで初めて「デッキに投入するカードの選別」という、TCGプレイヤーがデッキ構築をする際に必要なことに触れたのです。
初めて作ったデッキは、青単高機動デッキ…まぁそんなアーキタイプはないんですが。
僕の好きなガンダム試作1号機フルバーニアンは、当時はほぼアンブロッカブルな、初めての実用的な高機動持ちユニットでした。
高機動は、MTGでいえば「飛行」にあたる能力なんですけども、月下の戦塵では実用的な高機動持ちユニットはガンダムウォーにはいませんでした。挙げるとしたら、セイバーフィッシュ+コアブースターくらいでしょうかね。青ウィニーなんで、防御してくるよりも殴りに来る方が多いわけで、まぁ防御されることはない。シャア専用ザクⅡ(プロモ)は高機動持ちユニットでしたが、当時は緑に中速というアーキタイプはなく、せいぜいファンデッキ止まり。ガンダムエクシア(19th)やガンダムF91(ハリソン機)もなかった訳で、まぁほぼアンブロッカブル。
ギレンの野望編の高機動型ガンダムと宇宙・地球で高機動両面アタック。相手の攻撃はキャントリップ拠点でブロック。不意打ちに「猛追」という、これまた僕の好きなフルバーニアンが書かれたイラストのカードでした。そして当時は最強の回復カードと言われた決戦前夜…まぁ、好きなカードで遊べていたので、不満はありませんでした。
さて、そんな好きなカードで遊んでいる僕に、ある情報が入ってきます。
カードの弱体化、すなわち「エラッタ」です。
これにより、月の支援者というカードにエラッタがかかります。(他にも色々なカードにエラッタが入ったので「大規模エラッタ」と当時は呼ばれました)
僕の使っていたデッキでは、Gが必要な時はGを、Gが不要ならドロー拠点を持ってきてキャントリップドローに変換していた訳ですが、このテクニックができなくなります。
恐らく、捕獲ZZを弱体化させたかったんでしょうね。エラッタ前は月面民間企業をサーチできましたし、拠点サーチからの反撃準備でドローもできましたし。
さて、バンダイの意向はとにかく、流石にGのみをサーチするためだけのカードにデッキの貴重な枠3枚を潰すわけにはいかず、僕の青単高機動というデッキは廃棄せざるを得なくなりました。
当時、自由に使えるお金が少なかった高校生である僕達がカード資産を確保するには、トレードが必須でした。お互いに使用する色を決めておいて「あなたが使う色のカードはあげるから、私の使いたい色のカードはちょうだいね」と決めておくことで、カード資産をある程度確保していました。
僕は青と、なぜか緑も貰いました。知人には赤、もう一人(僕にMTGを勧めてきた同級生)には白をあげていました。
さて、ガンダムウォーには「空ブロック」というテクニックがあります。
今(まぁもうガンダムウォーはサービスが終了して十数年経ちますけど)ではカミーユ(14th)で敵軍ユニットをロールしたり、デュオ(DB2)が乗ったフォースインパルスガンダム(DB7)を手札に戻したりと、それなりに意味のある行動なんですが、当時はそういったカードがなく、強いて挙げるならガンダム試作1号機フルバーニアン(8th)でリロールして防御して「あれ~攻撃しないんですか~?じゃあ防御出ちゃおっかな~w」と煽る程度にしか使えませんでした。(まぁ赤単サイコミュや焼きのある緑相手にはやりませんが)
とにかく、フルバーニアンを使っていた僕は「相手ターンに相手がユニットを出撃させていなくても、自軍ユニットがリロール状態ならば防御に出撃することができる」という事を知っていました。
そんなある時、カードを眺めていたら飛び込んできたユニットがいました。
キュイ。
ガンダムファンでも「なにこれ?」と思うような機体です。
作中では、ランバ・ラル隊がホワイトベースに取り付くために使ったそうですが、あいにく僕はファースト・ガンダムは見たことがありません。
TCGにおいては、書かれている効果が全てな訳ですので、その出典元なんてのはどうでもいい訳でして。
なのでキュイの活躍がどうだったかについては触れません。
先程、「相手が出撃していなくても防御に出ることが可能」という話をしました。
そして、僕の手元には青のキャラクターがいっぱいありました。
青ウィニーは、当時のトップメタである赤単サイコミュに挑めるデッキでした。背水ウィニーはメタとか関係なくいたので無視します。
さて、青ウィニーには、ユニットをリロールするカードがたくさんあります。
例えば、コウ・ウラキ(3rd)でプロトタイプガンダム(SP)をリロールして1ターン目から打点を与えたり。
また、カツ・コバヤシ(4th)でロール状態のユニットに飛び乗ってリロールして相手の防御を返り討ちにしたり。
そうです。
カツ・コバヤシでリロールしてやれば、キュイのテキストを自軍ターンと相手ターンに使うことができるのです。
お誂え向きにカツはクイックを持っています。さらにキャントリップも持つ(MTGで言うならスロートリップですが)ので、キュイのテキストを使えば使うだけ手札が増えていきます。
青には「子供」を持つキャラクターがたくさんいました。そして、ベルトーチカ(3rd)はオペ割りとしてこれまた手札にキャラクターを戻すキュイと相性が良く、リィナ(3rd)はカツと同じくキャントリップ+リロール要員として選択できるのでデッキに「女性」を採用できます。
そこで、子供キャラクターを「若者の成長」でパンプさせ、「巣立ち」でクイックを与えてキュイのテキストを最大限に活かす「キュイデッキ」の構想が出来上がります。
当時はインターネットが普及しておらず、個人がインターネットにアクセスするにはガラケーしかない時代でした。
ガラケーの頃は使ったら使った分だけ料金を請求される「従量制」という料金形態でしたので、ガラケーを使いネットで情報収集すると翌月には膨大なインターネット使用料が発生するという、いわゆる「パケ死」が起こる時代でした。
当たり前ですが、日本中のガンダムウォープレイヤーがキュイのテキストを見逃している…なんて事は有り得ませんでして、当然キュイデッキというものに(実際構築するかは別として)気付かないなんてことはなかったわけですが、当時はネットで情報共有なんて気軽にできない時代。僕は「日本で唯一キュイデッキの可能性に気付いた男」として有頂天になります。
青と緑のカードはある。青の基本ドローソースである政治特権と急ごしらえは持っている。おまけに月の支援者でキュイはサーチできる。
こうして、はねおかはキュイデッキの制作に取り掛かります。
キュイデッキは、ガンダムウォーでも異質なデッキです。
キュイという名前と見た目のダサさ。
防御1のユニットにフィニッシャーを任せるという暴挙。
お互いのターンに出撃するという特殊なプレイング。
「ユニットに乗れるキャラクターは1枚まで」という原則を破って1枚のユニットに大量にセットされるキャラクター。
ユニット枚数以上にキャラクターを入れるという特異なデッキ構成。
戦闘力というガンダムウォーのフェアデッキがダメージを与える手段ではなく、本国へのダイレクトアタックという特殊な勝ち筋。
翌日、学校で披露すると、あまりにも特殊なデッキ構成で相手を翻弄。そして同級生から称賛の声を貰います。
こうなったら止まりません。キュイデッキはブラッシュアップされていきます。
キャラクターを1枚引けばそこから3枚持ってこられる「7弾の黒い三連星(ガイア・オルテガ・マッシュ)」
脆いキュイを守る「脅威の装甲」
あえて黒い三連星を2枚ずつ積んで余った分を火力にできる「震える山」
キャラクターを確保しつつキュイを落として釣る「パイロットの現地徴用+ケリィ・レズナー(4th)」
これらのカードが集まり、「青のドローとサーチ、緑のクイックキャントリップユニットを出して、3ターン目からキュイ+黒い三連星+カツで各ターンに6点ダメージを飛ばす」というコンセプトのキュイデッキが完成したのです。
当時はそこまでカードインフレが起きていなかったので、各ターンに6点、つまりは3ターン目から12点ダメージ(しかも直接ライフにダメージを与えるため実質防御不可能)を飛ばすキュイデッキは高打点でした。さらに、テキストであるため、相手がダメージ判定ステップの規定の効果でこちらのライフを0にする前に相手のライフにダメージを与えるため「引き分けさえ許さない」という完璧ぶり。
本国へのダメージを無効化するオペレーションに「ジブラルタル空域」がありますが、まず採用されないカードな上、オペレーションなのでこちらはベルトーチカで処理できます。
自分が作ったデッキというのは、愛着が湧くものです。
例えばMTGでは「ターボランド」というデッキがあります。
中村聡氏とZvi Mowshowitz氏が好んで使ったことで有名ですね。
中村氏はこのデッキのキーカード「踏査/Exploration」を「ズヴィ(Zvi Mowshowitz)と愛を確かめ合ったカード」と呼んでいます。
また、Zvi氏も、エクステンデッドのローテーションでターボランドが使えなくなると「The world is scheduled to be ending shortly.(世界は間もなく終わりを迎える予定だ)」と言ったんだそうな。
ガンダムウォーの世界では、キュイデッキは「キュイシュート」と呼ばれ、僕とは違ったアプローチでデッキを作っています。
シュートとは、TCGでは「一撃で大ダメージを与えること」を指します。
キュイだけで一撃級のダメージを与えることは出来ませんが、黒い三連星が「大人」なので「実践経験の差」を使って一撃必殺を狙うデッキだったようです。
僕はこのデッキに愛着を持ち、使い続けました。
当時、千葉の田舎にいた僕は自分の情報発信であるMixiやブログ、ホームページは持っていなかったので「はねおか」を名乗らずいたのですが、周囲の人から付けられたあだ名が「キュイ」になるほどで、その独特な戦術故に通常のデッキ(いわゆるフェアデッキ)と異なる対策をせねばならず、当然ですがキュイデッキなどというデッキのためだけに貴重なサイドボードの枠を潰す訳にはいきませんから、地元の人は僕と大会で当たると「キュイかよ~」とウザがられたものでした。
そんなキュイデッキにも終焉が訪れます。
「水」のテキスト変更、そしてガンダムウォー初の禁止カードである「ブーストキャラ」を産み出し環境を高速化させた「宿命の螺旋」の登場です。
まず「水」のテキスト変更。
これは、それまでの「水」の効果は「水を持つ部隊で出撃すると拠点は防御できない」という地味な効果だったのですが、それに加えて「水を持たないユニットのテキストを消す」という一文が加えられました。
これにより、キュイはテキストを失いますのでシュートができないどころか、艦船でなくなるため大量のセットカードを廃棄せざるを得なくなってしまい、コンセプトが崩壊してしまうのです。
そしてブーストキャラの追加によって誕生したのが「死の旋風隊」デッキでした。このデッキは強襲(MTGでいうところのトランプルに近い効果)持ちなので防御1のキャントリップユニットで相手のダメージをシャットアウトするという戦術が効かず、おまけにアビジョの1点ダメージを与えるというテキスト(チーム効果なので3枚が共有する)で脅威の装甲がないと防御に出られない上にテキストでコインをゴリゴリ削られるという、非常に厳しいものでした。
僕がキュイデッキを諦めたのは、死の旋風隊デッキの存在からでした。ブーストタイタニアは、まぁキリマンジャロの嵐を入れることが出来たのと、地元では死の旋風隊デッキの方が使われていたので当たりませんでした。
とにかく、こうして僕は「デッキコンセプトの先鋭化」「デッキに投入するカードの選別」「オリジナルデッキを開発する魅力」という、TCGプレイヤーとしてのイロハをガンダムウォーから学びました。
そして高校を卒業し、上京した僕はガンダムウォーに深くのめり込んでいくのです。
キリがいいのでここらで終わりにしましょうか。
次回は上京、そしてTCGプレイヤーとしてのスキルを磨いた最新環境について書ければと思います。