見出し画像

苫小牧市の老舗洋食店「第一洋食店」


通りに面して外観。建物両隣はコインパーキングだ


1919(大正8)年、苫小牧の本町で創業。以来、2023年の8月には104年の歴史を数える洋食店である。フランス料理に日本の感性を加味した洋食を提供し続ける。現在は3代目・山下明さん夫妻が、創業当時からの変わらぬ味を提供する。

初代の山下十治郎さんは、横浜グランドホテルで西洋料理を修業した後、札幌へ渡り「豊平館」でフランス料理を振る舞っていた。大正天皇が皇太子時代に北海道行啓をした際に、料理人として随行。その後、王子製紙の調理長を経て独立。店を開いた。2代目の山下正さんは、版画家など全国の第一線で活躍していた文化人との交流があった。店内には、先代の下に集まった作品で彩られ当時の華やかさを伝えている。


気品漂う店内

現在の店舗は70年前の建物である。建築家に依頼し、クラシカル感あふれる正統派の趣きが漂っている。店内には、オペラが静かに響いている。現店主は「苫小牧オペラ同好会」の会長も務めているという。

メニューのうち、ランチタイムのみに提供される「コロッケ」はジャガイモを使わないコロッケである。牛肉を煮込み、その煮汁で肉を溶いて滑らかなパテ状のものを揚げる。形・大きさ・揚げ方は創業当時のままだそう。特性ミートコロッケやハンバーグを際立たせるデミグラスソースは20日以上煮込んでつくる。ほんのり和風の香りを効かせているのが特徴である。付け合わせの野菜やフライドポテトも、主役を引き立てる名脇役として存在感を放つ。

道内にかくも正統派の洋食店があったとは。もっと早くに訪れるべきであった。2階には個室があり、フルコース料理(4,000円から)の宴会や会食で利用できる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?