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もう一度、”ナイシュー!”と叫びたいんです|最後の舞台が消えた子どもたちの想い


コロナが騒がれ始めて半年以上経ちますが、いまだに社会は振り回されています。スポーツ界も東京2020を代表するように、大会やイベントが延期、または中止に。プロスポーツも、人数制限や無観客試合を強いられています。

中高生にしてみれば、最後の舞台である全中やインターハイ、それに続く地区予選も中止に。目指してきた場所が突然なくなってしまったのです。ボクも、中高大の部活でハンドボールという競技に打ち込んできた身なので、心がギューッと締め付けられます。

いま、ボクはHelloTechというスタートアップ企業に携わっています。そこでは、最後の大会が中止になってしまったハンドボール選手・チームに向けて、普通では経験できないような引退試合の場を準備しています。

簡単に説明すると、国際基準のコートでプロのフォトグラファーやMCなどに協力していただき、トップリーグに負けないくらいの環境と演出で、一生思い出に残る引退試合を体験してもらう、という企画です。

「コロナがあったから」という悲しい思い出ばかりではなく、「コロナがあったけど」と、明るく振り返れるような場を用意したい。そんな想いで準備を進めています。

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これを開催することについては、ボク自身いろんな迷いがありました。

もしかしたら、彼らは中止のことは完全に受け入れていて、次のステージに向かって進んでいるかもしれないのに、そこに水を差すのはどうなのか、とか。

もしかしたら、彼女たちにとって引退試合というのは、全力を尽くして闘うことに意味がある場なのではないか、とか。

こういう試合の場を準備すること自体、大人の自己満足に過ぎないのではないか、とか。

彼ら彼女らのことを考えれば考えるほど、大人として何をすることが正解なのか、分からなくなります。

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迷っていても、やると決めたのだからやるしかない。引退試合のリリース、参加チームの募集も、あっという間に始まりました。

参加の応募にはチームの情報に加えて、自分たちで考えた大会名の案、そして、チームの想いを記載してもらうことにしていました。

そんな中、一件の応募がありました。そして、こんなメッセージが添えられていました。

中高一貫校で中学から約6年間同じ仲間達と切磋琢磨して部活を頑張ってきましたが、コロナの影響で公式試合が潰れ、引退試合も正式にはできませんし、観客ゼロなので悲しく思っていました。それもしょうがないと考えているなかこの企画を発見し、自分のなかにハンドボールをまだやりたい。という気持ちが残っていることに気づきました。

勿論、引退試合だけが全てではありませんが、それでも最後の集大成として何か自分の努力が表れる場所が欲しいですし、これまで支えてくれた親達にも記録として見せてあげられる機会が本当に欲しいです。

また、私達のチームは全国に行くような強豪ではなかったため、このような最高の環境で試合ができる機会は人生でここしかない!!と思い応募させていただきました。あと、これは個人的な意見ですが私の仲間を凄く色んな人に観て欲しいのです。

中高女子にはあまり見られないスカイやバックパス、トリッキーな技を挑戦的にやったりする仲間です。もう一度私達にハンドボールをやる機会をください。もう一度、「ナイシュー」「ナイキー」と叫びながらコートを駆け抜けたいのです!

最後にこの大変な騒動のなか、私達のために素敵な企画を考えてくださってありがとうございます。受験などで忙しく、これに応募できなかった学生達も、沢山の大人達が私達を応援していると感じられて頑張れることもあると思います。これからもハンドボールを盛り上げてくれることを応援しています。

どんな人がこのメッセージを書いたのか、この方がどんな日々を過ごしてきたのか、ボクにはわかりません。ただ、このメッセージを通じて、彼女たちの正直な気持ちが、ボクの心に直接響いてきました。


もう一度、「ナイシュー」「ナイキー」と叫びながらコートを駆け抜けたいのです

何不自由なくハンドボールをしてきたボクにとって、これは当たり前のことでした。仲間が得点すれば、シュートを止めれば、叫びながらハイタッチする。そんなことは、当たり前でした。

だけど、そんな当たり前のことすらできなくなってしまったんです。スポーツをすること自体も、難しくなってしまった。彼ら彼女らは、偶然この時代に育ってきただけなのに。


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「大人として何をすることが正解なのか」

この問いを正確に答えることは今もできません。が、応募のメッセージを読んで、「せめて、手をあげてくれた子どもたちには場所をつくりたい」と思うようになりました。

育ってきた環境も置かれてる状況も、ハンドボールへの向き合い方も、すべてが異なる一人一人の中高生・大学生を、全員救える力はボクたちにはありません。

ただ、「このまま終わりたくはない」と声をあげてくれた彼ら、彼女らには全力で思い出作りのお手伝いをさせてほしい。これが今のボクにできる精一杯です。


そして今も、準備を進めています。やるからには、生半可なことはできません。

トップリーグに負けないくらいの環境をつくるためには、相応の資金が必要となります。ここについては、大会スポンサーとして企業数社に協賛いただくことになりました。コロナで経営自体が厳しい中、本当に感謝しています。

また、多くの企業やトップリーグ所属のチームにご協力をいただいて、クラウドファンディングを立ち上げました。いまアップされている支援品以外にも、今後さらに追加されていきます。

正直なことを言うと、ボクたちだけの力では厳しい部分があります。猫の手も借りたいくらい、アタフタしています。だからこそ、協力いただける方々の優しさが染みるし、心から感謝しています。

そして、全国のハンドボールファンのみなさんにも、想いを打ち明けてくれた子どもたちのために、協力いただければ嬉しいです。


試合は9月19日。それまでに、できる限りのことをやってみたいと思います。



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坂シュウキ
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