みちしるべと拠り所
キッチンのコンロの下にある収納。そこには愛犬三郎のごはんケースが入っているため、毎日のように開け閉めている。開けるたびに「この収納、重いなー。」とは思うものの、三郎のごはんを取りだし、用が済んだらまた閉める。
収納を閉めてしまったら重たいことはすぐに忘れてしまうけれど、開けるたびに重たいことをまた思い出す。そんなことを繰り返し、かれこれどのくらいの日が経つだろう。
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昨年は今年の漢字一文字として「顕」と決めて、常に自分の中に置きながら過ごしていた。そのお陰で発見や感動があったり、迷ったときの指標になったりして、この漢字と共に過ごしてきたことが本当に良かったと、年末に1年を振り返っていた。
今年も年始めに「今年の漢字一文字」を決めた。昨年末から、ある漢字がなんとなく浮かんでいたけれど、迷いもあり決めきれないでいた。元旦に漏電ブレーカーが落ち、寒い日に5時間電気が付かない状態になり、元旦早々からプチパニックに陥り、この出来事が「なんとなく」から「決定」に変わった。
私が決めた漢字一文字は「整」。
我が家は、夫の祖父が間口2軒の家から徐々に大きくしていったものだけれど、増築を重ねることで電気の配線がどうなっているのか、残された家族は誰も分からない。
私たち家族は古い木造の家と(小さな)鉄筋のビルに2世帯で暮らしているけれど、家電の消費電力とアンペア数は合っていないだろうし、両方の建物が雨漏りを起こし、家自体が老朽化していることもあり漏電の原因にもなっていると思う。
過去にブレーカーが落ちてしまった時は、家電を同時に使うことを止め、再度ブレーカーをあげてその場を凌いでいた。しかし、昨年からブレーカーが頻回に落ちるようになったり、木造の1室の電気が使えなくなったりして、そろそろ本気でなんとかしないといけないと思いながらも、やり過ごしてきた。
夫の祖父が少しずつ少しずつ大きくしていったこの家。
老朽化が進んだこの家を背負うことになった私たち。
今までの私と夫の会話は、
「壊して建て替えるか、更地にして自分たちはマンションに引っ越すか、いつかは考えないとねー。そうなったら大変だねー。」
と、どこか人ごとのようにお気楽な気持ちでいたけれど、ここ最近は私たちに大きな負担がのしかかってきているように感じ始めてきた。
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夫婦お互いに見て見ぬ振りをして、なんとなく避けてきていた家の話。でも正月からの漏電騒ぎをきっかけに、ふたりで家計を見直したり、お互いが家のことをどう考えているかを口に出したりするようになり、ひとりで悶々と考え、徐々に八方塞がりになっていきそうな私にストップがかかった。
家について話すことで、お互いに嫌な気持ちにならないか、夫が負担を感じないか、私が心配しすぎなのかと考えて、私から夫に話を切り出すことにためらいもあったけれど、不安な気持ちを夫に共有してもらいたいという思いで話すより、これからどうしていくかを夫と一緒に考えていこうという思いで話すと、話し合いが案外スムーズにいくことに気付いた。
電気に関しては、まずは我が家の配線と状況について調べてもらうようにした。目を背けていた私たちにとっては、これでも大きな進歩。
目を背けてやり過ごしつつも、ずっと気になっていることに対して、小さな行動を起こすと案外ことが進んで、安心感や爽快感が得られる。そこに自分ひとりの考えだけでなく、夫と話ながら進めていければなお心強いと感じた。
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冒頭のキッチン収納が重たい話。私が長いこと目を背けていたことだけど、「整」が頭を過ぎり、一度整頓したくなって中のものを全部出した。中には使わなくなった瓶や賞味期限が切れた食材が入っていて、それらすべて捨てた。中の板もだいぶ汚れていて、ゴシゴシと拭いたらピッカピカになった。
そこに使うものだけを入れたら、三郎のごはんケースも綺麗に収まり、その後の使い勝手も良くて爽快。
私は「整」という漢字を、物理的なことだけでなく、自分の心や家族との関わり、健康、仕事、人とのつながりなどに対しても、考え方のみちしるべや、拠り所にしていきながら、この一年を過ごしていこうと思う。
ヘッダーはTOMOさんのイラストをお借りしました。ありがとうございました☆彡