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ハンドボール専門用語集(デンマーク語・フランス語・ドイツ語・スペイン語)
ハンドボールの国際的な舞台では、それぞれの言語に独自の専門用語があります。日本語でいうところの「ポスト」「ウイング」「センターバック」といったポジション名や、戦術・フォーメーション、さらには反則や特殊プレー名も現地語になると呼称が変わり、意味合いにも微妙なニュアンスの違いがあります。
本記事では、デンマーク・フランス・ドイツ・スペインの各国語で使われる主要なハンドボール用語を「日本語訳とともに詳しく解説」します。競技者や指導者として知っておきたい基礎から応用まで、ぜひご活用ください。
ただし、本記事はあくまでも用語を知るきっかけとして参考にしてください。実際に現地に行って調査したものではないので実際の使われ方と違う場合もあります。
デンマーク語の用語
1. Stregspiller(ストガイスピラー:ポストプレーヤー)
ゴールエリア(6mライン)付近で攻撃するライン際の選手。攻撃時には相手守備陣の中央でスペースを作り、ボールを受けてシュートする役割を担う。
味方バックプレーヤーのためにスクリーン(ブロック)を作り、相手DFとの激しい肉体戦をこなしながらポジションを確保する。
強靭さと巧みさが要求されるポジション。
(参考: Stregspiller - Wikipedia, den frie encyklopædi)
2. Fløj(フロイ:ウイング)
サイドライン沿いでプレーするウイング(左ウイング=Venstre fløj、右ウイング=Højre fløj)。
速攻時には最前線を駆け上がり、狭い角度からのジャンプシュートでゴールを狙う。
正確なシュート技術や俊敏性が求められ、コーナー付近からのシュート機会が多い。
3. Hurtig midte(フティミデ:クイックリスタート)
失点直後、センターラインから素早く再開して速攻に転じる戦術。
相手のゴールが決まった直後に、ディフェンスが整わないうちに攻め切るための手法。
デンマーク語で「速いセンター再開」を意味する。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe müssen Sie kennen | SPORT BILD)
4. Kontra(コントラ:速攻)
相手の攻撃ミスやセーブ後に即座にカウンターアタックを仕掛ける速攻のこと。
ボールを奪った瞬間に前線へ走り出し、数的優位を活かして速い攻撃で得点を狙う。
「失敗攻撃への罰」として、一気に相手ゴールへ迫る戦術。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe… | SPORT BILD)
5. Dobbeltdribling(ドブベルドリブリング:ダブルドリブル)
デンマーク語で「二重ドリブル」を意味する反則行為。
一度ボールをドリブルして持ち止めた後、再びドリブルするとダブルドリブルとなる。
(参考: Håndboldregler - Danske håndboldregler og spilleregler)
6. Overtrådt(オーヴァトロット:エリア侵入違反)
6mラインを踏み越える反則。フィールドプレーヤーはゴールエリア内に入れないため、ラインを踏んだり越えたりすると攻撃側なら「オフェンスファール」、守備側なら7mスローなどに繋がる。
シュート動作でも、着地時に踏み入った場合は得点が認められない。
(参考: Reglas del balonmano: ¿cómo jugar handball?)
7. Passivt spil(パシフ・スピル:パッシブ〈受動的攻撃〉)
攻撃側が積極的にシュートを狙わず時間稼ぎをする行為。
審判は攻撃が停滞すると片腕を上げて警告(パッシブシグナル)し、現在のルールでは最大4回のパス以内にシュートしなければ反則となる。
試合のスピーディーな展開を維持するための重要なルール。
(参考:
Håndboldregler - Danske håndboldregler og spilleregler
IHF | De nouvelles règles à appliquer cette saison - HandNews)
フランス語の用語
1. Demi-centre(ドゥミ・サントル:センタープレーヤー/ゲームメーカー)
攻撃の中央(センターバック)として、チームの司令塔となるポジション。
戦術コンビネーションを開始・指示し、PivotやArrièreにパスを供給する。
守備時にも指示を出すなど、頭脳とテクニックが求められる。
(参考: Demi-centre (handball) — Wikipédia)
2. Croisé(クロワゼ:クロスプレー)
後衛同士が走路を交差してポジションを入れ替わる攻撃戦術。
例えばバックとデミサントルが位置を交換することで、ディフェンスにズレを生じさせる。
クロス直後にできた一瞬のマークミスマッチを突いてシュートやパスを選択する。
(参考: Arrière (handball) — Wikipédia)
3. Roucoulette(ルクーレット:回転シュート)
手首のひねりでボールに強い横回転を与えて放つシュート。
バウンド後、弧を描いてゴールへ入る高等テクニックで、ウイングが横から狭い角度を狙う際によく使われる。
ドイツ語では"Dreher"、スペイン語では“Rosca”と呼ばれる。
(参考: Handball : saurez-vous deviner à quoi correspondent ces cinq mots ?)
4. Montée de balle(モンテ・ドゥ・バル:速攻展開〈第二波攻撃〉)
ボール奪取後、素早く攻撃に移る一連の速攻フェーズ。
直接速攻(contre-attaque directe)が難しい場合でも、全体で急速に攻め上がり第二波を形成する。
ディフェンス→オフェンスの切り替えでウイングやバックが走り出し、相手守備が整う前に仕掛ける。
(参考: 3 situations handball pour améliorer le jeu de transition)
5. Gardien volant(ギャルディアン・ヴォロン:攻撃参加するGK)
キーパーをベンチに下げてフィールドプレーヤーを追加し、「7人攻撃」を行う戦術。
近年のルール改正で「ユニフォームを着替えずにGKの代わりに出場できる」ようになった。
攻撃力は上がるが自陣ゴールが無人となるリスクを伴う。
(参考: Håndboldregler - Danske håndboldregler og spilleregler)
6. Jeu passif(ジュ・パシフ:パッシブプレー)
上記 Passivt spil と同じく、攻撃側が消極的プレー(時間稼ぎ)を行うと審判が腕を上げて警告する。
パス4回以内にシュートしないと攻撃権を失う(旧ルールは6回)。
終盤の点差が開いた試合では「パッシブ」回避のため、一応パスを回して形だけ攻める様子がよく見られる。
(参考: IHF | De nouvelles règles à appliquer cette saison - HandNews)
ドイツ語の用語
1. Kempa-Trick(ケンパ・トリック:空中連携シュート)
二人の連携で、空中でパスを受けそのままシュートする華麗なプレー。
1950年代にドイツのベルンハルト・ケンパが考案したことに由来。
フランス語圏では「Kung-Fu」とも呼ばれ、決まると観客を沸かせる。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
2. Harz(ハルツ:松ヤニ)
ボールのグリップ向上のため使われる粘着樹脂。
片手キャッチやスピンシュートを容易にするが、床が汚れるため使用可否はリーグや会場で異なる。
「パッテ(Patte)」とも呼ばれ、近年は環境に配慮したアンチハルツ製品も検討されている。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
3. Tempogegenstoß(テンポ・ゲーゲンシュトース:速攻カウンター)
相手の攻撃失敗直後に一気にボールを前線へ繋ぎ得点を狙う速攻。
ドイツ語圏では速攻全般をこう呼ぶが、特にターンオーバー直後の一撃を指す。
相手の得点直後からの速攻は Schnelle Mitte(シュネレ・ミッテ) と区別される。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
4. 6-0 Abwehr(ゼックス・ヌル・アプヴェーア:6-0ディフェンス)
6人のフィールド守備陣がゴールエリア付近に横一列で並ぶ基本的なゾーンディフェンス。
ゴール前を厚くし、シュートコースを限定する。
5-1や3-2-1といった前に出る布陣より守備範囲は狭くなるが、中央に強固な壁を作るメリットがある。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
5. Körpertäuschung(ケルパー・トイシュング:身体フェイント)
攻撃側が体の動きを使って守備を欺くフェイント。
上半身や視線の動きでDFを惑わせ、逆方向に抜き去る。
地味だが1対1突破で非常に重要なテクニック。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
6. Passives Spiel(パッシヴェス・シュピール:パッシブアタック)
Passivt spil / Jeu passif と同じ「消極的な攻撃」を意味する。
審判が「時間稼ぎ」とみなすと腕を上げて警告し、そこからパス4回以内にシュートしなければ反則となる。
旧来「Zeitspiel(ツァイトシュピール)」とも呼ばれ、パス回数の明文化により判定基準が統一された。
(参考: Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
スペイン語の用語
1. Rosca(ロスカ:スピンシュート)
フランス語の Roucoulette と同様の「横回転シュート」。
ウイングがゴールの横から手首で強烈な回転をかけ、バウンド後に弧を描いてGKをかわす。
狭い角度から得点を狙うための高度なテクニック。
(参考: Handball : saurez-vous deviner à quoi correspondent ces cinq mots ?)
2. Fly(フライ:空中連携)
スペイン語圏での俗称で、空中でのパス&シュートプレー。
味方が放り上げたボールをジャンプでキャッチし、着地前にシュートする。
ドイツ語の Kempa-Trick、フランス語の “Kung-Fu” と同じプレーを指す。
(参考: El 'fly', espectacularidad en estado puro - RFEBM)
3. Pasos(パソス:オーバーステップ)
ボール保持中に4歩以上進むと反則となる「歩数」違反。
ハンドボールでは3歩目までしか許されず、4歩目に入ると「パソス!」と審判や観客が判定を促す。
(参考: Reglas del balonmano: ¿cómo jugar handball?)
4. Dobles(ドブレス:ダブルドリブル)
一度ボールを抱えた(両手で保持した)後にもう一度ドリブルすると反則。
「doble bote(二重ボールつき)」とも呼ばれ、バスケットボールのダブルドリブルに近い。
攻撃の流れを止めてしまうため初歩的なミスとして注意される。
(参考: Reglas del balonmano: ¿cómo jugar handball?)
5. Falta en ataque(ファルタ・エン・アタケ:オフェンスファウル)
攻撃側が守備者に体当たり(チャージング)した場合などの反則。
バスケットボールの「オフェンスチャージング」と類似。
攻撃側がファールを取られると相手のフリースローで再開される。
(参考:
Kempa-Trick, Schlagwurf & Co.: Diese Handball-Begriffe … | SPORT BILD)
6. Defensa 3-2-1(デフェンサ・トレスドスウノ:3-2-1ディフェンス)
最終ラインに3人、その前方に2人、さらに1人を最前線に置くオープンディフェンス。
9mライン付近で相手に積極的にプレッシャーをかけ、外からのシュートを防ぐ。
スペイン代表が好んで使い、守備のミス誘発から速攻に繋げるスタイルが特徴。
(参考:
C.A.I.H. HANDBALL: Sistema de Defensa 3-2-1 Resumen)
補足
本記事における各反則や戦術ルールは、国際ハンドボール連盟(IHF)のルール改正や各国リーグの運用によって若干の差異がある場合があります。
パッシブプレー(受動的攻撃)に関するパス数上限(4回または6回など)も、シーズンや大会によって適用が異なる可能性があるため、常に最新の競技規則を確認してください。
記載の参考リンクは、引用元や詳細情報を知る際にご活用ください。
ハンドボールにおいて国際的に活躍するためには、単なる言語の壁を越え、各国のプレースタイルや用語の背景を理解することが重要です。ぜひ参考にしていただき、指導・プレーの幅を広げてください。