小樽の市場
港町・小樽には地元市民に親しまれてきた昔ながらの「市場」という買物の場が残っている。最盛期である昭和初期には、その数25カ所もあったという。90年ほど経った現在は6カ所までに減った。2024年の春には、JR小樽駅に近い小樽中央卸市場が77年の歴史に幕を閉じるという。すると、残るのは「小樽中央市場」「南樽市場」「三角市場」「新南樽市場」「鱗友(りんゆう)市場」の5カ所となる。
そもそも、小樽の市場の始まりは1917(大正6)年に旧国鉄手宮線の手宮駅近くに行商人が集まったことによる。そこで開設された「手宮市場」が始まりとされる。第一次世界大戦後、樺太や旧満州から小樽港に引き揚げた人たちが露天商として魚などを売り始めた。炭鉱で栄えていた空知方面の行商人は、たたけば「ガンガン」という音がするブリキ缶を背負っていたことから「ガンガン部隊」と呼ばれ、彼らの仕入れ先として小樽の市場は栄えていった。ガンガン部隊は夜明け前に小樽に入り、それぞれの市場で仕入れた魚や野菜をブリキ缶に入れ、明け方には地元へ商売に戻っていった。
1959(昭和34)年、札幌に中央卸売市場ができると、行商人の多くがそちらへ流れた。以降、小樽の市場はいわゆるB to BからB to Cへと、卸業者用から一般向けの市場として生き残りをはかってきた。スーパーマーケットという業態の進出、後継者不足といった内外環境の変化で、淘汰が進んだ。始まりとされる手宮市場も2018年3月、101年の歴史に幕を閉じた。
現在、小樽で最も大きい市場はJR南小樽駅近くの南樽市場である。27店舗が店を構える。ここも露天商の集まりから始まった。1938(昭和13)年、前身の高砂市場が建てられたが戦争の閉鎖を経て、1949(昭和24)年に再スタートした。
市場は対面販売という昔ながらの、若い人には新鮮な販売方法がある。食べ方をはじめ、さばき方などをおしえてもらいながら買い物できる利点がある。新しい味、まだ知らない味を探して「市場」という場をさまよってみよう。