家事は二人ですればいい
私が実家で暮らしているころの母は、仕事をしながら、家事もして、常に動いている人だった。母が居間で座っている姿を見ると、
「わっ、お母さんが座ってる!」
と私は驚くほどだった。
家族の中でも一番先に起き、朝食の準備にお弁当作り、洗濯、掃除にと、朝から動きっぱなし。朝は父と一緒に職場へ車で向かい、帰りは、父と終業時間が違うため、リュックを背負って駅まで走り電車に飛び乗っていた。帰宅してからは近所のスーパーへ買い物に行き、家に戻るとすぐに夕食の準備を始める。
当時の洗濯機は2槽式で、寒い冬は、冷たい水に浸った洗濯物を、素手で脱水槽に移動し、脱水が終わったら屋外の物干しで冷たい洗濯物を干していた。洗濯物を干した後は両手をこすり、その手にハーと息をはいていた姿を思い出す。
母は頭痛・肩こり・腰痛持ちだったので、私は頭痛薬を薬局に買いに行くおつかいと、ときどき肩や腰のマッサージをすることが母の手伝いのようになっていた。
薬局に行くと馴染みのおばちゃんに、
「この間持っていった頭痛薬、お母さんは効いたって言っとった?今日はセデスにする?バファリンする?」
と聞かれるので、薬局に行く前に、母にどの頭痛薬が良いのか確認するのは私にとっては当たり前のことだった。今思うと、小学生の私は案外しっかりとしていたなあと思う。
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父がキッチンに立つのは年に1回。それは大晦日におせち料理を作る時だった。鯉をさばいて甘露煮にしたり、お刺身のお造りを作ったりしてご馳走を用意してくれた。
季節ごとの漬物づくりや、梅干しづくりは、父が率先してやっていたし、今で言うDIYは父の趣味であり得意なことだったので、家のことを全くしないという人ではなかったが、日常の家事全般を父は母に任せていた。
だから幼いころから私は、男の人がキッチンに立つことや洗濯、掃除をすることは特別なことのように思っていた。
そう思っていた私は、結婚してからも「家事は女がするもの」という考えが当たり前になっていた。嫁ぎ先でも義母が家事のすべてをこなしていたから、それが「良き妻」であるという思いが一層増していった。
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世間では「夫婦の家事分担」について話題に上がり、「イクメン」や「家事メン」という言葉もある。私も家事分担ってありだよね、とかイクメンや家事メンってどうしたらそうなるんだろう、と考えることはある。
しかし、「家事は女がするもの」という考えが染みついている私は、家事分担を実現することを本気で考えられなかった。私が仕事をしているときでも、私と夫の仕事量を考えたら、どう見ても夫の方が多いし、稼ぎも違う。
ましてや現在私は専業主婦。夫が仕事をしている間、家事をする時間は山ほどある。この状態で「夫婦の家事分担」とは私としては考えにくい。
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しかし最近、年齢のせいか夫は早起きになった。休日でも私より早く起きるので、私が起きてくるころには夫はもうすでにお腹が空いている。私は起きてからすぐに朝食の準備をするのは正直きつい。
「腹減ったから朝ごはん作るぞ!」
と自ら冷蔵庫の食材を確認し、どの食材を使っていいのかや、フライパンの在りかを私に確認しながら作ってくれるようになった。
そこで私が気づいたのは、以前の私はご飯の準備は私が、女が、やらなければならないという考えがガチガチに凝り固まっているということだった。夫がキッチンに立とうとしているのに「いいからいいから、私がするから」なんて言葉が一番先に出ていた。
お願いする、お任せするということをしていなかった。してもらえたら嬉しいし、助かるし、それを素直に思ったら、すんなり「ありがとう」の言葉が出てくるのだ。
洗濯についてもそう。しばらく前から、洗濯機から洗濯完了の音が鳴った時、夫は腰を上げてくれるようになった。その時も「いいよ、仕事で疲れてるでしょ。私がやるよ。」とはじめの頃は言っていたけれど、どこかでイライラしていた。
「一緒に干すよ」とせっかく言ってくれているのに、家事は女の仕事と思っている私は素直になれずにいた。でも「一緒に干してくれるなんて助かるなあ」と素直になってみたら、私も楽だし、洗濯物を干しながら冗談を言い合って会話をしている。
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夫の「やってあげた」「手伝ってあげた」発言に、妻が腹を立てる気持ちもよくわかる。ただ我が家の場合は、私も夫も「家事は女がやるもの」という意識でスタートしているので、「やってあげた」「やってもらった」の考えはなかなか拭えないかもしれない。
けれど、私も身体に痛いところや倦怠感があるときは、我慢してまで家事は女の仕事として囲い込まず、夫に「助けて」と伝えることも大事なことだと思った。
どんなことが夫にとって、そして私にとって、助けになり嬉しいことなのか、これだけ一緒にいてもあらためて知ることがある。私自身が「家事は女がするもの」という考えに固執することなく、心豊かに、夫と仲良く暮らしていきたいと思う。
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ヘッダー画像はえんなけいこさんの画像をお借りしました。こういう雰囲気の夫婦になっていけたらいいな☆彡