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ああ、『レーザー』が見える

いつものレーザ加工中にいつもと違う加工結果になるとき、加工担当者は背筋が凍る。
加工に使った条件がいつもと同じか、加工対象もいつもと同じか、この2つの確認がとれたあとは、さらにその温度は絶対零度に近づく。
まさか、もしや、レーザ発振器さんがお亡くなりになったのか?
やばい、レーザ発振器さんがお亡くなりになったら、今の加工ができないどころか、レーザ発振器の修理→光学系調整→加工確認→加工再開、というコンボによってめっちゃ時間がかかる。
あぁ、今週は毎日残業かよ、、、ドラクエⅢ進めたいのに、、、。
こんな悪夢が光の速さで頭を通過するからだ。

自身がグリンラッドにいるような状況になりつつも、レーザ加工屋さんには一縷の望みがある。
とりあえず、レーザ発振器さんがご存命か確認することだ。
レーザ発振器さんがご存命なら、もしかしたらリカバリ作業は光学系調整からですむかもしれない。
ここでレーザ発振器さんの生死確認という王大人のようなミッションを唐突に背負わされるが、ビームプロファイラである。

ビームプロファイラとは、レーザ光を真正面から受け止めることで、レーザ光の直径(たまに四角とか複数の集光点とかあるけど、まずは円として考える)を最外周としてビームのエネルギ分布を目で見ることができる光学機器である。
理想的になレーザ光のエネルギ分布はビーム径の中心が最も強く外側に向かって徐々にエネルギ強度が落ちていく富士山型をしている。
これをレーザ屋さんたちはガウシアン分布と、なんだか知っている人風に言う。
もしレーザ発振器さんがお亡くなりになっていたり、もうあまり寿命が残っていないときには、このレーザプロファイルがこわれる。
ビーム径が光学調整したときから大きくなったり小さくなったりしていたり、ビーム径が円形でなく歪んで楕円形をしていたり、エネルギ分布がガウシアンではなくぐちゃぐちゃだったりすると、レーザ発振器さんの状態がよろしくないサインだ。

ビームプロファイルで観察したレーザ光の状態が、もし光軸中心からずれているだけだったら、それは光軸がずれただけかもしれない。
ビームの形が歪んで楕円形状でも、強度分布が同心円状の楕円なガウシアンであれば、それもまた光軸がずれただけかもしれない。
光軸がずれたことは問題だし、原因がレーザ発振器さんの寿命が少し減っているからかもしれないが、それでも光学系調整でレーザプロファイルが今までと同じになるのであれば、加工結果もきっと今まで通りに戻るだろう。
その時は王大人であるビームプロファイラに感謝するればいい。

光学系が構築された後のビームプロファイラは王大人としての役割が多くなるが、光学系調整では設計通りの光学系に調整するための大事な目でもある。
ビームプロファイラは高価だし、光学系に常時入れておくことは出力ロスになったりするが、レーザと光学系が正常かどうかの判断をしてくれる重要な機器である。
レーザや光学系に不備があったことに気づかずに加工して不良品を大量生産したり、加工不良の原因に気づきくことに時間を浪費するコストに比べれば、ビームプロファイラの1つや2つを光学系に組み込むことは安いものだ。
見えると見えないでは、戦場でも加工現場でもその差は歴然である。

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