あした海を見にいこう #song10-13 灼熱の紳士
かもめ回想録 3
千里ヶ浜はその昔、「チリの浜」と呼ばれていたようだ。チリは「塵」を意味する。観光客がゴミを捨てる、河がゴミを運ぶ。お隣の国からも漂流物が流れ着く。
僕はその頃の千里ヶ浜を知らないが、観光客のマナーに関しては、見る限りたいして変わっていないのではと思う。以前ほど汚れていないのは、地元のクリーニング活動の成果、と言いたいところだが、単に観光客の減少のためである。「変化したもの」のうち、誰の目から見ても明らかなものだ。
海の家がひとつ消え、またひとつ消え、かつては海の家同士、喧嘩の原因にもなっていた隣の建物との間隔が、どんどん開いていった。
かもめをたたむまでの十年は、ほとんどが赤字。海の家経営のバブルはとっくに弾けていた。
家族連れで千里ヶ浜に来て、海の家で席を確保、ゆっくり海水浴なんてスタイルはもう流行らない。海の家にあるものは大概、車で持ってこられる。着替えのできるコインシャワーさえあれば、わざわざ海の家を利用する必要はない。他の海の家同様、さっさとたたむべきだったのだ。
誰かが言った。商売以前に夢があるから、たためない。
「夢」とか言葉が出たした時点で、雲行きはあやしかった。矛盾は歪みとなり噴出する。
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