声はすれども・・・
ピッキオの前に広がる「ケラ池」は、冬はスケートリンクになる人工池です。しかし生き物の住処にもなるように、岸辺は土で覆われ植物が生えています。そんなケラ池では今の季節「カラララ・・・」「コロロロ・・・」と軽やかなカエルの声が響いています。繁殖に集まった「シュレーゲルアオガエル」たちの歌声です。
シュレーゲルアオガエルは緑色で足指の先に吸盤をもつ、樹上性のカエルです。普段は森の樹上で暮らし、春になると繁殖のため、ケラ池に集まってきます。池で歌っているのはオスたち。鳴き声により、メスを呼んでいるのです。オスはメスを見つけると背中に抱きつき、ペアは岸辺の土の中に潜って白い泡に包まれた卵を産みます。
ただオスたちも、運よくメスに出会えるとは限りません。そこで岸辺で歌いながらメスを待つのですが、どんなに目を凝らしても、その姿が見つかりません。目の前の岸辺から声がするのに、カエルの姿が見えないのです。
実はオスたちは、地中に潜って歌っているのです。鳴き声からピンポイントで場所を聞き分け、そっと岸辺の落ち葉をめくると・・・いました。
・・・まるでドブのような色をしたシュレーゲルアオガエルが。
カエルの仲間には、体の色を変えられるものがいます。田んぼに多いニホンアマガエルは、黄緑色から灰色まで色を変化させることができますね。ではこのシュレーゲルアオガエルも、このドブ色、いや濃緑色から、鮮やかな黄緑色に変化するのでしょうか?
それを確かめるため、ちょっと彼に協力してもらいました。
一旦捕獲して撮影。その後しばらく、明るい場所に置いてみました。
約1時間半後の姿がこちら。
そうそう、この色ですよ。シュレーゲルアオガエルといえば。
カエルは小さな生き物です。サギやカモ、カラスなどの野鳥や、ヘビなどにも狙われています。地面で暮らす種類が茶色、葉の上で暮らす種類が緑色の姿をしているのは、そのような天敵から身を隠すためでしょう。シュレーゲルアオガエルも、樹上の葉で暮らしている時は黄緑色が身を守るために役立ちますが、池の岸辺や水中では、背景は泥や落葉ですから目立ってしまいます。そこで体の色を濃く変化させ、さらに地中に潜ることで、身を隠しているのでしょうね。
春に卵から孵ったオタマジャクシは、夏になると手足が生えてカエルに変態し、岸辺の植物に登る姿が見られるようになります。次第に池から離れ、森で暮らすようになるのです。
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