わたし のカケラ
子どもが生まれる前は わたし は わたし だけだったなとふと思った
毎日毎日が
まるで千切れ雲のように ほわほわと ぼんやりと過ぎている
それはまるで わたし というものが毎日ちょっとずつ千切れてしまっていて その小さなカケラが もう元には戻せないくらい遠くへ遠くへと吹き飛んでしまっていっているみたいで
毎日ちょっとずつ 自分が自分からどんどん遠ざかっていく
本当はとっても悲しくて 淋しくて 取り戻せない記憶みたいなものを
もうこのまま永遠に自分の中から失っていくんだなという思いが なんとなく無気力になっていく感覚で、指先から 足の力 そして声を発する力さえも奪っていく気がしている
子どもが生まれると わたし は 母になった
そもそも子どもが生まれる前に わたし は わたし から 妻になっていた
そしてそれから わたし はより社会的な立場を持ち、そしてその社会的な立場は公的で 責任という鎖でその立場に隷属させられたような契約を結ぶことになった
人間って 不思議だなって思うことがあって
人が役割になるんじゃなくて、役割が人を作るんじゃないかなってところ
わたし は つまり もう 生まれてきたときの あの頃の わたし ではなくて
より重い責任の役割の わたし になっている気がしてならない
責任は重いほどに 四六時中 のしかかってくるのではないかとも思う
責任が伴わない仕事は ないとも言えるのだけど
役割って 選べるものなんじゃないかなって思う
いや むしろ 選びたい
役割を手放したら わたし はどんな わたし になるんだろう
どんな わたし になれるんだろう
そして どんな わたし になろう
遠くへ行ってしまった わたし のカケラを もう一度取り戻したい
粉々になったかもしれないカケラとも言えないカケラでもいいから
それでも そんなカケラでも わたし だったもの
悲しみの記憶も ツライ記憶も 苦しかった記憶も
そんな痛みの記憶でさえも わたし のカケラなら それさえももう一度 拾い集めたい
そうして バラバラになった自分を パズルみたいに1カケラずつ合わせていって
役割じゃない 何者でもない わたし になってみたい
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