【体験談】看護師→IT系企画職に転職して感じた医療業界の闇
私は看護師を3年勤務したあと、一度看護師を辞め、約1年の空白期間の後にIT系企業の企画職に転職しました。
空白期間の間に出産し、まだ0歳の子どもを抱えた状態での転職活動は本当に辛かったです。
しかも企業転職した友人や先輩などもいなかったため、手探り状態での転職活動でした。
当時(今からもう5年以上前)は、まだ企業で働く医療職向けの求人が少なく、特に看護師出身者が企業で働くなら「健康管理室の看護師」もしくは「治験コーディネーター(CRC)」のどちらかしかないと言われていました……。
他にも探せばあったのかもしれませんが、保健師資格も保有しておらず、私の経験年数も相まって応募できる求人もなく、本当に転職できるのか全く先が見えない状態……。
そんな中、考え方や転職の軸を変えたことで医療とは全く関係ない『IT系企業の企画職』というポジションで内定をいただきました。
*なぜIT系に切り替えたのか、転職するためにしたことはまた別のnoteでまとめますね。
IT系企業、しかも企画職というポジションは、はっきりいって未知の世界。何をするのかも全くわかりません。
そこで今回は、IT系企業の企画職が何をするのか、そして一般企業に転職したからこそわかる医療業界との違いについてお伝えします。
IT系企業の企画職について
IT系企業といってもその業務内容は多種多様です。例えば「IT系企業」で思い浮かぶ企業といったらGoogleやLINE、NTTなどの名前が挙がります。
GoogleはWebサービスの側面が強く、LINEは現代人必須の連絡ツールの先駆けですよね。NTTも通信業界では日本トップといってもいいでしょう。
つまり、単純にIT系企業といっても、1つの領域ではなく複数の領域を掛け合わせ、オリジナルの強みを出している企業がほとんどです。
私が内定をいただいた企業も同様に、別の領域で強みを持っている企業でした。
しかし、当時は新型コロナウイルス流行の影響で、その領域自体を縮小せざるを得なく、その中で新しい領域(コロナ支援のようなヘルスケア領域)へ着手しようとなった時に、たまたま医療職出身だった私が応募したため、ポテンシャル採用という形で内定をゲットしたのです。
企画職ってどんな仕事なの?
企画職は、簡単にいえば何かしらのサービスやツールを展開する際に、どんな内容にするかを考えて形にしていく職種です。
企業によって企画職の裁量は異なり、最初の計画段階から企画実施、企画の販促や運営部分、クローズまで任せられることもあります。
私が行っていたのは計画段階から企画実施までのローンチまでの部分で、そこから先の販促や運営は別部署(マーケティング部や運営チーム)に任せていました。
そのため、ここでは計画〜企画実施までの仕事内容について解説しますね。
企画職の企画・計画の立案方法
わかりやすくするために、一例として最近注目されている『ゲノム解析』分野に関する何らかのサービスを提供したいと上層部から指示が入ったとします。(私が勤めていた部署は上司から「◯◯で何か企画やりたいんだけど、良い案考えてきて」というトップダウン形式でした……)
ゲノム解析はまだ日本では知名度も低く、世間的に一般化していません。そもそもゲノム解析で何ができるのかといったところも一般の人からしたら想像できないでしょう。
そのため、まずはゲノム解析に関する知識を一般層に定着させる必要があり、その上で新しく開始されるサービスを使いたいと思わせなければいけません。
<ゲノム解析でわかること>
遺伝子の特定:生物が持つ遺伝子の位置や数、構造を特定できる。
遺伝子の機能解析:遺伝子の塩基配列を解析することで、その遺伝子がコードするタンパク質の種類や機能を推定できる。
遺伝病の原因究明:特定の疾患と関連があるとされる遺伝子の変異を調べることで、疾患の原因を解明できる。
進化の理解:異なる生物種間でゲノムを比較することで、その生物の進化の過程や系統を理解できる。
育種の高速化・高効率化:ゲノム解析により、新たな品種を作り出す育種の高速化・高効率化が期待できる。
新型コロナウイルスのワクチン開発にも大きく寄与したとされているゲノム解析ですが、遺伝子組み換え作物や特定の病気の原因、治療薬の開発といった方面で期待できそうです。
しかし、一般層に利用してもらうためにはややパンチが弱いですよね。内容も医療に寄りすぎてしまっていて、一企業が参画するにはハードルが高そうです。
今度は、実際にゲノム解析で何ができるのか、ゲノム解析をサービスとして提供している企業があるのかを探していきます。
調査をしてみると、面白いサービスをいくつか見つけました。例えばゲノム解析によって肥満遺伝子がわかるというものです。
肥満遺伝子の数や種類を調べることで、どんな食材で太りやすいかなどの情報を得られます。これをスポーツジムと提携しながら販売しているのです。「なかなか痩せない」「食事制限や運動してもうまくいかない」層向けの新しいアプローチとして良いサービスだと思います。
このように、その手法でわかることから、どんな付加価値をつけたサービス内容にするか、どんな層にアプローチしていくかというのが『企画立案』です。
企画内容に具体性を持たせる
企画立案できたら、その企画内容に具体性を持たせていかないといけません。その企画が本当に採算がとれるのか・売上が担保できるのかというのを査定しないといけないためです。営利企業として赤字を出してしまったら、大きな損失につながりかねません。
企画内容に具体性を持たせるために、様々な手法で企画内容を詰めていきます。
先ほどの『ダイエット目的のゲノム解析サービス』を参考にすると、まずゲノム解析を行うためにどれぐらいの金額が必要なのかを調査しないとけませんね。
解析に用いる機器や設備、試薬、物品などのコストを医薬品や研究物品を提供している卸企業に確認しながら金額を算出します。さらに専門性の高い操作をしていただくことになるため、人件費もコスト計算に入れておきます。
またそれに付随して、競合調査も行っていきましょう。似たようなサービスを提供している競合がどのようにサービスを販売し、1回あたりの金額はいくらなのかを割り出していきます。
ここの時点で、初期投資や継続的にかかる費用が、1回あたりの金額と採算合わなければ、その企画はボツ傾向になります。せっかくここまで調査したわけなので、ボツにならないよう調査を繰り返します。
例えば、自分達でゲノム解析するのではなく、他社に格安で依頼してやってもらう方法などですね。その場合は他社に依頼して見積もりを発行してもらうこともあります。
また、とても重要なのが『そのサービスの利用者がどれぐらいいるのか』ということです。せっかくローンチしたサービスも利用者がいなくては、大赤字になってしまいます。
サービスの利用者を調査するために、アンケート会社に依頼して利用者の意向を調査してもらいましょう。手当たり次第にやっては費用もかさんでしまうので、スポーツジム利用者やエステ利用者のように層を絞って、アンケートをしてもらいます。
ここである程度の見込み客がいることがわかれば、初期費用や継続的にかかる費用がペイできるかを天秤にかけて、提供サービスの価格を決めていきます。
企画資料を作成する
企画内容がある程度形にできそうということがわかったら、そのサービス内容を資料にしていきます。資料作成はPowerPointやGoogleスライドのような資料作成ツールを使うことが多いですね。
企画資料というと難しく感じるかもしれませんが、ある程度型が決まっているので、安心してください。(型は所属部署によって若干異なる可能性があります)
■資料作成の順番
①タイトル
②目次
③目的・導入・依頼したいこと
④企画概要(簡単にまとめたもの)
⑤企画内容の説明
⑥説明内容の根拠
⑦今後の展望
このような形で資料を作っていきます。なお、資料はプレゼンする相手によって省いたり順番を変えることで、より企画を通しやすくなるので、相手に合わせた資料作成を心がけることが重要です。
企画内容をプレゼンする
企画資料が完成したら、企画内容を上司や関連部署にプレゼンしていきます。プレゼンのために、相手のスケジュールをおさえて調整しないといけないのですが、意外とこの調整が大変です。
例えば、関連部署の副部長にプレゼンする必要があったのですが、副部長は週明けは機嫌が悪いことが多く……。機嫌が悪い時にプレゼンしても良い反応は得られないと思ったため、あえてプレゼンする日程を週後半に設定していました。
また、いきなり企画内容の説明をするのではなく、企画内容の目処が立った時点で、副部長に簡単に内容を伝えておきます。この時しっかりとした場を設ける必要はありません。
休憩時の小話程度に、「そういえば来週あたりに詳細を説明させていただきたいのですが……実は今○○の企画を考えてまして、内容は〜〜になりそうです。」といったように、本当にざっくりとした形で伝えておきます。
この時点で相手の感触を知っておくことが重要です。その時点でアドバイスをいただけることもありますし、感触が良ければ企画の承認もスムーズです。
副部長の承認が得られたら、次は部長、その先は本部長……のように順にプレゼンが必要になるので、都度上記のように調整していきます。
プレゼン相手の立場が上になればなるほど、自分がプレゼンするのではなく発表者も変わるので最初の関門さえ乗り越えてしまえば大丈夫です。(部長へのプレゼンはチーム長が行いました)
企画の承認・稟議申請
プレゼンの結果、上層部から承認を得られたら、企画の稟議申請を行っていきます。
稟議申請は各企業によって書式が異なるため、規定の書式に沿って記載・提出していきます。提出前に上長から承認のサインもしくは印鑑(電子の場合もある)が必要ですので、そちらも忘れないよう対応します。
提出先も規定の部署がありますので、そちらに提出してください。
企画実施に向けた準備
稟議の申請も無事に通ったら、実際に企画を動かしていくための準備段階に入ります。この辺りから企画の運営チームを構成し、関係部署に働きかけていきます。
必要物品を揃えるために卸の企業などを挟んだりメーカーのような製造に関わっている企業と打ち合わせを重ね納期を決めていきます。また、それに伴って施設の工事費や電気設備なども確認していきます。
実運営を行うスタッフの調整もしないといけません。高い技術を要するスタッフが必要な場合は、その技術を持ち合わせているスタッフの募集をかけたり、人材派遣会社と調整したりしながらスタッフの雇用も進めていきます。
ここで大切なのが、企画サービスを開始する日程に必ず間に合うようにすること、そしてプレスリリースや公式サイトの準備も並行して進めていくことです。
サービスの公式サイトは専門部署と相談しながら、どのようなテイストと内容にするかを詰めていきます。自社内で専門部署があれば良いのですが、ない場合はWebサービスを構築する企業に問い合わせし、打ち合わせを重ねて作り上げていきます。基本的にはお任せすることが多いですね。
企画実施
ここまで入念に準備を重ねてきました。後は企画の実運用を行っていきます。私がいた企業では企画職の業務は基本的にここまで。運用チームのスタッフにサービスはお任せします。
ただ、全く関わらないわけではなく、メインの運用はお任せして裏側のサポートに回るイメージです。技術が必要な作業は難しいですが、事務的な作業などサポートが必要な時はヘルプに入ります。
企画終了後の対応
期間限定の企画の場合は、その企画の終了後の対応も必要です。
購入機器類の売却先や譲渡先の検討
施設の契約解消手続き
スタッフとの契約解除の手続き
公式サイトのクローズ作業
関係部署との調整
最後まで関わる場合もありますし、別の方に業務を引き継ぐ可能性もありますので、そこは臨機応変に対応が必要です。
医療業界と一般企業(IT系)との違い
看護師を辞めて、IT系企業の企画職に転職しましたが、多くの点で医療業界との違いを感じました。違いだけでなく、IT系という新しいものを取り入れていく業界なことも相まって、「医療業界は古臭いな……」と感じる点も多いです。
そこで、4つの点からみた医療業界と一般企業(バックオフィス職)の違いと「ここが変だよね」という点についてまとめていきます。
✳︎バックオフィス職:会社の営業や事業部門などを支援する役割を担う業務のこと。会社の基盤を支え、円滑な業務運営を可能にする重要な役割を果たしている。
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