ソリストが病気に!どうなる、今日の公演?!
空気も日に日に冷たくなってきました
秋も深まり、
声楽家に辛い季節、
風邪の季節がやってきました!
緊急事態発生!
朝から歌劇場事務所は電話の嵐!
今日歌うはずだったソロのテノール歌手が病気になってしまいました!!
この役、演技が複雑で代わりに演じられる歌手がいないのです!
以前はダブルキャスト、トリプルキャストまで
用意され、病気になった歌手の代わりに
起用される歌手が常にスタンバっていました
しかし、最近では
経費削減のためなのかわかりませんが、
役をダブルキャストにしない歌劇場も増えてきており、
風邪をひいた歌手の代わりに
代役が舞台袖から歌い、
役者が(役の立ち回りを熟知している演出助手がやることも!)
舞台上で演技のみする。という事態が
多数発生しています。
さあどうする?!
ここ、ヨーロッパの歌劇場
歌手は機械ではありません。
風邪が流行る時期は
本当に大変な事態が連日のように発生します!!!
風邪は症状が出てくるまでにすでに人に移してしまうことが多いため、
日々大勢が密で練習をする私たちは
常に風邪を引くリスクの中で仕事をしているのです!
さあ、今日はこのような状況を一体どうやって乗り越えたか
ご紹介しましょう!!
実は何も知らされていなかった私達
合唱の出番は開演30分後です。
私たち合唱が舞台に出ると
いつも一緒に演技をするテノールの姿がありません。
登場してきたのは
?!?!?!
なんと!
あなた!!え?その衣装?
歌っちゃうのですか?!
テノール役、
歌劇場、なんの機転を効かせたのか
メゾソプラノがテノール役の衣装を着ている!!!!
なんと!
演技に集中しなくてはならないのに、
男性役の女性から目が離せません!
もうすぐ彼の(彼女の)歌の出に入ります。
歌うんですか?!
彼女、朗々と歌い始めました。。。
うわあ、
こんなこと生まれて初めて経験しました!
出番が終わり、楽屋へ戻った途端
仲間たちがこの初体験の感想を述べ合いました。
私個人としては今回のびっくりするような劇場側の対応は、
公演作品がコミカルな内容のものだったので、
お面白いかも。と感じました。
が、同時に音楽的に見ると
プロフェッショナルな対応ではないな。
という思いもありました。
聴きにきてくださっている観客の皆さんにも
申し訳ないです。
仲間も同様にどちらかというと
苦肉の策で仕方がないが、緊急事態に備えて、
ダブルキャストにするべきだ。
という意見がやはり多数でした。
しかし、公演終了時の
お客様の反応は
なんと
スタンディングオベーション!
ブラヴォー、ブラーヴァ!!の嵐でした。
後日の新聞にも大きく報道され、
それによってこの女声歌手の人気も大きく上がり、
なんとこの対応で
公演は成功に導かれたのでした!
連日公演というかなりハードな状況では
このような事態は
起こる可能性があるのです。
複数のソリストが病欠の場合、
公演演目変更!
という処置を取られる場合もあり、
私ももう何度も経験しています。
それにしても、この作品
なぜか呪われていて、
その次の公演時、
なんと今度はソロの主役女性が
足を骨折してしまい
演出家助手が車椅子を押しながらの出演でした!
演出家助手は看護師さんの衣装を着ていて、
本当にそう演出されているのかも?!
と思わせるような立ち回りでした。
しかし足全体をギプスに覆われ、
曲げることもできず、座ったままの歌唱とは
なんとハード!!
作品がもちろんコミカルなことと、
公演作品を熟知している演出家助手の
絶妙の車椅子の操縦で
更にコミカルさが増し
観客も多いに沸いていました。
今回も不可能に見えた公演、
大成功で終了しました。。。
なんと神経を使う歌劇場経営!!
しかしここには
なかなか斬新な危機回避の
アイディアを持った方が
いるようです!!
歌劇場合唱団、
緊急事態に見舞われることも多々ある
エキサイティングな仕事です!
私達が日々どのように
危機の大波を乗りこなしているのか
これからも少しづつ
ご紹介していきたいと思います。