【感想】化け猫あんずちゃん
映画見た時の感想です
●化け猫あんずちゃん
・全然子供向け映画ではなかった。と、見せかけて残念ながら子供向け映画かもしれないです。
・アニメーションの動きがぬるぬるで凄いです。人物が生きている感じが描けてました。また俳優が声を当てているからか、アニメ感は無かったです。加えて、キャラクターもリアルで、全体的にリアリティが強いです。
・お金を借りる父親の態度、視線、喋り方、無神経さのリアリティ。
またその娘は、上っ面は態度良く、味方を作って同情を誘ってお金を貰って狡賢く生きる力が身に付いているところもリアリティ。
娘にとって父親はクズではあるけれど、そこまで道徳的に俯瞰して嫌っているわけでもなく、死ね!とキレながらも堂々と同類として共存するタイプですかね。
娘だから当然、のその人格設計。凄いです。
・化け猫の言動は良い加減なオッサンとしてのリアリティが強く、どれも面白くてクスッときます。
小便する時の動作は表情が1番好きです。
原チャを警察に止められた時の舐めた言動(慣れた言動)もめちゃくちゃ面白かったです。
ただ、原チャは今までどうしてたの?という疑問が浮かんでしまうので、バイト代貯めて原チャ買って間も無くして、二日三日目で嬉しくて調子に乗ってスピード出して(警察も化け猫の見慣れない光景に無免を確信して)、捕まった、みたいな背景だと納得いくかなと思った。そこらへんの説明が欲しいところ。
自転車パクられた時の言動が面白いって前情報を聞いてたけど、あれは普通でした。(もしかしてその後に自室でブチ切れでた時の描写の話ですかね)
・状況や心情の説明は少なく、けれど読み取りやすいよう散りばめられていて、考えながら見ればある程度わかるようになっていた気がします。キャラクターが不自然な説明をしないのがすごいです。
(冒頭から夏休み期間であるとは明言されなかったけど、主人公同様に学校に行ってない村の少年、またグレ初めの決意(悪ガキが夏休みにグレようとしている)、中盤の東京の彼氏から夏期講習の発言、などから時期の推察。また、外で待ちながら父親が電話に出なくてイライラしている様から時期の推察、など)
・リアリティが高い作風ですけれど、化け猫がその辺を歩いていても(田舎だけでなく、東京でも驚かれずに景色に溶け込んでいる)誰も騒がない世界観であって、そこがちぐはぐで面白いところではあります。
これのおかげで、猫が無免で捕まったり、地獄旅行に行ったり、鬼が町中を破壊しても、この世界ではこれはおよそ普段通りであると解釈できて、違和感を抱きにくくなっています。(違和感を抱くだけ、無駄だと感じる。いちいち突っ込んでも仕方が無い)
だからこの作品は、時折不思議な事が起こる世界(それが受け入れられる世界)で、不思議な事に巻き込まれた少女の(世界ではそれが普通の)物語なのだと思います。
・リアリティが高いこの作品は、一体どんなメッセージ性を持って、どんな結末に帰結するのか、少女は一体何を学んで何が変わるのか、など期待を含んだ視線で構えつつ、しかし後半。
描きたかったものはおよそ理解できるけれども尺が足りなかったのかあまりにも薄っぺらいお粗末な後半に愕然。(勝手に期待してしまうところは、斜に構えたオタクの悪い癖かと思います)
前半の散々の人間のリアリティを出しておきながら、地獄で会った母は、「おー、久しぶりー」くらいの距離感で、その後は娘に手を引かれて何も言わずにされるがままについていくだけ、原チャにも乗るだけ、母親としていけない事をしている娘には何も言わないのか、ただついてくるだけなのかという、母としての存在に対する大きな疑問がありました。これは母に会いに行く作品だったはず、なのにその母は一体、なに?
一応最後には、「お母さんやっぱり帰るわ」と娘に言うけど、ねぇお母さん、その程度の発言のみですか?
娘も最後に、「また会えるよね?」みたいな、一夏の思い出、出会いと別れのテンプレ作品ありがちな発言をするけど、それって死んだ母にもう一度会いたい作品に出てくる発言としてどうなんですか?基本的に会う会わないの話ではないですよ。
薄過ぎて、映像と雰囲気のみで、何も伝わらずでした。映画の表紙にそれっぽくメインテーマみたいに書かれても誤魔化されません。
以下、他の違和感や不満。
1人で東京へ向かおうとした主人公は全然よくわからない駅で降りました。別に遠くへ来たわけでもなく、カエルが穴掘って辿り着けるレベルの隣町。どうしてそこで降りて山を目指してしまったのでしょうか。電車はその後も動いていたので終電という訳でもなさそうです。
小学生にそれを求めてはいけないのかもしれないとも思いましたけど、でも次の場面では化け猫引き連れて普通に東京を巡っていたので、地理が分からない女の子ではないはずです。しっかりしてると思うからこそ、やはりよくわかりません。
貧乏神が登場した場面は心が躍りました。日常に存在する神と関わる事が出来る化け猫から、更に特別感が得られて、他にもいろんな神と関わって欲しいという思いが出てきましたけれど、他に代表的なのは鬼と閻魔くらいでした。
よくわからない生物とは関わりがありましたけれど、アレは何なのか神なのか妖怪なのか明言されずよくわからないまま終わりました。確かに一匹の化け猫(それもオッサン)が八百万の神の全てとコンタクトを取れるはずもありませんけれど、モチーフがあるならそのネームバリューを明かして欲しかったでふ。(わかる人にはわかったのかもしれないけど。私にはわかりませんでした)
閻魔大王達から助けに来た地元の神様達(妖怪達?)、速攻でボコボコにされました。それはオチ?ギャグのみ?何のための展開?宝くじの当選は何を意味する?化け猫のガラケーもボコボコになってたけど?わかりません。
娘が、父よりも化け猫(寺?環境?友達?)を選んだ理由は何?「俺がずっと一緒に居る」って薄っぺらい言葉を聞いたから?(化け猫は死なないので、一応、ずっとに対する説得力はある)
最後に。
地獄から逃げ出した母親を追跡する閻魔大王さまが、連れ戻すべく霊柩車で追いかける展開。
そう、霊柩車で。
死んでいる事を突き付ける様に、
死が追いかける様に、
死からは逃れられない様に、
死が迎えに行くかの様に。
これはね、シビレました。
かなりキマってると思います。
天才かと思いました。
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