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わたし、もしかして恋のキューピッドの才能がある?!

高校2年生の初夏~秋は色々あった。

初夏に生まれて初めて彼氏ができたが、なんだかんだで4カ月くらいでフラれた。
別れたあと、男友だちに愚痴を聞いてもらって、励ましてもらううちに、「私、この人のこと好きだ」と気づいて告白するが、「俺と性格似てる人は無理」と言われて断られ、だいぶ落ち込んだ。

しかし、わりと傷心なのにしっかり元気だったわたし。
周りの友だちから、恋愛相談をされることが増えたきた。

小5からの付き合いのチエリは、同じ高校で、科が別なので校舎が離れているものの、登下校の電車は必ずいっしょだった。
チエリとは、一度も恋バナをしたことがなかった。
だけど、わたしが先生が好きだの、彼氏にフラれただの話しているうちに。
チエリも好きな人がいることを教えてくれたのだ。

電車内で一目惚れをした、同じ高校の一つ上の先輩。
ラブレターを渡したいけど、勇気がない。
そんな相談を受け、わたしはその先輩に「すみません」と声をかけた。
チエリは、ラブレターを渡した。
ふたりは、それからしばらくして付き合い、数年後に結婚した。

当時、わたしは見知らぬ人に声をかけることに、まったく抵抗がなかった。
その理由は、方向音痴だからである。
方向音痴のくせに、ひとりであちこち出かけるのが好きだった。

だけど、結果的に道に迷うので、誰かに道を聞く。
そういえば、19歳の頃に一日に五人ぐらい(老若男女問わず)に道をたずねた日があった。

そんなわけで、方向音痴のおかげなのか、初対面の人に話しかけることには慣れていたのだ。
話しかけられないと、道を聞けなくて詰む。
当時はまだポケベル全盛期。今のようにスマホで道を調べられない。
道に迷う=誰かに聞く以外の選択肢しかなかったのだ。

そんなわけで、わたしは友だちから、「この人を呼び出してほしい・呼び止めてほしい」という頼みは断らなかった。

声をかけるだけなら、道を聞く感覚でできる。
そのうえ、友だちの恋バナも聞ける。
そして、わたしが声をかけたきっかけで、その恋がうまくいったら嬉しい。

うちの高校はほぼ女子校で、女子8割、男子2割ぐらい。
男女校舎も分かれていたが、2年生の時だけは3年生の男子が校舎が一緒だった。
その時は、いろいろな先輩に声をかけた気がする。

体育祭や文化祭だけは男女いっしょなので、その時も頼まれれば声をかけた。
「あのー、すみません。ちょっといいですか?」
それだけ言うだけである。
告白をしたりラブレターを渡したりするのは、本人の役目だ。

時には、学校の最寄り駅のホームで他校の男子に声をかけたこともあった。
声かけ女として妖怪みたいな呼ばれ方をしていたかもしれない。
それぐらいに、色々な人を呼び止めた。

当時は、わりと傷心の身だったが。
それも時間が経てば忘れていく。
近澤先生への思いはいつの間にか復活していた。
だけど、以前のような強い憧れではない。
かっこいいなあ、ぐらいの淡い気持ちだった。

つまり、わたし自身が恋愛をしていないから、友だちの恋愛を聞いたり見たりして、疑似恋愛を楽しんでいたのかもしれない。

そんなことを繰り返すうちに、わたしはもう1つスキルを得た。
「すみません。ちょっといいですか」
に加えて、ほどよい笑顔である。

このほうが、怪しい者ではないと証明できると思ったからだ。
しかし、今思えばそのほうが怪しい。

とはいえ、わたし自身も道を聞かれやすいタイプである。
警戒されないタイプというのは、こっちからも声をかけやすかった。

そんなこんなで、いつしかわたしは友だちに
「千世ちゃんに、声をかけてもらうと恋が成就する」
と冗談交じりに言われるようにいなったのだ。

うれしい反面、そんな効果はないな、と思った。
恋愛が成就するなら、わたしはフラれてないしな。

とはいえ、他人の恋のキューピッド(きっかけ作りだけど)をするのも、とても楽しかった。
それも青春の思い出のひとつだったなあ。

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