―犯罪被害者になれない、たったひとつの理由―
毎日、事件が起こっています。私もスーパーで買い物中にカートをぶつけられ、障害が残る怪我を負いました。皆さんは、犯罪に巻き込まれた人に対し、こう思っていないでしょうか?
「被害者なら、国から補助金とか制度があって救済される」
残念ながら、そうではないです。有効な支援制度が存在しない現実を知りました。もちろん、すべてのケースがそうではないです。加害者がわかっていれば、裁判費用、弁護士費用の支援が受けられます。『犯罪被害給付金』というお金も支払われます。ただし条件が付きます。
――過失でない限り。
私は、この一点により、支援制度が受けられない犯罪被害者のひとりです。ここでは私が今まで国や市町村、警察組織に対応してもらった点と、今後改善してほしい点。そして被害者が泣き寝入りしないために事件直後にやるべきことを述べたいと思います。
2017/08/14
【事件発生】
複合施設の中にあるスーパーで買い物中、男性に後ろからカートをぶつけられました。相手は、痛みでうずくまる私に「すまん」と言って逃げてしまい、顔を見ることができませんでした。レシートから時間、コーナーが特定できたため、防犯カメラ設置場所がすぐにわかり、警察官二名が映像を確認。以下の説明がありました。
・身長170~175センチ、60代。髪は7:3分け、黒か紺のシャツを着ていた。
・現金支払いだったのでカードから追うことはできない。
・画質が悪く、車のナンバーはわからない。
・怪我をしているので警察に被害届を出して。
岐阜則武交番調書作成。
2017/08/15
【岐阜市民病院にて、検査、診断書を書いてもらう】
2017/08/16
【岐阜北警察署へ被害届申請】
診断書コピーを持ち、岐阜北警察署へ赴きましたが「相談として受けただけ」「色々調べなければ」と中々被害届に署名、捺印させてもらえず、岐阜県警、中部管区警察局等の多数の部署を回りました。
2017/8/22
【弁護士会館にて弁護士に相談】
・警察より、証拠確保を先にすべきだった。被害の映像があれば告訴は可能ですが、現時点では証拠がない以上やるだけ無駄になってしまう。
・警察が防犯カメラを押収したということは、捜査の可能性がある。被害届が受理されるには時間もかかる。
・加害者が見つかれば再度、話し合いしましょうとのこと。
【身体の異変】
8/15より右半身の著しい筋力低下。足を引きずるようになり、杖付き歩行。右腕は肘より下のみ可動、握力5。左半身は麻痺。2017/9/25、脊髄頸椎専門医、高岡整志会病院へ診察に行きました。早期手術を擁すると診断され、入院手術を決意。
2017/10/15~10/25
【高岡整志会病院にて治療】
・10/15入院
・10/18手術
・病名――後縦靭帯骨化症
2017/10/31
【被害届が受理される】
・岐阜北警察署にて署名、捺印
・岐阜市民病院の症状の増悪、手術を擁する診断書原本提出
・高岡整志会病院にて手術を受けたことを、岐阜北警察署警部補に伝える。病名、手術を記載した診断書あり。
2017/11
【介護ヘルパー週2回、支援開始】
2017/11~2018/1
【術後検査とリハビリ】
2018/2~2018/8/31
【赤十字病院へ転院、リハビリ】
2018/8/13
【残った障害】
身体障碍手帳3級
2018/8
【岐阜北警察署警部補に捜査状況を確認】
「防犯カメラ映像はあるが、県内には顔人称システムや、車種を判別して追うなどの設備はなく、他県に頼むこともありません。また顔写真を出す公開捜査をおこなう予定もありません」
◆捜査は止まったままと知る。
【事件現場に問い合わせ】
防犯カメラ映像はまだ保管しているとのこと。
【犯罪被害者支援制度について調べ始める】
事件より一年半が経過し、以下に問い合わせをしたところ「現状では救済の方法はない」とのことでした。
法テラスの犯罪者支援
ぎふ犯罪者支援センター
公益財団法人 ぎふ犯罪者支援センター
犯罪被害者相談室
犯罪の被害に遭われた方へ
女性の人権ホットライン
法務省 人権相談
岐阜県警察本部 総務室 広報県民課
岐阜県公安委員会
岐阜県警察犯罪被害相談室
岐阜県弁護士会犯罪被害者支援
弁護士3名
2019/1/28
【犯罪被害給付金申請の回答】
犯罪被害より2年以内の申請。
岐阜県警察犯罪被害相談室に相談。結論『給付対象外』とのことでした。
・給付対象外の理由
『犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律』第二条の末尾に、『罰せられない行為及び過失による行為を除く』
故意に傷つける意思がなかった場合を『過失』と言います。今回のケースは過失傷害で『過失による行為を除く』に当たるため、対象外となります。たとえば『傷害罪』は対象になります。(通り魔に遭った場合など)
(参考)岐阜県警察のサイトには以下のように記されています。
『この制度は、故意の犯罪行為によって、ご家族の方をなくされたご遺族、重傷病を負った被害者や後遺障害が残った被害者の方に対して、加害者から十分な損害賠償を受けることができなかった場合等において、国が給付金を支給するものです』
岐阜県:犯罪被害給付制度について
◆犯罪被害給付金について思うこと。
確かに『故意の犯罪行為によって』と記述されています。しかし、『故意の犯罪行為でなければ、国が給付金を支給しない』という意味になります。なぜ区別されてしまうのでしょうか。
申請相談窓口の中に岐阜県公安委員会もあり、問い合わせした際にあったことですが、「担当部署」と案内された先は『給付金は適応外』と言った岐阜県警察犯罪被害相談室でした。
代表電話番号のみ記載され、個々の電話番号を載せていないため、こういったことが起こりやすいのです。
【告訴状】
加害者が起訴されるまで、どういう捜査が行われたかを知る方法です。 これが警察に受理されると、警察は告訴状を出した相手に対し、書面で回答しなければならない義務が生じます。容易く受け取ってもらえるものではないし、個人では書けない箇所もあります。
『法テラス 犯罪の被害にあわれた方へ』に問い合わせました。
条件が揃っていたため、弁護士相談を受けることができましたが、相談内容を聞いた弁護士の方は、対応できかねるという旨の説明を受けました。理由は「書けない」「加害者が不明なのでできない」とのことです。
告訴状申請に関し、『被告訴人・被告発人の表示 氏名が不明な場合は、「不詳」と記載し、性別や推定年齢、身長、体格、人相、服装などの特徴を記載します』と記述されていますが、書けない理由は答えてはくれませんでした。
【犯罪被害者見舞金の申請】
同じ弁護士様からの提案でした。しかし、岐阜県では20歳未満の人に支払われますので、私には適応外でした。該当年齢の方は、岐阜県公式ホームページを確認してください。
岐阜県:犯罪被害者遺児激励金制度
後日、告訴状が書けない詳細な理由を教えていただく機会がありました。
「告訴状というのは、弁護人と共に警察と交渉しなければ正式に受理されないものです。受理されたとしても『こういった捜査の結果、加害者は見つからなかった』結果にもなる場合も多い。弁護費用30万近くかけても望む結果になる可能性は低く、経済的、精神的も勧められる方法ではないからです」
ただし、告訴状により犯人逮捕に至るケースもあります。利用するべきか弁護士と相談してください。作成費用は7~8万円です。
◆捜査にかんして警察を指導できる部署。
『監察室』『広聴処理室』と呼ばれるものがあります。岐阜県では『監察課』。しかし、代表電話のみで直通番号は載っていません。多くはメールボックスを設置しているので、文章で問い合わせできます。まず、こちらを利用してください。
(参考)警視庁の業務に対する苦情・ご要望・ご意見
◆被害者が泣き寝入りしないために事件直後にやるべきこと。
・証拠確保です。後日、弁護人に防犯カメラ映像を証拠品として提出してもらえるよう責任者に伝えます。加害者が不明でも、証拠があれば告訴できます。
・証拠確保を先にする理由は、警察に捜査情報をして押収されると、弁護士であっても証拠は提出されないからです。可能なら、証拠を確保したうえで警察に届け出ましょう。
・担当警察官の名刺。その場でしか貰えないものです。刑事も同じです。後から名前を教えてくれません。問い合わた内容、担当部署、名前、日付けを書き留めておくこと。弁護士と話すときに必要です。
・電話はレコーダー記録を勧めます。専門用語など、後から調べられますし、言った言わないで揉めることを避けられます。
・医師の診断書。「こういった経緯で、こうなった」と記述してもらうこと。
・入院手術費用の明細書
・遠方の病院なら、交通費の領収書。自動改札機に領収書ボタンがあります。
・宿泊ホテルの領収書。
最後に。支援制度を行う団体や社団法人は行政に呼びかける権限を持っていません。個々の団体や組織に委ねられており、『加害者がわかれば』動いてもらうことが可能なのですが、『不明』の場合は本人任せになっています。現在は岐阜県の議員さんと共に、犯罪被害者支援と、犯罪被害を失くすために警察への働きかけに協力いただいています。次回はそれを追記します。