続・感想戯曲『ONE NATION UNDER THE DEMPA』

前回の時点ではタイミングの都合上EPの5曲中2曲だけ使われていたので、残りの曲を加えた感想戯曲の続きです。
EP発売から一週間で書きました。ぜってえ加筆訂正したものをどこかで出す……。
演劇公演そのもののみならず、EPの感想も組み込んだ戯曲になっています。
よろしくお願いいたします。

登場人物

三鷹蜜柑……オレンジ色の花を持つ少女。
美空快晴……スカイブルーの花を持つ少女。
桃瀬亞里亞……パウダーピンクの花を持つ少女。
紺野瑠璃……ネイビーブルーの花を持つ少女。
王子……たまご色の花を持つ教師。女。

空野アオゾラ……調停者。
相沢リサ……調停者。(明らかに人知を超越しているが『戯曲・でんぱぁかしっくれこーど』との関連は不明)

古川……アース919の住人。
古川議長……アース10893のでんぱ組.incの議長(センター)。調停者。
天沢リト……アース1214の住人。秋葉原の自警団に所属していた。
藤咲アヤネ……アース19999の住人。
小鳩リア……アース1185の住人。
鹿目リン……アース1863の住人。

その他、様々な次元の仲間たち。

   突然、美空、桃瀬、王子、紺野による『接吻~らぶらぶちゅ~』のパフォーマンス。

紺野  うおお、いいんじゃない? なんか、いい感じなんじゃない?
美空  いや、まだチームの一体感が足りない……。
王子  ライブ前にさ、何か円陣とか組む?
桃瀬  お、円陣の時の掛け声、こないだ三鷹さんと話して決めたの。
美空  え~私抜きかい。
桃瀬  「青春は、一発」
美空  ……大丈夫? いやらしい意味じゃないよね。
桃瀬  萌えは常にちょっとエッチな要素を含んでいるのよ。
美空  ちょっとどころじゃないよね。大人のPCゲームだよね。
王子  いいじゃない。皆いい大人だもの。
桃瀬  コンプラだらけの令和の世だけれど、いいじゃない。ほのめかすくらいなら。あと、選挙に行って、トランス差別はせず、TPOをわきまえて、
美空  わーったわーった。その辺の話はゆっくりやろう。
桃瀬  とても大切なことよ。他者を思いやる気持ちがあって初めて人は人を好きになれるの。

   そこに三鷹が駆け込んでくる。

美空  ちょっとまた遅刻?
三鷹  ごめん~。
桃瀬  三鷹さん。青春は、
三鷹  (ビシッと指を一本立てて)一発!
美空  あのね、世の中には、人として守らなきゃならないものが三つあるの。約束と、愛と、

   突如、地響き。
   美空も、三つ目を言う前に思わず黙ってしまう。

紺野  私じゃないよ。
桃瀬  誰も何も言ってないし。

   また、地響き。

王子  今日はもう早く帰りなさい。(悔しそうな三鷹にアテレコするように)「今来たばっかり~」でもね。

   舞台の奥に、合唱隊(コロス)のローブを纏った女が一人立っている。
   相沢リサだ。

王子  あれ、あなたは。
紺野  来てたんですか。
相沢  ……。
紺野  相沢さん……ですよね。
相沢  あなたたちに判決を言い渡しに来た。
紺野  はい?
相沢  消滅。

   舞台が一瞬で闇に包まれる。

   舞台が明るくなると、三鷹一人になっている。
   そこに古川が現れる。

三鷹  あれ、もしかして、
古川  ……古川ミリンです。
三鷹  ですよね! お久しぶりです!
古川  おお? 子供を相手にした覚えないけどな……。
三鷹  ひどい。
古川  え、だって、え、初対面ですよね。
三鷹  いやいや、だとしても! でんぱ組のセンター! 古川ミリンさんですよね。
古川  そのでんぱ組……って何ですか。
三鷹  ……え。
古川  私、そこのセンターになれるって聞いてきたんですけど。

   そこにどかどかと駆け付けるメンバーたち。
   もうすでに打ち解けている。
   それに身体を固める古川。

鹿目  だから何かのはずみに歌っちゃうの。
藤咲  ミュージカルの次元ってのは悲惨だね~。
鹿目  でしょ? 悲惨って、フランス語で言うと、「ミゼラブレ」(と歌ったと思ったら、『レ・ミゼラブル』より『オン・マイ・オウン』を歌いだす)
高咲  あれ、紺野さん?
天沢  いや、通りすがりの自警団だ。覚えとけ。(とDXディケイドライバーを撫でる)
三鷹  それ、お兄ちゃんも持ってます。
天沢  何! 同世代!
三鷹  でも、腰のところがもっと良かったような……。
天沢  するとそれはCSM、すなわちコンプリートセレクションモディフィケーション!! 羨ましい!!
小鳩  どうでもいいけど、カードをパチパチするの、やめてよね。
天沢  原作再現!(ディケイドのカードをパチンとやる)
小鳩  だからやめなさいって!
相沢  初対面ながら素晴らしいアンサンブル……。
小鳩  私、ここでアイドルやる気無いんですけど。初対面だから。
相沢  初対面だろうとやってもらうわ。あなたたちは生き残りなんだから。
一同  え?(など、思い思いのリアクション)
相沢  並行世界をめぐり、揃えた、でんぱ組として残すべき人員。
藤咲  全然わかんない。リサちゃん、もっと優しく説明してよ。
相沢  あなたたちは選ばれたの。最後のでんぱ組.incに。
一同  ……。
相沢  萌えとエモは、あまりにも大雑把な意味を持つ。だから、無秩序に、無限に広がり続けた結果宇宙を包んでマルチバースのバランスを崩壊させている。その根本であるでんぱ組.incを一つに統一させることで、調和のとれた宇宙に変えるの。
天沢  じゃ、なんですか、我々はつまるところ……。
相沢  マルチバース選抜メンバーってわけね。
古川  選抜……(うっとりと噛み締めて)選抜。
鹿目  ちなみに他の皆は……。
相沢  (さらりと)消えた。
一同  えっ……。
相沢  統一させたって言ったでしょ。
三鷹  そんなのどうかしてる! なんなんですか、偉い人たちはお酒でも飲みながら会議してるんですか!
相沢  (即座に)そうよ!
三鷹  ええ……。
相沢  映画で見たの。ある程度アルコールが入っている方が、仕事の効率が上がるんじゃないかってね。
三鷹  その映画、最後、人死にが出ますよね。
相沢  (もんのすごくかわいい笑顔で)まあね。

   合唱隊のローブを纏った空野が現れる。
   太ももか二の腕に次元移動装置が装着されている。

空野  喜んだ方がいいんじゃない? あなたは選ばれたのだから。
三鷹  快晴?
空野  うん。まあ、私は別の次元から来たんだけど。名前も違うし。
三鷹  え、そうなんだ。
空野  空野アオゾラ。出身は
小鳩  ていうか大丈夫?
空野  何が?
小鳩  痛そう……(と次元移動装置が装着されている箇所を指す。なかなか締め付けられている)
空野  それは
相沢  (割り込んで)私の趣味です。
小鳩  (困惑気味に)いい趣味してますね。
相沢  (空野に)ほら、好評。
空野  困ってますよ。
相沢  じゃ、後は頼んだよ。これから、別の次元の私が出てくるから。二人並んだら混乱しちゃうでしょ?
三鷹  しませんが……。
相沢  (なんか恥ずかしそうに)しなさい!(駆け出ていく)
三鷹  なんだか事情を感じる……。
空野  時を越えて、変化した未来を見てきた。来たるべき可能性を。ざっと1400万604個。私たちは一番安定した方法ででんぱ組.incを存続させる方法を思いついたの。
三鷹  それが、これですか。
空野  こうするしかなかったの……。
三鷹  ひょっとして、あなたも何か……。
空野  (顔を背けてうなずく)
天沢  だからって、こんな……無茶苦茶じゃん。
空野  私だってそう思う。でも……存在全部がかかってるんだ。
藤咲  うむ……マクロな視点で考えたらそうなのかも……。
天沢  えあ?
藤咲  全部消えるか、一つ残してあと全部消えるかでしょ? 難しいけど、こういう決断をするのもわからなくはないっしょ。
天沢  それは選ばれたから言えるセリフでしょ。
藤咲  まあ、そうなんだけどさ。
鹿目  私たちが最後……(ぽつりと)それは厭だな……。
小鳩  ま、最後ならさ。頑張ろうよ。それが今、うちらがすべきことだよ。

   一同「……」と。

小鳩  過ぎたことはもうしょうがないよ。そうやっていくしかないじゃんね? だからさ、
天沢  よく切り替えられますね。
小鳩  じわじわ忘れるより、切り替えちゃった方がすっきりするよ。

   一同、古川の方を見る。

古川  (集まりを離れて独白)言えない。アイドルになれるんなら、何も気にならないなんて、絶対言えない。
鹿目  皆悩んでるんなら、まあ、そうか……。
空野  運命を受け入れて。あなたたちが、世界を、宇宙を救うの。
一同  ……。

   一同、切なそうな雰囲気を漂わせながら『THE LAST DEMPA STARS』のパフォーマンス。


小鳩  (ぼそっと)切り替えなんて、できるわけないじゃん。
三鷹  快晴……私、頑張るよ。萌えキュンソングを世界に、宇宙にお届けするために……。

   遠い目をして佇む一同。
   何かのインストゥルメンタルが流れ、カーテンコールの流れ。

三鷹  (厳かに礼をして)えー……続・感想戯曲『ONE NATI

   突如雷鳴!
   スクリーンに神様が映る。
   それは明らかにでんぱ組.incのプロデューサーなのだが、誰もそれには言及しない。
   神様は『モンティパイソン&ホーリーグレイル』の神様っぽい感じか、もしくは二、三枚の写真をセリフの内容と合わせて出すようにする。この場合、写真の種類が多すぎてはならない。

神様  待て待て待て待て。
三鷹  ……神様ですか。
神様  いかにも。神様じゃ。
三鷹  ええ~……空気読んでくださいよ。
神様  おい! 神様じゃぞ。
三鷹  神様ならなんとかしてくださいよ~。
神様  人のやることに介入はできん。神は力を貸すだけ。決めるのは、生きている人々じゃ。
三鷹  役立たず。
神様  うおっ、直球。ディスイズ直球。

   間。

神様  へいへ~い。会話しようぞ~。
三鷹  無茶でしょ~。今のは無茶でしょうよ。
神様  ていうかカーテンコールで有耶無耶にするのやめな。できてないから。そもそも。有耶無耶に。できてないから。
小鳩  有耶無耶にでもしないと、ずっとこのままでしょ。
神様  急に割り込んできたな。
三鷹  第一、私たちの意志を越えた、なんでしたっけ。
相沢  マルチバース。
三鷹  マルチバースのアレがアレしてアレしてるんだったら、どうしようもできないですよ。
神様  だとしたら諦めんのが早すぎです。第一さ、まだ快晴ちゃんとは話してないんでしょ? お別れの挨拶も無しなわけでしょ?
三鷹  でも、挨拶なんてしたら余計、
神様  はいはい。そういう感じね。でもさ、そしたら一生後悔したまんまだよ。
三鷹  だからその後悔を背負ったまま、
神様  甘い! 背負ったまんま生きていけるほど人生は短くない!

   おもむろに退場していくでんぱ組.incのメンバー。
   三鷹だけが取り残される。

神様  そしておもむろに退場していく仲間たち。皆適当すぎる!
三鷹  ……。
神様  だが、希望はあるだろう。

   おもむろに退場する三鷹。

神様  そして話している途中におもむろに退場する三鷹蜜柑。

   照明がじんわりと落ちていく。

神様  そしておもむろに、舞台は暗くなり、次の場面になる。

   唐突に神様が消え、声だけが残る。

神様  わしを一人にするんじゃない!!

   そこはどこでもない。
   『でんぱぁかしっくれこーど』が流れる中、合唱隊のローブを纏ったでんぱ組メンバーが現れる。


   その実態は、マルチバースを管理するでんぱ組.incである。
   宇宙の歴史を称えるかのような『古代アキバ伝説』のパフォーマンス。


藤咲  安定したね~、マルチバース。よかったよかった。これで世界は救われたわけだ。(空野に)おつかれちゃん!
空野  (ぼんやりとした感じで)ありがとうございます。
小鳩  何何? もっと喜んでいいんじゃない? ねえ?
藤咲  そうそう。ひゃあ~安心したらピザ食べたくなってきたんだけど!
高咲  やった~! 厭になるまで食べましょ!
藤咲  よ~し、皆好きなだけ食べていいよ!
天沢  出た、藤咲さんの「好きなだけ」。
小鳩  決して「奢るよ」って言わないところがミソね。
藤咲  ようやく打ち上げられるよ。よかったね~。
鹿目  ……。
藤咲  よかったね~。
鹿目  この方法が正しいと、私は今も思っていません。
藤咲  ……。
鹿目  まったくここはひどいインターネッツですね。皆さんは人の痛みがわからないのでしょうか。調停者だからといって無責任な発言が多すぎますよ。
空野  何で今更言うの。
鹿目  浮かれているからです。宇宙を救うためにこの方法しかなかったことは認めます。でも、それは多くの犠牲の上に成り立った成功でしょう。決して浮かれていいわけではないはずです。
空野  でも!
相沢  鹿目さん。気持ちはわかるけれど、誰だって悩んでいるはずよ。だから、皆無理して気分をあげているの。
空野  私だって納得してない。でも、あのプランに賭けるには、
議長  あのプラン?
空野  起きてたんですか。
議長  まだ、プランがあったのか。
空野  ……はい。ちょっと困難かと思って、廃棄したのですが……。
議長  我々は安住を求めてマルチバースをさまよった。でも、生きる場所なんて、どこにもなかった。だからこうやって集まった。そして……それがまた新たな宇宙を作った。
一同  ……。
議長  今もまだ、生きる場所なんてどこにもないのかもしれない。ならば、旅を続けよう。安住ではない生き方をしよう。
空野  ……(無言で頭を下げる)。
小鳩  成功する確率は?
天沢  見てきた未来が1400万604だから、一つ足して……。
空野  1400万605分の1……。
相沢  ……(議長にアイコンタクトし)いよいよ正念場ね。

   調停者たち、ローブを脱ぎ捨てる。
   黒子がそれを拾い集める。
   調停者たちによる『でんぱでぱーちゃー』のパフォーマンス。

   パフォーマンスが終わると、空野を残し退場する調停者たち。


空野  見ててください。私たちの、正念場。

   空野一人で『プロタゴニスト』のパフォーマンスが始まる。
   すると、遠くの次元の三鷹たちの歌声が重なる。




   舞台上には現時点で次元最後のでんぱ組メンバーが集結する。


空野  萌えは、エモは……あまりにも多くのものを取り込む。それはある意味暴力的だと言えるでしょう。でも宇宙の危機だ……私はその危うさを利用する。
三鷹  それで、皆帰ってくるんですね。
天沢  じゃ、じゃあやります。わしも……一人は厭だ。
藤咲  よっしゃあ! その方向で話を進めようよ。どうやるのか教えてください! おあっす!(お願いします、と言っている)
空野  それは……でんぱのパワーによる、銀河統一。

   間。

小鳩  何それ。
空野  でんぱのパワーによる、銀河統一。

   間。

小鳩  だから何それ。
空野  でんぱのパワーによる、
小鳩  いや、そこはいいって。繰り返さなくても。
天沢  なんだろう。聞いたことのある単語だけの文章なのに、全然理解できませんね。

   スクリーンに調停者の相沢が浮かび上がる。

相沢  ここからは細かい話になるので、私が。
空野  ありがとうございます。
相沢  私たちでんぱぁかしっくソサエティは、この宇宙を個々の世界の連なりによるものであると解釈していました。だからぶつかり合えば崩壊する、と。でも、すべての次元は互いに影響を与えあい、広がり、宇宙を作る。だから空野さんの提案は、ライブを通してそれらに過剰なエネルギーを与えて、調和を取り、再生させる、というもの。
小鳩  何それ。
相沢  ……足りない部分は補い合って、助け合いの精神で頑張ろうってことよ。
小鳩  あ~。
藤咲  そうと決まったらライブだライブ! 燃えてきた!
空野  ライブの舞台は、この次元じゃない。
一同  ……?
空野  宇宙空間。
小鳩  何それ。
相沢  ここから宇宙空間に抜け出して、マルチバース全域に向けたライブを行うの。宇宙に暮らす人々の心の中の萌え、そしてエモが反応して共鳴し合えば、宇宙全体を救う力になる。私たちは、そんなことできるはずないって思ってた。だから妥協案として、必要最低限が生き延びる方法を選択した。でも……別の方法があるって思えたの。何かを見限るんじゃなくて、全部を受け入れる。それがそもそもの萌えの精神だったからね。
藤咲  (古川に)わかった?
古川  あんまりわかってない。けど、あれでしょ? ほら、皆で頑張ればなんとかなるよ、っていうことでしょ?
相沢  ……それでいい。
古川  諦められた!!
相沢  受け入れたって言って頂戴。じゃあ、よろしくね。

   スクリーンから相沢の姿が消える。

空野  どうする?
藤咲  (食い気味に)やるやる! もちろんやるよ!
小鳩  求められてるレベル高すぎだけどね。
天沢  そういうとき、成長がある。
空野  会場までは一気にエレベーターで上がる。そこから通信衛星に移動して……ま、この辺はいいか。
一同  その辺はいい。
空野  それじゃ、出発だ。

   まず、エレベーターが上昇する音がする。
   そして照明がつくと、エレベーター内部。横並びの一同。

相沢  宇宙がライブステージなんてね。
藤咲  笑える?
相沢  いいや。最初っから言ってきたでしょ。私たちは宇宙を救うために活動してるって。
藤咲  (思うところはあるが)確かに。
空野  まもなく最上階。

   エレベーターが停止する。
   一気に無重力状態。

空野  (舞台のどこかを指し)あのスイッチを押して! ずーっとふわふわしちゃうから!

   藤咲の独壇場。
   なんか美しい動きで無重力を表現しつつ、スイッチを押す。
   一気に地に足が付く一同。

藤咲  決まった。
天沢  おお……宇宙キターーッッ!!

   円陣を組む一同。

天沢  掛け声、何ですか?
小鳩  「俺たちは強い」!
藤咲  どあほう。
三鷹  「青春は、一発」

   「え、なんか品が無い」などざわつく一同。

天沢  リーダー。
相沢  (無言で手を伸ばす)
一同  (合わせて手を伸ばす)
相沢  あああああッッッ
一同  よっしゃいくぞォォーーーッッ!!
   
   選手宣誓に近い勢いの『ONE NATION UNDER THE DEMPA』のパフォーマンス。



   そのまま『我ら令和のかえるちゃん!』のパフォーマンス。

鹿目  なんか、全然足りない!
空野  宇宙は無限に広がり続ける! このままじゃ……!?
小鳩  なら、私たちがもっと広がる。先回りして宇宙全部を包む!
天沢  これが青春銀河!
藤咲  そしてこれが限りある命の力だ!
古川  青春かぁ……(とメンバーを見て)まあ、いいけど。
相沢  (客席になのか、メンバーになのかわからないくらいの勢いで)まだまだ盛り上がっていけますかァーーッ!?
三鷹  うおおおお!! 青春はァーーッッ!!
一同  いっぱああああつ!!

   『イッき♡いっぱつ』のパフォーマンス。

藤咲  宇宙全体! もっともっと! でんぱっていこーぜ!!

   『でんぱっていこーぜ!!』のパフォーマンス。

鹿目  ……なんとかなったんじゃない?
空野  崩壊を防ぐことはできた。でも、これはあくまで応急処置に過ぎない。あとは……
小鳩  わかってるよぅ。各自の次元、各自のやり方で、萌えキュンソングをお届けしろってことでしょ?
空野  ま、そういうことね。
藤咲  じゃあ、帰りますか。皆の世界に。(古川に)楽しかった?
古川  え、え? ……(目をそらして)あ~……楽しかったんじゃないすか。
空野  ……銀河の危機は回避できた。感謝する。……ありがとう。

   一同、頷いて各々の世界に変える。
   暗闇の中、一人取り残される三鷹。
   手にはマイクを握ったまま。
 
三鷹  皆帰った……最後に残ったのは、このマイクだけか……私の次元は? ……どう帰ればいいんだろ。でも……マイクだけでも、ここから、宇宙に届けることができるんだ。私が、私の歌声が、目印になれば……私の世界を引き寄せる目印になれば!!

   と、歌おうとするが、マイクが空中に固定されて動かない。
   三鷹、それにハッとなるが声が出ない。
   「動け! 動け!!」と声にならない叫びを発しながら(パントマイムなので)、マイクを持ち上げようとする。
   持ち上がった! となった瞬間、舞台上は光に包まれ、美空たちが揃っている。
そのまま『千秋万歳! 電波一座』のパフォーマンス。

三鷹  うおお……おお……おお!?
美空  いやはや大変だったよ~。あ、そだ(と箱を持ってきて)はい、これお土産。ブラックホール饅頭。
三鷹  ……あのさ。
美空  うん?
三鷹  何なの? 三つ目。
美空  何の話?
三鷹  人として守らなきゃいけないもの! 約束と、愛と、何?!
美空  ああ~それはね、(ブラックホール饅頭を一つ差し出し)賞味期限。
三鷹  ……。
美空  ……。
三鷹  何それ~……。
美空  アニメの真似でした。ささ、皆で食べよう。

   一同を夕日が照らす。

美空  おお……河原に、夕日。青春って感じ。
桃瀬  驚き。美空さんて、こういうの見て感動できるんだ。
美空  失礼な。自然に心が洗われることだってありますよ。
桃瀬  ふーーん。
三鷹  私、そう簡単に忘れないと思う。この気持ち。
桃瀬  三鷹さんも夕日に感動できるんだ。
三鷹  いや、いつもは「ふーん」って感じだけどさ……今日は特別。
桃瀬  ふーーん。
紺野  ……言うか迷ったんだけどさ。桃瀬さんってやけにはっきり「ふーーん」って言うんだね。
美空  それ私も思った。興味無いフリしてる感じがして、かわいい~。
王子  「ふーーん」って! 『風雲! たけし城』かよ! って(一人爆笑しているが、皆反応しないため)あれ~?
桃瀬  (悔しくって)もう! 先生は饅頭でも食べててくださいよ!
王子  お茶が無いとダメなの!!
桃瀬  川の水でも飲んで、ほら!(王子の背を押して)
王子  (仁王立ちのまま、微動だにしない)
相沢  (遠くで眺めながら)青春だね~。
古川  青春かぁ……。
青騎士 (新書を片手に)そもそも秋葉原ディアステージは文化祭ビジネスというものを打ち出し、有名になりました。また、アイドルに傾倒するというのは一種の……
古川  いいよ、(自分を指し)当事者!
青騎士 (笑顔で)そうですよね。もう15年ですものね。
古川  うん。……なんかすごくない?
相沢  (急にどうした、と思いつつ)うん、すごいよ。
古川  過ごした時間の長さを誇れるって、すごいよ。
相沢  ね。……将来的にはね、かわいいおばあちゃんになるの。
青騎士 女王蜂の歌詞の引用ですね。
相沢  まあね。
桃瀬  おりゃああああ!!(まだ押していた)
王子  (未だ微動だにしない)
桃瀬  皆手伝って! 私もう、我慢できない!

   紺野、美空、三鷹、面白くなってきて王子を押すが、微動だにしない。
   手が滑って桃瀬が川に落ちそうになるのを、王子が手を掴んで助ける。
   三鷹、夕日を見つめたまま、何かを決意したようにマイクを握りしめる。
   そのまま『ORANGE RIUM』のパフォーマンス。


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