本を読み、休み、読み、
・ クリスチャン・ザイデル「女装して、一年間暮らしてみました。」訳者 長谷川 圭
を読んだ。
・ジェンダー表現として斬新なノンフィクション本である、と聞いて読み始めた。
・筆者はシス男性(シスジェンダー:生物学的性別と社会的性別が一致し、異性を恋愛的、性愛的な対象とする、人のこと)だが、突然女装を始める。
・「女性的に振る舞い、女性になること」を目的としない、言うなれば女性用のファッションを取り入れることが目的である。
・ストッキングやネイルから顔面のメイク、少しずつ手入れを広げていく中で、「自身を美しくする行為」を純粋に楽しみ始める。
・しかし女性装を始めたことで、「男性が性指向の対象へ向ける独特な視線」を自ら感じたことで、初めてシス男性の持つ特有の感性を意識すると共にに、男性性の負の側面にも気づくことになる。
・著者はヘテロセクシャルで、シス女性のパートナーと結婚している。
・筆者は女性装を誰にも伝えずに急に始めたため、「周囲からの理解」が全くない状態から始まる。
・女性装があまりにも突然であったために「女装している人とは付き合いたくない!」とパートナーに突き放され、男性である親友からも困惑の目を向けられてしまう。
・しかし女性装を続けていくうちに、自身の「男性的でない部分」で知り合いの女性たちとコミュニケーションを深めていくことで、知り合いの女性たちや、最後にはパートナーとも、より深い信頼関係を築くことができていた。
・書籍の最後で、筆者がヤンキーの集団に強姦を受けそうになる場が記述されていた。
・性被害の当事者としての感覚がかなり克明に描かれており、性被害にあう人間の苦しさが痛いほど伝わってきた。この文章を書くこと自体も辛かったと思った。
・女性的コミュニティーと男性的コミュニティーの隔たりについての考察がこの本には多く登場する。フェミニズムや「男性性及び女性性」(便宜上そう書いたが、二元論的な性別らしさの象徴ではなく比喩である)の性質、その背景についても知ることができる本だった。
・極端に間違ったジェンダー解釈はなく、文章量もさほど多くないため読みやすい。ジェンダー論について関心を持った学生にも、社会人にもカジュアルにおすすめできる1冊である。