ぼっちユニバの思い出
2022年は、数回、ひとりでユニバに行った。
大阪といえば、通天閣、海遊館、そしてユニバーサル・スタジオ・ジャパーーン、と並び称されるような、あのユニバである。
現代は、おひとりさまが活動しやすい世の中へと変化しつつある。ソロ活、なんて言葉もあるし、ひとり旅、ひとり焼肉、いろんなアクティビティをひとりで楽しむ人が増えてきたらしい。
テーマパークについても、ひとりディズニー、ひとりユニバの動画をアップしている人を見かける。
が、そんなのは所詮ネット上の幻想である。
実際には、世の中そこまで大きくは変わっていない。
ユニバの最寄り駅、JRゆめ咲線・ユニバーサルシティ駅にひとりで降り立った私は、そのことをひどく痛感した。
周りを見ると、どう考えてもひとりで来ている人は一人もいない。カップル、若者のグループ、ファミリー。複数人の集団がものすごい数集まって、大集団を形成している。しかもただの集団ではない。みんな浮かれポンチで、きゃーきゃー騒いでいる集団である。
ひとり旅、ひとりカフェが平気な私だが、こんな大集団の中にひとり立ち向かった経験はない。この状況下における心情を、「いもる」というんだなぁと思いながら、ここまで来たら引き返せないのでそのまま入場した。
そもそもなぜひとりでユニバに来たのか。
私は普段かなりのインドア派で、出不精でもあるが、それども時々はっちゃけたいときがある。端的に言えば、ストレス発散のために絶叫マシンに乗りたかったのである。
誰かと行くことも考えたが、土日は混んでるだろうし、平日の有休を合わせるのは結構大変である。そもそもユニバに一緒に行けるような友人知人が少ない(少ないというか、限りなくゼロに近い)。
それなら、ひとりで行ってやろう!!となったわけである。
ネットでやや誇張されがちなソロ活ムーブメントに背中を押された私は、それが幻想であることを痛感したわけだが、とにかくお目当てのジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」に向かう。
ユニバの多くのアトラクションでは「シングルライダー」というおひとり様専用の待機列があり、通常の待機列よりも早くアトラクションが体験できる。ジェットコースターなどは4人1列の乗り物が多いため、3人組がいた場合等にシングルライダーがあてがわれるというわけだ。
シングルライダーの待機列に案内されると、おや、ひとりもいないように見えたおひとり様が少数ながら並んでいるではないか!
このシングルライダー、乗るときにひとりとして扱われるだけで、友人同士で来ていても並ぶことはできるから、そういう人もいるが、明らかなる「おひとり様」もいる。
非日常を楽しんでどんちゃん騒ぎしている周囲の集団に比べ、おひとり様たちは静かである。(ひとりで騒いでたら怖いから当たり前だが・・・)
しかも、服装や出で立ちが全く浮かれておらず(グループはおそろいのカチューシャやおそろコーデをしていることも多い)、純粋にアトラクションを楽しみに来たという雰囲気である。若い人もいるが、おじさまおばさまもいる。
ああ、こんなところに自分の同志が・・・。と何だか感動してしまった。純粋なシングルライダーだけをかき集めて乗ることができたら楽しそうだなぁ。
さて、いよいよ乗車である。さきほど、シングルライダーは、基本的に通常待機列で3人組が発生したときにあてがわれ、一緒に乗ることになると書いたが、これが恐ろしいのである。
その3人組が親子連れや大人しめなグループならいいが、超チャラい感じのパーリーピーポーだったときはめちゃくちゃ気まずい。
だが、ユニバという場所の性質上、パリピに当たる確率は非常に高い。なんなら、普段お目見えしないレベルの陽の方々とマッチングする可能性がある。
その時も、残念ながらとてもド派手な金髪のお姉様3人組と一緒に乗ることになった。ああこんな絵に描いたような金髪でバチバチメイクのギャルっているんだなぁと思いながら、「まじちょーやばいんだけど〜〜(実際にこう喋ってたかはさだかじゃないがこんな口調)」などと騒いでいるド派手な3人組にくっついて、一緒にジェットコースターに乗り込む。流石に声には出されないものの、「誰こいつ?何?なんでいんの?ひとり?」と思われているであろうことが伝わってくる。いや、お姉様たちは何も悪くないんだけどね。
だが、それもジェットコースターが出発するまでの短い時間の話である。発車してしまえば、誰も私のことなど気にしていない。というか、私も気にしてられない。
乗ったことを後悔するレベルのレールを駆け上がっていき、一気に乱高下するジェットコースターに振り回されていたら、そんなことは、どうでも良くなる。日常のあれこれも、その瞬間は、すっかり頭から消え去っている。大音量の音楽に揺られながら、目の前を遮るものが何もないような景色のなか、空を駆けているような気分が味わえるのは、とても爽快だ。乗ってよかった。
お目当てのジェットコースターに乗れたことで、ほとんどユニバの目的は果たしたようなものだが、ユニバには美味しいフードやスイーツがたくさんあることはリサーチ済みである。せっかくだからそれも味わいたい。
ユニバはクールジャパンという企画で、何かといろんなアニメとコラボしている。当時は鬼滅の刃コラボメニューがあったので、堪能してきた。
煉獄さんのすき焼きカレードリアみたいなフードが想像以上に美味しく、さらに無限列車のケーキもとてもクオリティが高くて感激した。
ジェットコースターに乗ってフードも堪能して、その後も何やかんやひとりでぶらついてはアトラクションに乗り、一日を満喫できた。
途中途中、今自分はユニバでひとりなんだ…という事実にいたたまれなくなるものの、楽しむことはできる。何となく周囲に見られているような気がしてしまうが、実際には誰も全く気に留めていないはずだ。
帰り道も、話す相手がいないので、そそくさ退散…みたいな雰囲気がどうしても漂うが、気にすることはないのだ。うん。
でもやっぱりぼっちユニバは気まずい。
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