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【ネタバレ有】読書感想文「透明なゆりかご」前編
あらすじ
とある産婦人科でバイトをすることになった著者の沖田さんの経験をもとにした、ほぼノンフィクションのコミックエッセイ。そこでは、望まれない妊娠による人工中絶は日常茶飯事。沖田さんは、かつて命だったものをフィルムケースのようなものに入れ、業者に引き渡し火葬してもらうのが仕事だった。逆に、祝福された命を見ることもあったし、生まれた子どもを巡って夫婦の形が崩れていくこともあった。沖田さんはそんな経験を通して、自分も子どもを産み、育てることになるかもしれないことに不安を感じる…。
この「透明なゆりかご」から「育児放棄」という一話だけネタバレ有で紹介させていただく。この「透明なゆりかご」という作品はそうでないと本質的なところが伝わらない気がするからだ。
「育児放棄」は、松井えみりちゃんという小学生らしき少女が赤ちゃんを産婦人科に連れてくるところから始まる。赤ちゃんは男の子、食事も食べず、泣きもしない。酷い脱水にあることからすぐに沖田さんの勤めていた産婦人科の先生によって処置が開始される。
一方えみりちゃんの話を聞くと、「お母さんが一か月帰ってこない」「赤ちゃんは急に一か月前にお母さんから貰った、名前はえみりの好きに呼んでいいと言われたからちび太と呼んでる」「学校も赤ちゃんがいるから行けない」「ちび太のミルクがなくなってしまったからジュースやもんじゃ焼きを食べさせてみたが食べない」…どう見ても異常な状態だった。
看護師から警察に連絡、えみりちゃんは帰りたい、お母さんに怒られる、というが、ちび太が回復していると聞くと、涙ぐむ。沖田さんも「泣いたら負けなのに」というえみりちゃんに、泣いてもバレない方法を教える。えみりちゃんは保護施設へ。ちび太くんはそのまま入院…だが、ちび太くんは本当にえみりちゃんの弟だろうか…?
後半へ続く
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