へっぽこ
水道から溢れる強い水。波打つティッシュの形。
取るに足らない美しいことで溢れる世界に生きている。だが、その何倍もとるにたらぬへっぽこことで溢れているように思う。
今日の朝はチーかまの赤いテープだけが取れて、ビニールの皮をむくのに一苦労した。痛々しいチーかまを見ながら、私っていつも いつまでも こうだなぁと思っていた。
急いでいる時に限ってラップがぴたっとくっついたり、コンビニのコーヒーで毎回やけどしたりする。落ちにくいファンデーションを服に飛ばす。2階に行って何をしに来たか忘れたり、あきらめて1階に降りたら思い出したりしてまた忘れる。薬を2錠出そうと瓶を揺すったらどばっと5錠でる。しまおうと思ったら全部帰っていって残り1錠になる。お茶やお酒はあと一口が入らない。つまみ食いをしすぎてお腹がいっぱいになる。
思えば風邪とかコロナとか、有名な症状ではあまり病院に行かない。なんか息が苦しいとかダニのアレルギーとか、地味なのばっかり薬にお金を落とす。わざわざひとに言うまでもないような具合の悪さがいつもついてくる。
まったく、人生ムダの繰り返しだ。
でもきっと、ひとつくらいあなたもわかるわかる、と笑ってくれるのではないだろうか。そんな笑いが好きだなと思う。
ことばにするほどでもないことばかりがひっついている日常を有意義、とか意味、とか暇、とかあれやこれやと切りとっては定義づける。そこに当てはまらぬたくさんのものたちをもういちど発見したい。それが美しいことでなくても情けないことや恥ずかしいことであってもいい。
今年もあと少し、新しい手帳を探している。日々が「日々」と名付けられているので連なりのように感じるがそんなことはない。あ、そういえばこうだな、とかこうだったなとか、記憶になかったものがもう一度戻ってくる喜びを待ちたい。帰ってきてくれるためには鍛錬が必要だ。私は今日も、世界をじっと、見つめている。