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I need you baby ショートショート #うたスト #課題曲E/大橋ちよ

「それじゃ、みんな、最後はこの曲で…」

愛なんてクソ喰らえ
夢なんてクソ喰らえ
誰の助けもいらない
あたしは あたしは
ロックに溺れたいだけ

✴︎✴︎✴︎

「ね、今日の客はノリが良かったね」とギターのユウタが言う。
私は好きな歌を歌う、それだけで充分。
「あっそう?それなら良かった」と取り敢えず言葉を返す。

楽屋の鏡を見ながらいつも思う。
今どき流行らないアミタイツにミニの黒い革のスカート。
髪の毛は大好きなシーナ&ロケッツのシーナの髪型真似て爆発して、赤いルージュに黒いネイル。
ほんと流行らない…でもこれが私。

ライブが終われば打ち上げ。
でも、酒もタバコもやらない私はいつの頃からか終わったら近くの公園で缶コーヒーを買ってブランコに揺られながら頭を空っぽにするようになった。
面白味のない本当にロックを歌うしか脳のないオンナ。

バンドのメンバーは打ち上げの話をしている。
「じゃ、みんなお疲れー!また来週ねー!」と少し機嫌良く声を掛けて楽屋を後にした。

自分のバンド「widening  love」を結成したのは5年前。
一部のマニアにしかウケない。
音楽の方向性を変えるべきなのか、解散するべきなのか、今が正念場のような気もしていた。

缶コーヒーを買っていつもの公園に行ったら先約がいた。年の頃は20代後半の革ジャンを着た男性。
足が長いのか地面に踵を付けたままブランコを揺らしてる。
ちょっと躊躇したけど声をかけてみた。

「ね、ここ先約あるんだけど」と言ってから失敗したと思った。
振り向いたその男の顔は私好み。
完全にロックオンされた。

「あっそう。reservedっていう札がなかったからいいのかと思ったよ。」
洒落た返答の対応に困って、缶コーヒーの蓋を開けようと思ったら伸びた爪が折れた。
「shit」思わずいつもの口癖が出てしまった。
「ladyがそんな言葉使うとは」
穴があったらそこに入りたかった。
そのくらい動揺していた。

蓋を開けようともたもたしていると、男が私の手から缶コーヒーを取って開けてくれた。
「はい、どうぞ」長くて白い指が持つといつもの缶コーヒーが違うように見えた。
「thank you」そう言うのが精一杯だった。

「じゃ〜、乾杯しようか?!俺はヒロ」
「…あっ、私は、カオル」
「へーその服装に似合わない素敵な名前だね」と言ってウインクをしてきた。
「ね、初めての人にいう言葉?」と言いながらも乾杯をしてしまった。

それから私達はお互いの事について少し話した。
バンド仲間意外とこうして話すのは久しぶりだったせいか私は妙にはしゃいでいた。

かれこれ90分ほど話したころ欠伸が出てきた。
「それじゃ、もう帰るよ」と気を利かせて彼が言ってきた。
「うん。そうねライブで疲れてるし、私も帰るわ…ね、良かったら来週そこのライブハウスで歌うんだけど来てよ」
そう言うとキスをして「ok」と月の方向に向かって歩いて行った。

その夜私は口紅を落とさずに寝た。

<1週間後>
「カオル、何か今日緊張してる?」
…バンドのメンバーに言われてしまった。
明らかに見てわかるくらい私は緊張していた。
何度も客席を覗いては彼が、ヒロが来ていないか確認をして、兎に角落ち着かなかった。

それでも、ライブが始まると私の頭ん中はロックしかなかった。
いつもよりも声もでる、客席も満席。
気持ちいい!

後2曲というところで彼が目に入った。
彼はジッと表情を変えずに私を見ていた。
そしてメンバーに伝えた。
「ね、次の曲、変えるね。
I need you baby でよろしく」

I need you baby あの日公園で会って
I need you baby あなたに恋をした 
I need you baby 離れないでこのまま
I need you baby わかってるでしょ
I need you baby  you are my  hero,HIRO

《おしまい》


今回は、「大橋ちよ」さんの曲から書いてみました!歌詞の中の一部【I need you baby 】を抜粋して、それをタイトルにした短編を書きました。
曲が完璧なのに、こんなへっぽこ短編でごめんなさい…😅
許して〜cofumiだからさ〜ちよさーん!!笑

この企画は0314まで!
皆さんもlet's try👍👍👍

#うたスト   #課題曲E
#ショートショート   #掌小説 #小説 #物語
#音楽

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cofumi(こふみ)詩*音楽
書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️