[読書]シリア難民
初版は2016年11月25日発行。
少し前の本。
この本を読むまで「難民」について甘く考えていたと思う。
「難民」と呼ばれる人達は皆、戦争や貧困などで故郷で生きていくことが困難な人たちが他国に庇護を求めてやってくるのだと思っていた。
しかし、この本を読むと認識を改める必要があると感じさせられる。
彼らは故郷を出た時にすでに一度死んだのだという。
だからEU諸国へ行くためには砂漠を横断し、密航業者に大金を払い命の危険を顧みずに渡航する。失敗しても命がある限りは諦めない。
何度でもチャレンジをする。
EU諸国がいかに難民を拒もうが無駄なのだ。
エリトリアと言う国がある。
30年に及ぶ独立戦争後エチオピアから独立したアフリカの国家だ。
しかし、そうして出来上がった国家は「アフリカの北朝鮮」とも揶揄される全体主義国家だった。
憲法はなく、司法制度も崩壊し、住む場所、仕事、家族と会う頻度まで管理されており、奴隷のように働かされて、帰宅を許可され家に帰ると子供は自分の顔を覚えていないと言うのが当たり前の話になっているともいう。もし、何か違反を犯して逮捕されてしまえば司法が崩壊しているため、逮捕者の消息を辿ることも不可能。
裁判も行われず即処刑されてしまう。
元エルトリア自由戦士は祖国を「地上の地獄」だという。
確かにその状況では死の危険があろうが他国の庇護下に入れる可能性があるのなら怯みはしないだろうと思う。
日本はEU以上に難民の受け入れには不寛容な国だ。
それどころか、日本が行っている「外国人技能実習」などは「奴隷労働」と大差ないケースが多いし、下手に受け入れたら日本から他国への庇護を求めて脱出する人が出かねないのではないかと思うほどだ。
日本には人種差別がないと思っていたが、それは他人種が少なくて目立たないだけでここに立派に存在しているのだ。
外国人を大勢受け入れると、日本人の仕事がなくなるなどと言う人もいるけどどこまで本当かわからない。
人口が増えればその分消費も上がる。
日本は少子化が進んでいるのだから下手したら若者が増えて景気良くなるんじゃないかと素人ながらに思うこともある。
兎にも角にも、難民にはしっかりと手を差し伸べないといけないのだと考え方を変えてくれる一冊でした。