桔梗の花で指先を染めて
「~湯揚げ~初めて物語」
それはまだ 会社勤めをしていた20代のころ。
休みの度に あちらこちらの花屋さんに足を運んでいました。
あれは、6月下旬だったでしょうか。蒸し暑い中、外苑前 青山の花屋さんの店頭で見かけた桔梗の花、涼しげな星形に惹かれて 手に取りました。
家に帰っていそいそと紙をほどくと、、なんと! 桔梗がしんなり、ぐったりと萎れているではありませんか。。道中暑すぎたのでしょうか。。
慌てて少し前に買った切り花図鑑の巻末頁を開き、切り花の水揚げ方法の中から、「湯揚げ」なるものをやってみることにしました。
茎の下の方10センチくらいを除いて新聞でくるみ、茎を折り、熱湯に茎数センチをつけます。30秒くらいしたら深いお水にジャポン!(注:桔梗の場合は茎を手でおりますが、たいていのものはハサミで切ります)
しばらくすると あら不思議!
ぐったりうなだれていた花首はしゃんとして、ぱりっとした涼しい星型のお顔になっているではありませんか♪
花屋になった今は 仕入れの度に お花によっては湯揚げをしているのですが、あの初めての湯揚げの思い出は ずっと 心にやき付いています。
「会いたいひとに会えるという、、桔梗の秘密」
そして桔梗と言えば、もうひとつ。「きつねの窓」というお話を知っていますか?
私は小学生のころ、国語の教科書で出会った覚えがあります。
桔梗の汁で指先を蒼く染め、両手の指で四角く窓を作ってのぞくと、会えないはずの人に会えるという物語。
小学3年生のときに、母を亡くした小さな私は、夢の中で、指を染め、窓を作っては母の姿を探す夢を何度もみました。
本物の桔梗の花をみたことがなかった私は、きっと桔梗の花というのは山の中にひっそりと咲いていて、なかなか出会える花ではないのだろうなと思っていました。
もちろん野山でも出会えますが、今は、花屋さんでもよく出会えます。切り花の出回りは 6-7月。
秋の七草のひとつでもあるのですが、中秋の名月の頃には、あまり出荷されていません。
(箱根湿性花園:万葉びとは 桔梗を朝顔と呼んでいたそうです
鉢植えの開花期は、6-7月と9月。 苗が出回るのは6月頃。
そうそう、今年は冬に、塊根から芽吹きだした桔梗の苗に出会えましたよ。
宿根草で 植えっぱなしで 毎年咲いてくれます。
桔梗の花に出会ったら、今は会えない会いたいひとの姿を思い浮かべてみてくださいね。