ココちゃんとトトとカカ #19 節分前の悲劇
《これはトトさんと、私カカさん。そしてココちゃん2歳の暮らしのお話》
「ただいまー」
困り顔のトトさんがキッチンから顔を出す。
「どうしたの?」
「なんかさ、保育園では元気だったんだけど、帰ってきてからずっとこれやねん」
トトさんの足にしがみついたココちゃんがコアラに見える。
どうやらずっとこの調子で離れなくて、夕食の準備どころではなかったらしい。
「具合悪いとか?」少し涙目のココちゃんの顔を覗き込むと
「お風呂入らない」と言って、トトさんのズボンを握りしめていた手を離し、
私にしがみついてきた。
「熱はなさそうだよ?どうしたの?」
「とりあえず、急いで夕食作るわ」と、トトさん。
ココちゃんを抱っこし、上着を脱ぐ。
「しんどい?」「うん」「しんどいの?」「ううん」
元気がないのは確かだけど、具合は悪くなさそうで、なんだかわからないけど
「大丈夫になるように、いたいのいたいの飛んでけ〜ってしようか?」と聞いてみた。
「飛んでかない」と、イヤイヤ期全盛期を思い出すネガティブ発言炸裂。
具合が悪いわけではないようだ。夕食はなにかな?とか、保育園でどんなことをして遊んだのか聞いてみた。
どの問いかけにも首を振るだけで答えない。いつもなら、誰と遊んだとか、給食全部食べた!なんて
自慢するのにな。
離れようとしないココちゃんを抱っこし、手を洗おうと洗面室に行こうとしたとたん
「いやだー!!」と大泣きし始めた。プチパニック。いや、大パニック!
「なになに?どうしたの?どこか痛いの?」
「お風呂はいやだー」「お風呂じゃないよ、カカさんが手を洗うだけよ」
逃げるように私から離れ、キッチンにいたトトさんの足にしがみついた。
「何?どーしたん?」
「わかんないよ、急に泣き出したんよ」
トトさんがココちゃんを抱っこして、背中をトントンすると、
少し落ち着きを取り戻した。「カカさんと待ってて。ご飯作るから」
ココちゃんが頷いて抱っこを交代することにした。
あ!そういえば、さっき手を洗えていなかったんだった!
急いで洗面台に行き、手を洗う。ココちゃんがあんな風にパニックになって泣くなんて
珍しくて少し心配になる。どこか病院とか調べておいた方がいいかな。
そんなことを考えながらタオルを手に取り顔を拭いた。
その時、
浴室のドアが少し開いていて、真っ赤なものがゆらゆらと揺れているのが見えた。
「ぎゃーーーーー!!!!」
振り返った目の前に壁があり、頭をぶつけ、
腰も抜けそうに、いや、抜けたと思う。その場で座り込んでしまった。
こんな時、広い洗面室だったら、ぶつからずに済んだかもしれない。
抜けた腰と頭をさすりながら、赤い物体の正体を確かめるため、恐る恐る浴室を覗いて見る。
あ・・・。
洗濯竿に引っ掛けられた赤鬼の衣装だった。浴室乾燥機の風があたり、手と足が小刻みに揺れ
気持ち悪さを増していた。
ココちゃん・・・。
見てはいけないものを見てしまったようで。
私の悲鳴とドッタンバッタンの大きな音に驚いたトトさんが「どーした!!」と駆けつけ、
その声に2度目のビックリを味わう私。浴室を指差す。
浴室のドアの隙間から中を見て、揺れる赤鬼の全身タイツに「ひっ!!」と小さく驚くトトさん。
その癖のある驚きかたに、ちょっと笑えて吹き出してしまった。
自分で干しておきながら、何、その驚き方 笑
手を洗いに来たココちゃんが浴室のドアに映った赤いものが気になり、ドアを開けて見ちゃった。んだね。
そんなこんなで、浴室から鬼がいなくなり元気を取り戻したココちゃん
遅くなっちゃったから、夕食は簡単に作れるカオマンガイ。だって。
「ものすごく寒くて体の芯まで冷えていたけど、この騒動で温まったわ」と話すと、
「帰って来た時、鼻が真っ赤でちょっと笑えたもんね。茶色の服だし、トナカイが『ココちゃん具合悪い?』(←トナカイの顔真似で私の真似をする悪いトト)とかいってるみたいでさ、くくく…。うひひひ…。」
ムッ。
「トトさんはトナカイというより顔が真っ赤なお猿さんみたいだよね。
笑い方が『うきききき』ってさ。(←猿顔でトトさんの笑い方を真似る悪いカカ)」
勝った。(と思いたい。)
来週は豆まき。心の鬼をやっつける日。ちょっと意地悪いっちゃった。
そういえば、赤鬼全身タイツが小さく感じたのは気のせいかな。
さてさて、どうなることやら。来週もお楽しみに。
美味しいカオマンガイの作り方はトトさん編で♪
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