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第22話:ココロノカギ
「撮影終わった、池袋だよ」
、、分かった。
ちょうどこのあと池袋で仕事だからすぐ行く、待ってな。
目黒から池袋まではJR山手線で約20分。
こういうときに限って、遅延とか起こるもんだよなぁ、、、
そんな男の予想フラグは幸いにも外れ、最速で池袋に着く。
駅の改札を出てすぐの柱に、隠れるようにしている挙動不審な女性がいた、、彼女だ。
ハローお姫様。
「撮影が終わり次第、逃げてきた」
そっか。
多分、追ってこないから大丈夫。
作品は何らかの形で世に出るかもしれないけどね。
「今から仕事?」
そだな。
爽やかなフィットネスインストラクターのお時間だぜ。
「今日は何を教えるの?」
エアロビクスと、筋力トレーニングのグループレッスン2クラスだぜ。
「、、離れたくないよ」
泣き出す彼女にヨシヨシをする。
じゃあ、ほら、俺んちのカギ。
先に家で待ってな。
「良いの?」
冷凍庫に入ってる雪見だ●ふくは食うなよ。
絶対だぞ、絶対。
「ごちそうさまです」
いや食ったらしばくぞブス。
シャワーも風呂も使って良いから、ごゆっくり。
男が他人に家のカギを託すのは、実は、、
初めてだった。
食い食われ、騙し騙されの業界を生き、人なんて生き物は使った方が勝ちで使われた方が負け。
褒め言葉は、人を乗せるための常套句。
、、、なんかそんな過去、もうどうでも良い気がしてきたわ。
男は、自分の中で何かが少しだけ変わる、いや、戻る感覚?を日記帳に記録する。
男は、ニコタマの花火が終わるころ、、
つくったばかりの合鍵を手に取り、暗い中でも微かな光に反射する鍵を見て、、
んーーあれはさ多分、心のカギを渡したんだと思うんだよね。
8月18日、二子玉川は花火大会で賑わっている。
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