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【特別企画】高専卒業生の声【No.2】
高専出身者の特別インタビュー企画、第二弾です。
旭川高専専攻科 応用化学専攻出身で、総合研究大学院大学(通称、総研大 *注1))の博士前期課程(修士)に進学、その後大阪大学工学研究科物理学系専攻応用物理学コースの博士後期課程1年生として入学した、中島優作さんにお話を伺いました。
(URLはこちら)。
国立大学の大学院と同様に、大学院入試を経て博士前期課程を2年間(修士)、そして博士後期課程を3年間(博士)過ごし、研究者でいうところのドライバーライセンス(博士号)の取得を目指します。
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バトルタワーなどと学生の中では話題で、新しい建物です。
一番上にはレストランも併設しています。
Q1.どんな研究をされているのですか?
中島:
私は今、ロボットを活用したメカノケミカル反応に関する研究を進めています。
私たちの身近にある繊維やポリマーなどは溶液中で合成することが殆どです。
ですが、最近は固体中での反応も研究が盛んです。
インタビューアー:
メカノケミカル反応、面白そうですね。
中島:
特に、機械的エネルギーを加えて無溶媒で化学反応を起こすメカノケミカル反応に興味があります。
ロボットで加える力を制御し、メカノケミカル反応の詳細を調べたり反応を制御できないかと考えています。
インタビューアー:
新規の材料をロボットで作るというのはすごいですね。
元々ロボットに興味があったのですか?
中島:
はい。地元の旭川高専は高専ロボコンで有名で、小さな頃からロボット操縦体験に参加したりしました。
また、有機化学が好きだったので、本科でも有機合成の研究をやりながら、高専ロボコンにも出場していました。
実はYoutube(リンクはこちら)でもみれますが、高専ロボコンの開会式の選手宣誓をやったり、新聞に取り上げていただいたこともあります。
インタビューアー:
それはすごい!私も時々ロボコン見ますが、応物にもロボコンやっている方がいらしたとは!
それが今の研究につながるのですね。
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高専で学んだプログラミングが生かされています。
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Q2.総研大に進まれたきっかけは?
中島:
私は高専で有機合成の研究をやっていましたが、これは人がやらなくても自動化してロボットにやってもらったほうがいいんじゃない?という作業が数多くありました。
インタビューアー:
私も化学出身ですが、確かに昼夜問わず合成反応を仕掛ける必要があり、かなり重労働です。
中島:
そうですよね、、、、その経験から大学院ではロボットによる科学実験をやりたいという気持ちが強くなっていました。
そのタイミングでちょうど高専に大学院説明会できてくれたのが、当時、総研大に所属されていた小野先生でした。
インタビューアー:
小野先生は、現在、阪大の応用物理学コースの教授ですよね。
中島:
小野先生は私が修士1年生の時に大阪大学の教授になられました。
小野先生は機械学習をベースにした様々な解析手法を提案されていますが、ロボットに実験をやってもらって実験データを取るということにも興味があると、とても楽しく話されていたのを覚えています。
インタビューアー:
そして大阪大学の博士後期課程の受験をして今に至ると。受験とかは大変ではありませんでしたか?
中島:
総研大の大学院入試は面接のみ、そして大阪大学の博士後期課程の受験も面接対策が中心でした。
ただ、面接が重視される分、取り組んでいる研究や進学後の研究計画について深く聞かれます。
高専では様々な先生方に面接練習をお願いし万全の準備で臨みました。
その分野が専門ではない先生にも添削いただいたことで、面接で分かりやすく伝えることができたと思います。
様々な分野の先生方と交流がある高専の環境が非常に良かったと思います。
Q3:総研大や阪大に進学した際に大変だったことはなんですか?
中島:
旭川が地元なので、高専までは通学もしやすかったです。
ですが、総研大は筑波のKEK(高エネルギー加速器研究機構)で、そもそも初めての一人暮らしでもあり大変でした。
博士課程は大阪大学なので2度引っ越したことになります。高専は実家通いか寮がほとんどなので、高専をでて初めて一人暮らしの人が多いかと思います。
インタビューアー:
北海道から関東、関西へと大変ですね。関西に来ることに不安はありませんでしたか?
中島:
関西だからという不安は特になかったです。
ただ、知り合いのいない新しい場所で一人は色々と厳しいので、学内外で色々な人と交流するよう心がけました。
特に院生は研究に没頭するのも大事ですが、人との交流が新しい研究アイデアやコラボレーションにもつながるかと思います。
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Q4:大学院で就職するというキャリアもあったと思いますが、博士課程に進まれた理由はなんでしょうか?
中島:
修士課程で研究を進めて半年ほど経った頃、修士の2年間だとロボット実験のほんの一部しか取り組めないと感じていました。
そこで博士課程を含めた5年間をかけて一部だけではなく、一連のロボット実験を実現したいと思い進学を決めました。
博士課程を通して、ロボットだからこそできる新たな材料科学があるんだということを示していきたいです。
今取り組んでいるメカノケミカル反応もその1つだと思っています。
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Q5:応物コースでも高専生が編入学や大学院からくる学生さんが増えてきていると思います。もし後輩たちに何かメッセージがあれば、教えてください。
高専は技術者を育てる場であり、大学とは違った良さがあると感じています。
僕は高専生のよさはたくさん手を動かすことだと思ってます。
これは例えば最近活用が進んでいるAIやロボティクスと相性が良いです。
最近のAIやロボティクスは中身が複雑なため事前にすべてを計算することが難しく、考えすぎるよりもまずは動かしてその結果から考えることも重要です。
高専で学んだ技術や行動力を大学での活動や研究に繋げてみてください。
高専の5年間(もしくは7年間)で学んだことはきっと自分の強みになります。
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ありがとうございました。
高専で学んだロボットや有機合成が今の応用物理で生かされる、とても素晴らしい研究をされていますね。
とても楽しそうに研究の話をされているのが印象的でした。
中島さんのように、気概に溢れる学生さんと会えるのを楽しみにしています。
【参考情報】
大学に入った後も、奨学金や修士・博士課程の修学を支援するプログラムなどたくさんあります。
「めっちゃサポート」という面白いホームページが工学部に設けていますので、ぜひご覧くださいませ。
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