ミチタ カコ。僕の知ってる一番の演劇

 1番ってことばを軽率に使うのはすきじゃないです。

 JPOPみたいに言うのはダサくて、もっと言葉を飾りたくて、そのとき僕は言葉を知らなくて、1番と思っても言いづらい。でも僕はこれだけは1番だって言いたくてすぐに言ってしまうものがあります。忍びないけれど、言わずにはいられません。

 僕の観た演劇の中で1番おもしろくて、かっこよくて、儚くて、強くて、切なくて、優しくて、悲しくて、愛おしい演劇はミチタ カコの演劇です。

 僕は演劇批評家でも、脚本家でも、俳優でもない上に、普段文章を書かないので、言葉が拙く伝わりづらいでしょうし、間違った風に捉えられたり、上から目線のように捉えられたりするかもしれないです。けれどそれは本意ではありません。僕は、彼女達を心からきっと誰よりも…尊敬しています。この記事を書いて、投稿歴もなくSNSアカウントで連携もしない僕の言葉が彼女たちに届くか、そもそもわかりませんが、それでも彼女たちへの敬愛を書かずにはいられませんでした。

 ミチタ カコは旗揚げ公演から、予想を大きく上回ってきた劇団でした。とても心に突き刺さるものがありました。『夏の続きは終わらない休み、雨の音は聞こえている。』というタイトルとフライヤーから、ただの演劇をやってる女の子たちがただ可愛げに儚げに目指してやる演劇ではないか、僕は怖いと言う印象で、それでも誘われたから行かなくてはと思い行きました。僕は演劇に対して、とても好き嫌いが激しく、ミュージカルでもないのに歌を歌い出されるとそれだけでひどく萎えてしまいますし、無理をしている男装のキャラクターとかも、正直すごく苦手です。演劇をやっている若者が、そもそも僕はあんまり得意ではなかったです。普段は大衆向けの演劇をやっているのに何かに感化されて抽象的でふわふわしたものをなぞるだけの演劇をやってみた女の子とかもあんまり得意ではなかったので、とても怖かったわけです。

 けれども、ミチタ カコはそうではありませんでした。強い女の子たちの塊で、強い美への執着、若さへの執着、彼女たちがまだ女の子であることの使い方を知っている劇団でした。一人ひとりの魅力は惜しみなく表現され、けれどこちらには微笑みかけてくれない少女らしさを備えていました。重い題材、ひょっとするとリアリティとの戦いの末負けてしまいそうな題材でしたが、そんなことはありませんでした。むしろ狂気が気持ちの良い狂気になり得たのは、彼女たちがまぎれもない少女だったからだろうと思います。不安定さが恥ずかしくない、彼女たちの圧倒的な魅力となっている。僕はその魅せ方を知っている彼女たちを羨ましく思いました。

 いくつか彼女たちの作品を見てきた上で、彼女たちの作品について、俳優の種類の重要性を感じます。彼女たちの作品にマッチする俳優は、経験のある俳優、子役として活躍してきた俳優、大衆向けの演劇や日々小劇場で繰り返されているわざとらしい演劇の劇団員ではないように思いました。

 ただただ生きる上で、なにか大事な信念を持った女の子、がふさわしいように思います。体が利くことは彼女たちの演劇において大事だと思うので、人前に出る時の姿勢をある程度知っている、踊りを踊っていた、とか、そのくらいの演者としての経験は必要なのかもしれません。ですがそれ以上の演劇の経験や、演劇に対する固定概念、プライドとかを持っていると、それは(僕の知っている)ミチタ カコの世界においては妨げになってしまうように思いました。不安定さが彼女たちの演劇の演出に潜在的な効果を生み出すと考えるからです。リアルでないセリフやわざとらしく飾ったセリフも、彼女たちの演出と若い声と不安定さによって、ナチュラルなものへと作り替えられてこちらに届くように思います。

 僕は、好きな劇団、演劇を聞かれるとそれまで人生でありきたりなことしか言えないタチでした。対して好きでもないけど大衆向けでなくて、見たときにこれは嫌いではないかもしれない。と思った劇団を挙げていましたが、僕はミチタ カコに出会って初めて好きだと言える劇団ができました。感謝しています。

 今、彼女たちが今回のコロナウイルスで影響を受けていることを知り、しようがないことだと分かっていながらとても悲しい気持ちになりました。僕の知った頃より、ずいぶんいろんなことをやってきた、彼女たちの次の心の表明がこんな形で中止になるのは、部外者ながらとても悔しく思います。僕が総理大臣だったら、と思うぐらい悲しいです。これは冗談ではありません…僕にその力がなくて心から申し訳ないと思う。彼女たちになにも与えることもできないわけですから…。ごめんなさい。

 演劇をどうか、死なせないために、僕はまだ彼女たちに頑張ってほしいと思います。ミチタ カコには力があります。進む道は険しいでしょうが、僕は彼女たちが1番だと思っています。正解だと思っています。強い言葉を使うと嘘みたいでダサいと思いながら、僕はこの言葉しか持っていません。彼女たちは、きっと1番合っていて、1番良い演劇をやっています。

 彼女たちの勇姿を見届けるときに、僕は彼女たちに何かできれば。と思います。

一生、僕はあなたたちのことを忘れないと思います。一生、僕はあなたたちの人生を心に留めていると思います。僕の人生はミチタ カコのおかげで数段特別なものに、悲しいものに、なりました。心から感謝しています。ありがとう。

 僕の好きな演劇の話でした。自分勝手に沢山文字を連ねてしまったこと、拙い文章で不快な思いをさせてしまうかもしれないこと、お詫び申し上げます。



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