談話室No.1 「思い通りにいかない自然」
いまこそ「思い通りにいかない自然」から大いに学ぼう 〜養老孟司〜
新型コロナ・ウィルスによる誰も想像しえなかった事態は、私たちから多くの日常、つまり「当たり前」を奪っていきます。しかし、この「当たり前」は「思い通りにしよう」という私たちの妄念(迷いの心)が招いたものです。
数少ない恩師の1人、ある先生の言葉を思い出しました。「平等で多様な〈弱きいのち〉の連帯へ」です。人は「人間」という生物を、いかにも他よりも優れた特性をもつ生物であると当然のように規定してきました。この思い込みが「当たり前」でなかったことに、コロナという未知なる脅威を前にしてあらためて気付かされました。
仏教では、生きとし生けるものを「異生」(いしょう:異なって生きるものの意)と呼びます。また「蠕動之類」(ねんどうのたぐい:群れ蠢く虫の類の意)とも言います。群れ蠢く虫も、その虫を食らう百足も、そして毒を持つ百足を退治する私たち人間も、その全ての生きとし生けるものが共に弱きものとして平等なる存在であることを意味しています。
人間は決して他よりも優れた種族ではありません。コロナによって、我々の生活は容易に崩壊します。そのウィルスもまた、生きとし生けるものです。「異生」として、「蠕動之類」として、共に弱きいのちを生きるものです。
そのようなところから、養老孟司氏の言葉を深く頂戴しました。
合掌
※冒頭引用(女性セブン2020年6月4日号より)
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