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【警察エッセイ】人生を賭けた場所
ハイどうもぉ。
皆さんの心の中の取調官。
元警察官の花山烏一です。
皆さん、取調べを受けた経験はありますかい?
『取調べを受けるって事は犯罪者だって事だろ?花山、てめぇは読者の事を犯罪者と決めつけてんのか、この野郎。』というツッコミは置いておいて、刑事ドラマや漫画ではお馴染みの取調べを受けた経験があるって人は、この記事をお讀みになられている皆さんの中には、ほとんどいないかと思う。
花山は、かつて警察官をしていたから取調べは皆さんに比べたら身近なモノではあったんだけども、警察官になって初めて取調室の中に入った時は、コンクリートで囲まれて事務机が2つ向き合っているだけの、何とも無機質な部屋だなと思ったんよね。ドラマとかで何となくの取調室のイメージは持っていたんだけども、実際に見るとまた違った感情を抱いたね。
昔のドラマの影響か何なのか分からないんだけども、『取調べ=カツ丼』みたいなイメージを持っている人は多いかと思う。花山も警察官時代に警察官じゃない友人や知人から『やっぱり取調べの時ってカツ丼出すの?』ってよく聞かれてたんよね。期待を裏切るカタチになってしまうカタチで申し訳ないけども、現代の取調べではカツ丼はおろかコーヒーも出しちゃいけないくらい厳しくルールが定まっているのね。食事を出す時もあるんだけども、それはかなり限定的な場面だし、飲み物はいつでも出せるんだけども、基本的には水。
ドラマとかだと演出上致し方ない事なんだけども、どうしても取調べってポップな感じで表現される事が多いと思うんよね。でも、実際の取調べは、警察も被疑者も己の人生を賭けた戦いなんよね。
■取調べとは
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そもそも、取調べがどんなモノなのかって一般社会で普通に生きてたら考える事なんて無いよね。花山も警察官になるまでは取調べの『と』の字も考えた事がなかったから、取調べがどういった理由で何を根拠に行われているかを知ったのは警察官になってから。
余談だけども、取調べって警察官だけの特権かと思われがちなんだけど実は警察官以外にも取調べが出来る仕事はあるのね。『ちょ待てよ。』でお馴染みのキ○タク主演のドラマ『HERO』で認知が広がった検察庁に勤める検事も取調べは一般的な業務なのね。検事が行う取調べの事を『検事調べ』って言うんだけども、やってる事は警察が行う取調べと基本的には一緒。ただ、検事の場合は『勾留請求』だったり『起訴』だったりが絡むから、被疑者からすると警察の取調べと比べて重みの差はあるかなと思う。まぁ、ぶっちゃけ、花山はあんまり検事調べについては詳しくないから興味がある人はグググッとググってほしい。他の機会で書くかもしれないけども、今回は警察が行っている取調べにフォーカスを当ててのハナシ。
取調べに限らないハナシなんだけども、警察が行う行為は全て法的根拠に則っているのね。たまに喰らう人もいる『職務質問』や数年に一度やって来る『巡回連絡』、それこそ誰かを『逮捕』する事も全て法律に沿って行われるのね。だから、逆を言えば法律に反したり、法律に則していない行為は違法な行為となるのね。取調べに関しては、刑事訴訟法で『警察などの捜査機関は事件捜査の為に必要な取調べを行う事が出来る』って記載がなされているのね。
もしかしたら、受けた事がある人もいるかもしれないけども、取調べは被疑者として受けるのはもちろん、参考人としても受ける場合があるのね。例えば、事件の目撃者だったり、事件には無関係だけども被疑者と親しい人とかだと、警察が出頭要請をしてハナシを聞く事があったりするんよ。
大学の眠てぇ講義みたいな説明が続いて、すまねぇとは思ってるけども、もうちょい頑張ってくれ。
■取調べのルール
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花山はギリギリ20代のスーパーゆとり世代だから昔の事は詳しくは分からないんだけども、現代の取調べはかなりガチガチのルールでがんじがらめになっているのね。冒頭付近で書いた、取調べの時にカツ丼やコーヒーが出せないって言うのも取調べのルールの一つ。
『取調監督制度』という漢字6連打の堅っ苦しい制度があっるんだけども、簡単に言えば『取調べの時に捜査機関側の人はやったらアカン事があるよ』という事がまとめられている制度なのね。この制度に抵触する行為がいくつかに分かれているんだけども、『便宜供与』『身体接触』『有形力の行使』『不安困惑』『人の尊厳著害』『一定の姿勢動作』『深夜・長時間の取調べ未承認』に分けられるんよ。
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何で法律ってこういった堅っ苦しい言葉ばかり使うんだろうね?もっと、誰が読んでも理解出来る様な表現にすべきだと花山は心の中でデモをしてるんだけども、皆さんはどう?
『あげぽよギャルが法律をチョベリグに解説してみたんだけど』とか『法律ヲタクの小生が快刀乱麻に解説するのだァ』みたいな本を書いたら売れそうな気がするんだけども、書けそうな人がいたらこのアイディアあげる。
まぁ、冗談は置き配にでもしておいて、カツ丼やコーヒーを出すのがどんな行為に該当するかと言うと『便宜供与』という所に該当するのね。要するに、被疑者に何らかの利益(カツ丼やコーヒー)を与えて、その代わりに捜査機関側は有益な情報(供述)を引き出すといった行為がアカンのよね。
それくらい良いじゃんと思われる人もいるかと思う。花山も現職時代ですら、カツ丼はちょっと微妙だけども、コーヒーくらいは良いんじゃね?って思ってたんよね。
コレについては過去の警察の傲慢さというかだらしなさが要因なんよね。皆さんも一度はお耳にした事があろうかと思うけども、取調監督制度がちゃんと確立する前は、警察官は取調べで好き放題やってたのね。好き放題って言うのは生ぬるいね。まるで自分達は何をしても許されると思った暴君だったのね。
自白を得る為に被疑者を拷問したり、やってもない事を供述させる為に何時間も取調べを行って嘘の供述を出させたり、警察にとって都合の良い内容を供述調書に書いて無理矢理サインさせたりして取調べを行うなど、ホントに今じゃ考えられないくらいやりたい放題にやってたんよ。仮に被疑者が真犯人だったとしても倫理的にやっちゃいけない事だし、無罪であるにも関わらず真犯人に仕立て上げられて何十年も刑務所に収監される事になった冤罪を起こしてたりもした背景があって、徐々に取調べのルールが厳格化されていったのね。
ただ、辞めた今だから好き勝手言えるけども、今野取調べは犯罪者達にあまりにも有利に出来ているのね。
他の記事でも書いた事があるんだけども、花山が聞いた事があるハナシで、ある行為をしてしまったが為に事件そのものがおじゃんになってしまった事があるのね。
その刑事さんはある被疑者の取調べをしていて、最初の数日はなかなか供述を得られなかったんだけども、粘り強く取調べを続けた結果、何とか被疑者から供述を得られたのね。被疑者も取調べをしていた刑事さんの熱意に感化されたのか反省した様子で『刑事さんのおかけで反省出来たよ。ありがとう。』と言って握手を求めてきたのね。その刑事さんはその握手に応じたんよ。ココで終わればグッドエンドだけども、もちろんこのハナシには続きがあって、取調べが終わった数日後にその被疑者の弁護士から『被疑者の○○さんから、刑事さんに暴力を振るわれたと申し立てがありました。』という連絡があったのね。要は、被疑者はわざと反省した振りをして刑事に握手をさせて、身体接触を図ったのね。もちろん、担当刑事は手を握っただけで暴力は出していないと訴えたんだけども、後の祭り。暴力を振るってないという証拠もないし、何より身体接触があったという事実が弁護側に有利に働いて、結局その事件は起訴出来なかったらしいのね。
他にもあって、薬物系の事件の時の取調べは被疑者から水を求められたら必ず新品の物を提供しないといけないのね。要は、開封済みの水だったり紙コップに入れた水だと、警察官がそれに薬物を混入させたと言わせない為にね。だけども、担当していた警察官がその事を知らずに何杯も紙コップで水を提供してしまって、薬物の陽性反応が出ていたにも関わらず、その事件も起訴する事が出来なかったのね。
まぁ、薬物事件については担当した警察官に落度があったから何とも言えないけども、それでも世間一般からすれば『そんな事で事件がパァになってしまうの?』って事が多過ぎるのね。被疑者とすれば何としてでも早く釈放されたいから弁護側にあれこれ話すし、弁護士も人によってはそういった事件とは関係の無い警察官のスキをついて来るから、かなり神経を使って取調べは行われているのね。
■人生を賭けた供述
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取調べって端から見れば警察官と被疑者が喋っているだけなんだけども、ただのおしゃべりに見える行為が誰かの人生を大きく変えるモノなんよね。
警察官は被疑者に真実を話させて事件の真相を追求する。被疑者は自分の供述いかんで犯罪の大小が変わってくる。
どちらの立場でも、結果次第で人生が大きく変わる。
被疑者は適当な事を言えば、その後の事件捜査や裁判でモロに影響が出るから、自分にとって都合の良い様に答えるのね。中には、心底反省して最初から真実をありのままに話す人もいたりするんだけども。警察官だって、適当に取調べをしようもんなら、被害者を救出するという目的は果たせないし、己のキャリアだってかかっているんだから、その後の警察人生に大きな影響を与えるよね。
在宅捜査なら厳密な期限は決ってはいないけども、逮捕被疑者の場合は最大でも22日間しか勾留が出来ないから、その間にあらゆる捜査をして、何とかして被疑者から供述を引っ張り出さなきゃいけないのね。花山は取調官をやった事がないから分からないけども、常人じゃ考えられないくらい半端ないプレッシャーが襲いかかって来るモノなんよね。
警察官は被害者と己の人生。被疑者は己の人生を賭けて、取調べが行われるのね。
■まとめ
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
今回はちょっとディープな内容だったので有料にさせていただきました。
冒頭で書いた通り、ドラマや漫画とかだと取調べってポップな感じな印象を持たれやすいんだけども、実際の取調室の空気は肌がひりつく程ピリピリにピリついているのね。
花山は取調官をした事がないんだけども、補助には何度も付いた事があるんよね。他にも、留置所での勤務時代に事前聴取というカタチで何度も取調室の中に入った事があるんだけども、無機質なコンクリートの部屋に事務机が2つ向かい合っているだけの姿は、ここが本当に人生を賭けた大勝負をする所なのかなと思ったりもしたんよね。
いつもはふざけている刑事さんも取調室では真剣そのものだし、被疑者だって真実100%で話したら、自分が不利になる事が見えているから、ぶっちゃけミエミエの嘘を付いたりもするのね。でも、嘘が嘘である事を証明しないといけないのが警察官の辛い所。心理学的や雰囲気で嘘だって言っても何の効果もなくて、誰が見てもお前の言っている事は100%嘘だと証明しないといけないのね。
取調室に入ってくる被疑者は様々な人達がいるんよ。
何一つ答える様とせずに黙秘を貫く人、聞いてもないのにペラペラと身の上話をする人、何が何でも無罪と主張し続ける人、泣き崩れる人、暴れる人etc…。
一つ言える事は、取調室で被害者よ事を第一に考えている被疑者はほとんどいないという事。法が許すならボコボコにしてやりたい被疑者も何人もいたし、こんな奴が無罪でシャバに出たらアカンだろと思わせられる人が多かったのね。そんな人達を相手に警察官は寝食を犠牲にして、家族との時間を犠牲にして、真実を手繰り寄せるのね。
日本は安全な国とよく言われるけども、目立って表面化していないだけで、毎日、多くの人が犯罪に巻き込まれているのね。
今日もどこかで警察官と被疑者の人生を賭けた取調べが行われているかと思うと、凄い世界で生きてたなって思わせてくれるんよね。
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今回は以上となります。
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そんじゃ待ったねぇ。
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