読むコント➋「彼氏」
デート。それも、ドライブデート。
彼氏と。それも、お金持ちの。
「待った?」
「全然待ってないよ」
嘘。全然嘘。でも笑ってみせる。
真っ赤なフェラーリががなり散らかす。
車内は狭かった。
車は進み始める。
「これ、流石に由紀ちゃんもわかるっしょ?」
「フェラーリだよね、知ってる。」
わかるっしょ?きっしょ。
言葉は汚いけれど、この気持ちは嘘ではない。
「いやー由紀ちゃんめっちゃ可愛いねー。」
「どうも」
興醒めだ。
明らかに有意義では無い時間は車と一緒に進む。
「ちょい由紀ちゃん、ケータイ見過ぎじゃね?」
「…」
「由紀ちゃん?」
「…ります。」
「は?」
「帰ります。」
言った。はっきりと。帰りますと。
「なんでなんで、俺つまんない?なんで?」
「いや、そうじゃなくて。」
「金はあるからさ。もうちょい、ね?」
「金なんかないでしょ?」
「いや笑、フェラーリの値打ちぐらいお前でも
わかるだろ。」
分かるわ。フェラーリの値打ちはな?
強めにドアを開けて車を降りた。
「もともとこんな安物女いらなかったし」
「は?」
強がってフェラーリに寄りかかる男。
「黙れ、わナンバー。」
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読んで頂きありがとうございます。
もはやコントではない気がします。