初めての沖縄(修学旅行)で空回りする。
高校2年生の2月頭は、修学旅行だった。
冬の修学旅行の話なんて、書くのはもう少し先かなあと思ったんだけど。
いかんせん2年生はそれほど、面白いネタもなくて……。
これで3年生のハードルが上がったね☆
そんなこんなで、修学旅行。
ドキドキワクワクしかない。
生まれて初めての飛行機。
生まれて初めての沖縄。
しかも、担任は近澤先生!
当時、私はなんだかんだあれこれあって。
「年が近い男性との恋愛はダメだ」と思っていたのだ。
やっぱり近澤先生(推し)が一番!
※そもそもほぼ女子校(8:2で女子が多い)だし、女子クラスだし
体育祭と文化祭以外は男女別。
つまり、修学旅行は女子オンリーだ。
沖縄の修学旅行では、ちょっとでも近澤先生と話すぞ!
なんでもいいから、先生の印象に残るぞ!
……と思っていたんだけどねえ。
近澤先生、隣のクラスの美人な先生としゃべってばかり。
先生同士の交流だよね。
うんうん、でも、なんだろうな。
先生やけに楽しそうね?!
教室で見る時より、ニコニコしてるな、おい!
そんなわけで、行く前からだいぶテンションダウン。
今から沖縄に行く人のテンションではなかった。
とはいえ、飛行機に乗ればテンションは上がった。
そして、席の近い友だちからこんなことを聞かれた。
「ねえ、千世ちゃん。近澤先生の写真撮った?」
実は、空港でこっそり一枚撮っているが、うまく写っているか分からない。
※当時は使い捨てカメラ。
そんなことを友人に話したら、彼女はこんな提案をしてくれた。
「じゃあさ、私を撮るフリしてよ~。そんでさ、斜め後ろの席にいる先生を撮ればいいよ」
最高の提案だった。
先生は一列後ろの斜め後ろだ。
ここから後ろを向いて、友人を撮るふりをして、先生を撮れば……。
自然な盗撮!
※良い子は真似しないでね。
とはいえ、さすがに近い位置で、不自然なカメラの持ち方。
盗撮は本人にバレバレだったろう。
何も言わなかったのは、先生の優しさか。
私は、秋に色々あった。
簡単に言えば、春から所属していたグループの女子から、いじめられるようになったのだ。
その時に、孤高のぼっちとなった。
しかし、それが功を奏して、私はグループ以外の女子から声をかけてもらい
お弁当を食べたり、おしゃべりしたり、連絡をとったりするようになったのだ。
まあ、端的にいえば、私が春から所属し、私をいじめてきたグループは。
クラスメイトのかなりの割合から嫌われていたらしい。
よかった……追い出されて。
ぼっちになった私を、近澤先生は心配してくれた。
「今日は忙しいけど、明日以降、ゆっくり悩みを聞ける」みたいなことも言ってくれたな。
やっぱり先生は、生徒のことをちゃんと考えてくれている。
かっこいいなあ、と思った。
そんなこんなで、色々と経て、今は元気にやれている。
だからこそ、この修学旅行でちょっとでも話したいなあ。
そう意気込んでいた。
飛行機を降りて、バスで移動。
お昼を食べるために歩いていたら、先生の後ろ姿を発見。
私はここぞとばかりに話しかけた。
緊張しまくりで、「先生、荷物重そうだねー。持とうかー?」みたいなノリで話しかけたのだ。
先生は、「いや、いい」と言っただけだった。
なんかちょっと迷惑そうだったな。
もともといつも怒っているような顔だし、口調は愛想ないけど!
でも、迷惑そうな口調だったなあ。
変なこと言っちゃったなあ。
私、早くも挫折。
もう先生に話しかけて仲良くなる、なんて考えるのはやめよう。
二日目は植物園のような場所へ。
建物の中では、ヘビとマングースの戦い、みたいなものをやっていた。
同じ班の女子Oが、興奮気味に言った。
「ヘビ見たーい!」
すると、同じ班のヨウコちゃんが申し訳なさそうに言う。
「ごめん、私、ヘビ苦手で……」
ここは班長の私(じゃんけんで負けた)が、場をまとめなければ!
私「そっかー。ヨウコちゃんがヘビ苦手ならやめておこうか」
O「やだやだ~! ヘビ対マングース見るー!」
私「子どもか……」
ヨウコ「私は後ろのほうにいるから、Oちゃんは前で見てて」
もはやすでに気持ち悪そうなヨウコちゃん。
私とヨウコちゃんは、後ろのほうの席へ。
もちろんOには、「後ろで見るけど、Oちゃんは前行く?」と聞いたら
「絶対前がいいから1人でも観る」と行った。
まあ、そんなに観たいならいいか。
私とヨウコちゃんは、後ろのヘビ対マングースが見えない位置にいた。
私はヘビが苦手とかそういうわけでもなかったが。
殺し合いをするようなら、なんか嫌だなと思って見なかった。
ヘビvsマングースの対決が終わり、建物を出た。
すると、Oはだいぶ不機嫌だった。
理由を聞いてみると、こう言ってのけた。
「一人で見るの、なんか嫌だったんだけど!」
先に聞いたじゃーん!
私たち後ろ行くからいいかって!
一人でも観たいって言うたやろ(似非関西弁)
私は基本的に、思ったことを口に出してしまうので
上記のようなことは伝えた。
怒らず、冷静に伝えたと思う。
えらいぞ、私。
……と思ったんだが。
Oは泣きだした。
なんでーーーーーー?!
ってゆーか、泣くなよー!
17歳だろー!
「千世ちゃんに怒られた!」
Oはそう言って泣いた。
いやいやいや……いやいやいや
ぐったりする私とヨウコちゃん。
そして、同じクラスの子たちが、「どうしたのー?」と集まってくる。
事情を知らない女子たち(カースト上位)がOに事情を聞いていた。
Oはなんとこう言ったのだ。
「千世ちゃんと、ヨウコちゃんに無理やり、ヘビvsマングースを見せられた! 私はヘビ大嫌いなのに!」
うそつけーーーーーーー!
私とヨウコちゃんは、げっそりしてその場を離れた。
ちなみに、別の場所から様子を見ていた別の友人いわく。
「O、嘘泣きだったよ」と教えてくれた。
私は事情を知る友人たちには、労われ、おまけに班行動は、私たちの班と2班でしてくれることになったのだ。
「今度、Oがワガママ言ったら、私たちも止めに入るからね」と。
心強い。心強すぎる。
ちなみに、この時、Oの行動にガチギレしくれたのは
スズちゃんという子。
彼女とは、のちのち親友となる。
友情は深まったが、どっと疲れた私。
近くでサーターアンダギーが売っているのを見て、一つ買って食べた。
疲れた体に、甘さがしみていく。
揚げたてサーターアンダギー、すごく美味しい!
美味しすぎて、そのあと立て続けに2個注文して食べた。
サーターアンダギーの屋台の横のベンチで、揚げたてのサーターアンダギーを食べていた修学旅行生は、私しかいなかった。
それにしてもおいしかった。
おみやげに五個入りのサーターアンダギーを買ったくらいに。
しかし、サーターアンダギー四個はさすがに多かった。
当時、私はわりと食が細くて、晩ご飯が食べられなかったのだ。
晩ご飯は、大皿料理で、欲しいものだけ取って食べる中華料理スタイル。
なので特に残さずに済んだが。
夜に、みんながお風呂二週目をしている時。
無性にお腹が減って、お土産のサーターアンダギーを一個食べてしまった。
食が細いんじゃないのか。
そして、お土産を食べてるってどうなの。
3日目は国際通りに行き、午後には飛行機で愛知へ帰る日。
国際通りでは、みんな真剣に買い物をしていた。
私は国際通りでClaire'sというプチプラのアクセサリーショップで指輪を買った。
Claire'sってさ、私の家の最寄り駅の、隣の駅ビルにあるんだよ。
なんでわざわざ沖縄に来てまで入るんだ。
沖縄にしかない店に入っておけよ!
……と大人になってから思ったけど、10代は、ノリと勢いだけで生きてからなあ。
那覇空港で班長は、班員がそろっているかどうかを先生に報告した。
とはいえ、私含めて三人だけど。
近澤先生に、「私たちの班は全員います」と言ったら。
「それはなんだ」
近澤先生が私の手を見る。
あっ、買った指輪、つけっぱなしだった。
「外しておけ」
そう言われて、私は「ごめんなさい」と言って指輪を外す。
しかし、先生とまともに口が利けた。
いつも通りの先生だ、と内心では喜んでいた。
なんかもうそれ、会話なの? と思うんだけど。
叱られてもいいから、先生に見てほしかった。
指輪はつけっぱなしだったのを、本当に外し忘れていただけなんだけど。
でも、ふと「なんかそれって、寂しいな」と思った。
恋が叶わないのはしょうがない。
だけど、校則違反を注意されることでしか会話ができないんて。
結局、私は一年かけて、先生に覚えてもらえたんだろうか。
出来の悪い生徒とは思っているかもしれない。
だけど、やっぱり先生にとって、その他大勢でしかないだろう。
卒業したら……いや、来年にはもう、先生は私のこと、忘れてるかもしれない。
修学旅行の帰りの飛行機では、そんなことを考えて、切ない気分になっていた。
恋って辛いな……でも、これが大人への階段かもな。
そんなふうに考えていると。
「千世ちゃんの好きな曲かかってるよ!」
そう教えてくれたのは、Oだった。
ニコニコして機嫌が良さそうだ。
悪い子じゃないのよ。たまにワガママだけど。
私もワガママだし、お互い様かあと思いつつ、ヘッドフォンで音楽を聴いた。
修学旅行が終わる。
あと一カ月でクラス替えもある。
先生は、さすがに来年は担任にはならないだろう。
そう思うと、なんとも言えない気持ちになった。
私は、修学旅行後も沖縄で買った指輪を大事にしていた。
先生と、唯一の接点のような気がしていたからだ。
しかし、うっかりなくしてしまった。
私にとって、あの指輪は先生との接点だけではない。
そもそも沖縄の修学旅行の思い出である。
デザインもとても気に入っていたし。
そして数年前に、ネットでそっくりの指輪を見つけた。
即購入。
私はこの指輪を見るたびに、修学旅行のことを思い出すのだ。
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