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一流のパワハラリスト

転職回数が多いこともあり、これまで様々なパワハラを受けてきた。わたしはパワハラの専門家ではないかと思う。

いろいろなパワハラリストがいるとはいえ、「弱い人間を狙う」のは間違いなく共通点。弱そうなやつが集団の中で孤立している状況が一番危ない。

わたしは線が細く、おとなしそうで、集団で群れてもいないので格好の標的になる。中身はロックスターになりてぇとか言っている危ないやつなので、近年は立派なパワハラキラーに育っている。

ここ10年の戦績は、2勝1敗1引き分け。勝敗の基準は、こちらが先に辞めるか相手が先に辞めるか。

パラハラをする人間を大きな枠組みでとらえる際に「人を選ぶ技術(小野壮彦)」の分類が役立つ。人間を「能力の高さ・低さ」「人として善・悪」の2軸で分ける。

人として善というのは、シンプルにその人と一緒にいると力が出るような人のこと。人として悪は、逆に、その人と一緒にいると力が奪われる。わたしの考えでは、自己愛が強く、自分だけが良ければよいの思考をしていて、他人を利用することばかり考えている人ではないかと思う。

パワハラの常習犯は、この「人として悪」の側にいる。
「人として悪」かつ「能力の低い」パラハラリストは、露骨なパラハラをしてくるのでうっとおしいが、対処はそこまで難しくない。アホなやつがわかりやすいパワハラをしているわけだから、周りが味方になってくれやすい。

たとえば、(株)カネックスでは、東大出のおっさんがプライド全開の大パワハラを仕掛けてきたが、社長と相談してプロジェクトから外れてもらった。おっさんは居場所がなくなって会社を辞めた。中小企業は利益貢献しない人間を雇っておく余裕はない。

問題なのは、「人として悪」かつ「能力の高い」人間だ。
著書「人を選ぶ技術」でも、この象限にいる人間がもっとも組織にダメージを与えるとしている。悪であってもアホなやつは、周りが気づくので対処できる。少なくとも重要な仕事を与えなければいい。

悪で優秀なやつは、手口が巧妙なので発見されにくい。短期的には利益貢献をするのだが、その人の周りにいる人がなぜか辞めていく、なぜか周囲の活気がなくなるということが起きて、長期的には大損害をもたらす。

パワハラも、その動きの中に確実に組み込まれていると思われる。こういう人間に狙われると非常にきつい。先ほどのアホと違って、みんなの前で怒鳴り散らすようなわかりやすさがないし、たとえパワハラと気づいても周りが助けてくれない。

ところで、パワハラの目的は大きく2つに分けられると思っている。
ひとつは権力の誇示。部下を机の前に呼び出して、大声でどなるのが典型的。目の前の人間というよりも、周囲の大勢に向けてアピールしている。俺は偉いんだ。俺に逆らうとこうなるんだ。ゴリラと変わらない。

わたしは社会人2年目のころ、株式会社不条理で、執行役員から毎朝2時間ほど怒鳴られていた。当時は、執行役員が新入社員と変わらない人間を力の差のままボコボコにするなんて人間のクズだと思っていたが、ゴリラにはゴリラの理由があった。見せしめだ。権力の誇示のためにはサンドバックが必要になる。

もうひとつのパワハラタイプはもっとサイコパスなのだけど、ゴリラがその他大勢を服従の対象にしているのに対して、こちらはOne to Oneで狙ってくる。狙いを定めた人間を支配するのが狙い。

わたしは伝説のパーフェクトブラック企業、(株)MVPパーティーで一流のパワハラリストに遭遇した。パーフェクトブラック企業はそういう人間を引き付ける。

一流のパワハラリストは、社内では穏やか、パワハラ感を消している。だが、わたしはこの人が頻発する「ありがと~」の言い方に違和感を感じていた。過剰に丁寧なのに、たいしてありがたいと思っていない。不整合からくる気持ち悪さがあった。

わたしはこの人と仕事をすることになり、喫茶店に連れていかれる。
ここがポイントだ!
先ほどのゴリラとは逆の行動。パワハラを周囲に悟られないための周到さ。精神を支配したいのは、狙いを定めたひとりなので、周囲と隔絶したうえでパワハラをする。

本当にひどかった。自分の得意な領域で質問攻めにする。
「マーケティングとはなんだと思う?」など質問の幅を広めにとる。どのレベルで答えればいいかわからないので、とりあえず何かしら答えると、「違う! おまえはまったくわかっていない」

豹変の仕方がすごい。社内の穏やかな雰囲気はどこにもない。ときどき感じていた「ありがと~」のかすかな気持ち悪さが集合して、パワハラのキングスライムになったかのようだ。

こちらに勝ち目のない問答がずっと続き、ときどき「はい、それはわかります」と答えると、「じゃあ、説明してみろ」と続け、「おまえは、わかってないことがわかってない!」と爆発する。

こんなのはコミュニケーションじゃない。すべては「おまえは俺に劣っている(だから逆らうな)」というメタメッセージだ。

この人と接するのが本当に恐ろしかった。
何を言っても「違う!」と言われ、「わかってないことがわかってない」のロジックがあるため、「わかりました」と答えることもできない。回答を封じておいて、「ほら、やっぱり何もわかっていない」と結論付けられる。

精神がまいって会社を休むと翌日、「XXく~ん、ごめんね~、昨日はちょっと言い過ぎたかな~」やたら優しく話しかけてくる。

この人はわたしのことを勘違いしているんじゃないかと思う。たしかに世の中には、DV男に惹かれる女性心理のようなものがあるのだろう。暴力のあとの優しさを極上の優しさと勘違いしてしまう。

だが、わたしにそんな趣味はない。ただ気持ち悪いとしか思わない。おまえはなんで俺のことをそう思った。この異常者が!

わたしはボロボロになって退職した。これが2勝1敗1引き分けの中の一敗。完璧な敗北だ。

本当に優秀なパワハラリストには勝ち目がない

こういう人間に出会ってしまったら、一日でも早く逃げ出すしかない。


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