同じ日に出現したチーターたちの話
2024年ももう少しで終わろうという12月20日頃、突如として日本のXトレンドをアーマードコアとチーターの文字が席巻した。
ご存知の方も多いかもしれないが、アーマードコア6(以下AC6)のPS版のオンライン対戦にチーターが出現したためである。これにより、ランカーと呼ばれるAC6やり込み勢が激怒と好奇心によりチーターを撃墜する事態へと話題が加速していった。なお、21日13時現在、件のチーターはアカウントを復活させ、ランク帯を荒らし回っており掲示板では健全な対戦ができないとして一刻も早い対処を求める声が上がっている。
しかし話題の本筋はここではない。同日20日、日本とは別の場所…中国でもチーターの話題がSNSトレンド入りすると言うことが起こっていた。中国人の友人から聞いた話で、こちらが本題である。(いい感じの画像が用意できなかったので、最近AC6をプレイし始めた友人と談笑しながらふざけて作った”ハネカ(0歳児)特注I love Rusty号”をタイトル画像に使用)
さて、同日日本のユーザーたちがチーターを断罪している最中、中国では黒神話:悟空(以下黒神話)においてチートプログラムの使用者が1000万人いると報じられていた。
黒神話といえば、圧倒的なビジュアルと西遊記を元にしたアクションアドベンチャーゲームで2024年のGOTYのアクションゲーム部門でも賞を受賞した中国発のビッグインディータイトルである。
黒神話はソウルライク系のゲームだが、難易度は易しめでフロムソフトウェア発のDARK SOULSや上記で記載したAC6など他社のソウルライク系と比べると初心者にも入りやすい、と言うのが良い部分だ。探索面では少し不親切なようで問題点も少なくはないが、決して駄作と呼ばれるような出来栄えではない。
11月19日時点で売上本数は2210万本となっており、そのうち中国国内のユーザー率は88.1%(こちらは9月頃の情報のため現在は乖離する可能性あり)になっている。このまま計算すると売上本数のうち約1940万本は中国国内で売れ、単純に一人一本と考えると1940万人の中国人プレイヤーがいることになる。
そして冒頭のチートプログラムを使用しているプレイヤーは1000万人に上る。この1000万人とは全世界のことを指すのだが、黒神話は”オフラインゲーム”である。チーターが蔓延る所以は対人戦において負けたくない/勝ちたい、と言った感情から使用されるものでオフラインで使用する、と言うのはあまり見ないことだろう。(そう言う手合いは今はMODと同一視されるし)
この1000万人がチートプログラムを使っているのは”全世界”で、と言いつつおそらくほとんどが中国人によるものだ。中国ではこのようなプログラムを使用することはある種一般的で、チート=悪、と言う感覚は薄いそうだ。そしてそれを使用して得た結果を引き合いに出して、使用していない人を下に見る…ありがちである。
友人はAC界隈でチーターが一般プレイヤーたちに断罪される様を見て「中国の感覚と全然違う」と溢していた。(なお友人はチーターに全面的に反対であり、オフラインでの使用にも不快な感情を示しているためご留意いただきたい)
実際のところ、オフラインでチートプログラムを使用することは”自己責任”となるため完全な悪として裁くことは難しい、限りなくブラックなグレーゾーンである。そのため、オフラインゲームである黒神話で攻略するためにチートプログラムを導入することはACに出現したチーターとは異なり完全な悪とは言い切れない。(訴えられれば著作権侵害などに当たる可能性があるためやはり使用してはいけないが)
ただ、何と言ったらいいか。黒神話は他のソウルライク系作品と比較するとそもそも難易度は低めだ。と言うのも普段はソシャゲしかプレイしない、コンシューマーゲームに慣れていない中国人にとっつきやすい設計にされているため難易度が低くなっているのだ。それでもクリアできず、自分を強化する/敵を弱体化させるプログラムを走らせてプレイしているのが中国の現状である。
さらにこの問題を根深くさせているのが中国国内で今も蔓延る男尊女卑問題だ。
黒神話が爆発的に中国国内で盛り上がりを見せているのは”男はより優れ、女は優れた男のためにある”みたいな男尊女卑思想を持つ男性層から非常に支持されている、と言うのが根本的な問題だったりする。(友人によれば発売日頃はとにかくこの男尊女卑思想の男性たちが大手を振って暴れ回り宣伝も男が素晴らしいから!のような感じで謳っているため、それに賛同するような形になりたくないためプレイする気になれないとのことだった)
これにより女性はより馬鹿にされる機運が高まっている(ついでに国外の攻略を見ずに普通にプレイしているユーザーのことも)。上記で少し触れた”探索に難がある”という点について、実は彼らの多くは”攻略サイトを見て攻略した”ことを隠して”自分は優秀だから見つけられたが、お前たち(攻略サイトを見ないでプレイする人たち)は馬鹿だから見つけられない!”と平然と言ってしまうのである。
そしてチートプログラムで掴んだ勝利も”俺は簡単にクリアできたがお前たち(チートを使用しないで頑張っている人たち)は優秀じゃないからクリアできない!”という批判のネタにしかねないのだ。
だから私は問題視している…と言うより心配している。こういった考え方やプレイスタイルが中国国内に留まっているのであればオフラインゲームでしかないので、借り物の翼で掴んだ勝利で喜べる程度のお粗末さでいいのなら勝手にしてくれ、と言った気持ちなのだがいずれ中国発のゲームは増えていく。そしてこれがオンラインに出てきた時、誹謗中傷やチーターの真価が発揮されてしまうだろう。全ゲームファンを敵に回しかねない事態になってしまう。
それでなくとも運営側は誹謗中傷などでオンラインを荒らす、荒らしやチーターとのイタチごっこで下手をすれば一般のユーザーまで離れてしまう可能性すらある”絶対悪”の存在に悩まされる。それが大量に野に解き放たれる可能性が出てきてしまった。そして現行では中国の少ない数の人たちがチートプログラムの使用に対して抵抗がない。このまま行ってはいけない場所に言ってしまうのではないか…心配の種は尽きない。そしておそらくこの問題は当分改善されることないと、容易に想像できることも恐ろしい。
AC6ではプレイヤーたちがなかなかの猛者であるため、ネタとして少し消化してくれたが内心は彼らも激怒している。決してレイドボスなどと思って見過ごしているわけではなく通報し続けている。ゲームバランスを破壊するチートプログラムは悪であり、犯罪でもある。このような愚行を起こす前に自らの行動がどのような結果をもたらすのか立ち戻ってほしい。
そして黒神話で殊更露見することになってしまったチートプログラム使用問題が中国国内から出てこないこと、国内で解決することを切に祈る。ゲーム業界が発展してくれることは嬉しく思うが、チートなんてものまで流行ってくれなくていい。ただただ遊ぶ場所を破壊する行為でしかないのだから。
この件については今後も注視する必要性がありそうである。
oO(AC6のチーター他所でも暴れていた前歴があるそうなので早急に管理者に弾かれてください)
2024.12.21:執筆