【手話ダンス甲子園チームレポート】
Vol.1 豊南スマイル(東京都) 編
このレポートは、手話ダンス甲子園に出場し入賞したチームのメンバーや指導者など、また、関係の深い人物にチームと手話ダンス甲子園に関する話、また、手話ダンスにまつわる事柄についてインタビューした内容をレポートとして発信するwebコンテンツです。
記念すべき第1回目のチームレポートは豊南スマイル(東京都豊島区)です。
【豊南スマイル手話ダンス甲子園実績(令和6年1月10日現在)】
・2023年 第1回手話ダンス甲子園 東日本大会優勝
・2023年 第1回手話ダンス甲子園全国大会 準優勝
◆ 第1回手話ダンス甲子園東日本大会優勝、そして全国大会準優勝おめでとうございます。まずは、豊南スマイルの日々の活動状況について教えてください。
豊南スマイルとともに東日本大会に出演していたアベほうなんを含めて豊南高校の手話部のチームです。
<豊南高等学校(東京都豊島区)WEB>
◆ チーム紹介時に部活動から誕生したチームなんだろうなと思っていました。手話部のことを教えていただいてもいいですか。
大会に出演した豊南スマイルやアベほうなんは東京都の豊島区にある私立豊南高校の手話部に所属するチームです。
手話部には顧問が二人いて、僕(トーマ)のほかにケーマという顧問がいます。
僕とケーマは”ケーマトーマ”という手話パフォーマンスユニットを組んでいて、手話部の顧問のほか、全国で様々な活動もしています。
僕は高校の教師と並行して、ケーマトーマの一員として様々な活動をしていますが、手話通訳だけでも去年はかなりのニーズにお応えしたのですが、今年はそれを超える勢いです。
<ケーマトーマ読売新聞記事>
◆ 学校の教師の傍らケーマトーマの活動も多忙を極めていますね。
お蔭様でといいますか、ケーマトーマの活動は学校の許可も得て行っていますし、手話通訳の謝金は福祉施設へ全額寄付していますので福祉分野で役立っていればうれしいです。
◆ そもそもトーマさんはなぜ手話を学ぼうと思ったんですか。
10年前に受け持っていたクラスの1年G組の生徒が手話をやりたいと言ってきたのがきっかけです。
豊南高校の生徒の多くは板橋区と練馬区出身者で、その両区では中学校の授業で手話歌をやるようで、それが楽しかったようで高校でもやりたいという機運になっていました。
そこで、区で開催される手話教室に通い手話を習って、今度はそれを生徒に教えるという日々が続きました。
今では手話通訳や手話パフォーマンスなどケーマトーマの活動につながっているのですが、パフォーマーとして多くのメディアに取り上げられたり、テレビや映画といったエンタメ業界からの出演依頼もあるので、手話部の生徒達にもエンタメの世界がとても近い存在となっていて、部活動に興味を持ちやすいですし、いろいろつながっていますね。
手話部のOBには、TVタレントとして今活躍している生徒もいるんですよ。
◆チームの母体となっている豊南高校手話部の成り立ちやこれまでの経緯などを教えてほしいです。
僕が手話歴10年ちょっとなので、手話部もそれと同じ10年くらいの歴史があります。
先ほどお話した1年G 組で手話を用いた活動の流れになるんですが、最初は、手話同好会という形で当時開催されていた手話のパフォーマンス大会にエントリーしました。結果はよくなかったのですが、生徒の情熱がすごかったので、僕が当時5人組だった手話パフォーマンスでも有名なHANDSIGNさんに手紙を出したんです。
その手紙を読んでくれたHANDSIGNさんが学校までわざわざ駆けつけてくれたりして、同時に僕自身も 三代目 J SOUL BROTHERSさんのお仕事で手話通訳をしたりしているうちに学校の中で手話の熱量が高まっていき手話部が誕生しました。
あれから10年経ちます。
◆部活動では、ろう者との接する機会はあったりしますか。
手話部ができた頃は、区が開催する手話講習会の講師サポーターがろうの方だったのですが、その方と知り合いになり、その方が若い方もたくさん紹介してくれて、部活にもたくさんろう者の方に来て指導していただいて生徒との交流も盛んになりました。
◆部活動では、手話ダンス以外にはどんな活動をしているのですか。
手話部は当初から部員が20名を超えていて、手話演劇、手話漫才、手話ミュージカル、特に手話歌は毎年練習していましたね。
これらを中心に活動していたんですが、手話部立ち上げから3年目か4年目に、ケーマや手話パフォーマーでダンサーでもあるJINJINさんに講師に来ていただき手話ダンスに取り組んだのが最初の取り組みだったと思います。
顧問のケーマは元々アイドルだったので、ダンスも指導することができるので、そこから手話ダンスが部活動のコンテンツの一つとなりました。
色々なパフォーマンスに取り組んでいますが、どんな活動をする場合でも、手話に関してはとても厳しく指導してます。
手話の際に口形がついていないとダメだったり、肘をついて手話することやマス着用の禁止など、部活動内で手話を学ぶ時には守らなければならいことを決めてそれを徹底しています。
◆ 手話ダンス甲子園を知ったきっかけは何ですか。
生徒が毎年参加しているイオンモール幕張新都心で開催される福祉イベントに出演した時に手話ダンス甲子園の存在を知ったみたいです。
ちょうど同じ頃に僕もダンス甲子園の事を別ルートで知っていて、JINJINさんのチームと豊南高校のチームで一緒に大会に出ようと盛り上がって話をしていたんですよ。
結局JINJINさんが他のイベントとスケジュールが重なっていて、ダンス甲子園には出場できないことになっちゃったんですけど、JINJINさんには、豊南高校のチームにダンスや手話も色々アドバイスいただく事になって、豊南高校から2チームが大会エントリーすることになったんです。
◆東日本大会で優勝した豊南スマイルのパフォーマンスは特に印象的で個性的なパフォーマンスでしたが。
毎年個性的なメンバーが手話部に入ってくるんですが、特に豊南スマイルは個性的なメンバーが集まったチームですね。
手話ダンス甲子園後に、東日本手話ダンス甲子園優勝チームとして鳥取のイベントで踊らせてもらったんですけど、会場にいたJINJINさんにもすごくパフォーマンスを褒めていただきました。
◆ 東日本大会で圧倒的なパフォーマンスを披露して優勝した豊南スマイルですが、東日本大会後のメンバーのモチベーションはいかがでしたか。
お蔭様といいますか、すごくモチベーションが上がりました。
さらに、手話ダンス甲子園東日本大会優勝直後には、東京都から手話部へデフリンピック関連のイベントへの出演依頼があり、豊南スマイルやアベほうなんがゲスト出演したり、大手の新聞社にも活動が取り上げられたりして本当に熱い夏でしたね。
◆校内での声は何かありましたか。
豊南高校は昔からソフトテニスと吹奏楽が有名な高校なんですが、手話ダンス甲子園入賞の結果を受けて、今は、それらの伝統的な部活動と並ぶような大きな垂れ幕を学校で掲示する動きにつながっていて僕もビックリしています。
大会後の夏休み明けの全校集会では、校長先生から部長が表彰状をもらったりと、学校内でもすごく盛り上がってましたね。
◆メディアにも取り上げられたということですが。
新聞にも大きく取り上げられました。読売新聞の中高生新聞に手話部の活動が取り上げられました。それがきっかけで手話部の活動が全国の小中学生の道徳の授業で使用される教材にもなったんですよ。
手話部は来年ウィーンにも招待されているメンバーもいて、ケーマトーマだけでなく生徒達も毎日忙しい日々を過ごしています。
◆今回の大会へ向けて指導の中で一番苦労した点は何ですか。
個性的なメンバーだったのでみんなが自主的に協力しあって一つの作品を完成させる環境づくりがとても難しかったですね。
そこが本当に一番難しかったです。
これは、部員だけではなく、生徒達みんなに当てはまることだと思いますが、一つのものを皆で作り上げるときに、個人の特異性や個性、個別の事情を尊重しすぎたり、配慮しすぎると、なかなか全体として自主的には一つにまとまりません。
僕自身が答えを生徒に直接提供すれば簡単に解決できる課題もあったのですが、生徒間同士で解決してもらいその中で絆が強くなるように、生徒の自主性を引き出すように徹していました。
これは、本当に苦労して、時には逃げ出したくなることもあったんですが、頑張ってこの意思を貫きとおして生徒と接していたんです。そうしているうちに、だんだんと生徒達自らが動くようになってきてくれてそれが作品づくりにつながり、チーム力もどんどん上がっていったんです。
一例ですが、チーム紹介文も自分たちで考えたんですが、チームみんなで話し合って作品のテーマも決めました。
◆高校生の気づきってすごいですよね。そして自然体のパフォーマンス。これらに関しての指導方針などありますか。
手話部の目標は「部活を楽しむこと」です。
手話を学ぶ時はもちろん真剣にというのは当たり前なんですが、部の活動はとにかく楽しむってことを前提に部活の時間を過ごすようにしています。
ただ、楽しみながらも練習量はすごかったです。これも生徒が自主的に練習しようとなったのですが、手話ダンス甲子園に向けての練習は、他のスポーツ部よりもたくさん部活動に日数を割いていたくらいです。
パフォーマンスは自然体に見えますが、それを実現するために週7日で練習に励んでいました。
今回の大会に向けて真摯に練習に励みながらも「楽しむ」という事ができたと思います。
そして個を出しながらチーム力のあるパフォーマンスにつながった結果がでたのかなと思います。
一点残念なことをあげるとすると、決勝は3人のメンバーがコロナで参加できなかったことです。一生懸命練習してきたのを知っていたのですごく残念でした。
◆手話ダンス甲子園を含めて色々な動きがあったと思いますが、これまでを振り返ってみていかがですか。
まだ学年の一年が終わったわけではないですが、これまでを振り返ると、手話の魅力を再認識した年でした。
入部する子ども達をみていればわかるのですが、ドラマや流行ではなく、「手話」の魅力に引き付けられた子ども達が入部してくるんです。それがパフォーマンスに表れています。
手話ダンスの作品づくりもダンスパフォーマンスを重視せずに、かつ、手話歌ではなく、歌詞が伝わるパフォーマンスにしようと生徒達自らが言って練習に励んでくれました。
作品づくりに際して、手話の魅力を重視してくれたことに感激しました。
◆ 手話ダンス甲子園決勝大会の兵庫県福崎町では、この大会をきっかけに手話言語条例(仮称)の制定に向けて本格的に行政や地域関係団体が動き始めましたが、先生はこういった動きについてはどうお考えですか。
最後に、今後の部活動や先生活動などの展望をお聞かせください。
素晴らしいことだと思いますね。僕は自分たちの活動を通じても感じるのですが、今のフェーズは手話を広く認知してもらうことが大事だと思っています。そういったことに僕たちの活動が貢献できればうれしいです。
展望ですか。
そうですねぇ。
とにかく大事なのは継続することだと考えています。
ケーマトーマの活動でも同じ事が言えるのですが、継続していると色々な方と繋がります。
これまでもケーマトーマの活動が手話部のメンバーへ伝わったり、繋がったりしてきました。
そしてつながった人々がそれぞれの活動を支え合う。
ケーマも手話ダンス甲子園決勝の場である兵庫県の福崎町まで駆けつけてくれました。
このように、手話を通じて周りの人たちの支えが生まれる。
色々体験してきて、一番大事だと思うことは、「継続」すること。
今後も今やっている事が継続できるようにしていきたいですね。
◆ ありがとうございました。
ありがとうございました。
【豊南高校手話部の定期活動】
(定期活動)1週間に1日1時間~2時間集まって活動。
月曜日・金曜日は福祉施設に手話通訳に訪問
日曜日に聴覚障がいや視覚障がいのある子ども達のコーラス隊活動に参加
その他:自治体や地域、学校からの参加依頼があれば都度対応
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