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本能 ーショートショートー ★曲からチャレンジ★
「あらー何かあったんですか?」
マンションの周囲は、黄色の立ち入り禁止のテープで包囲されていた。
『奥さん、さっき警察の人が話してたの聞いたんだけど、女の人が男の人を刺したらしいのよー怖いわねー』
「それって痴情のもつれ?とか?嫌だわー」
往々にして噂というのは、ちょっと聞いたんだけどで始まり、最後には全く違った話しになりがちだ。この後その噂話がどんな結果になったかは分からない。
⌘⌘⌘
木下奈帆は小学生の頃から美人と言われ続け、それが罪かのように言われ続けた結果、高校生になる頃には伊達眼鏡をして登校するようになっていた。
「あの子、本当にウザいよね」そんな言葉は奈帆にとっては挨拶程度しかない。
同級生は彼女にとってただの机や椅子と同じだった。
学校に来たらいる存在。
奈帆は大学を卒業した後、米倉涼子並みのスタイルと美貌、更に5ヶ国語が堪能ということで、サマー航空にキャビンアテンダントとして入社することになった。
職業柄もあって、彼女を放っておく男はいなかった。
「ウザい!ウザい!どいつもこいつも外見だけで好きとか愛してるとか。私の何を分かってそんな言葉を並べてるんだか!」と家に帰るとさっさと外見用の服を脱ぎ捨て裸族になるのだった。
そんな奈帆が初めて愛した男が篠田淳之介だった。サマー航空のパイロットだ。
篠田といる奈帆はパーフェクトに近い。そして奈帆を連れて歩く篠田は、みんなが羨望の眼差しで見ていることに優越感を感じていた。
何度か奈帆と身体を重ねてからやけに嫉妬深くなった気がしていた。
「ね、昨日電話したのに、出なかったでしょ?どうしたの?誰と会ってたの?」
電話が繋がらない、話し中、LINEしても既読になったまま返信がない、そんなことが1ヶ月ほど続いたある日、篠田から別れ話しをした。
「奈帆、俺たち。。。」
『別れないわよ。あなたは私のことを愛してる。そうでしょ?キミの身体から離れられないって、何度も愛してる離さないって言ったじゃない。私はあなたのために死ねるの。今ここで死ねと言われたら死ねるの。それが私の愛し方。
だって、あなたがいなくなったら、また一人ぼっち…そんなのもう、耐えられない』
そうい言いながらキッチンからナイフを持ってきた。
あまりの豹変さに腰を抜かした篠田はソファに座り込んだままただ口を金魚のようにパクパクしているだけだった。
『大丈夫よ。あなたを殺さない。私が死ぬの』そう言うと太ももにナイフを刺した。
「やめろやめろ、分かったからやめてくれ」と篠田は懇願したが奈帆はナイフを持った手を止めることはなかった。
『教えてくれ、どうしてそんな。。。』
奈帆の身体は、ワルツを踊るかのように、静かに崩れていった。
「これがワタシなの…」
【椎名林檎:本能】
これは、ピリカさんの企画なんだ。今回はショートショートにしてみた⤴️
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