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授業参観

先日、小学4年生の子どもの授業参観にいってきました。
前日に比べて急に気温が上がり、25℃近くにまでなっています。それに気づかずに革のコートなんて羽織ってきてしまいました。お年頃なので自転車をこいているうちに、ほてりと滝汗がやってきました。仕方がなく途中で止まり、コートを脱いでタオルハンカチを使って汗をふきます。後頭部と太ももにかくのが、最近のマイスタイルのようです。
 
学校に着くと時間に少し余裕があります。校舎の日かげで待ちましょう。髪が暴れるほどの風のおかげで、汗はひいてくれました。5分前になり正面玄関からおじゃまします。ひんやりしていて、もう一度コートを羽織ります。
 
教室前の廊下に着くと、保護者たちが15人ほど立っていました。知っている方にコロナを配慮しての小声で短くあいさつをします。入り口の向こうでは、子どもたちがこちらをのぞいて笑ったり、手を振ったりしています。
 
なつかしいチャイムが鳴ると、子どもたちは席に戻り、保護者たちは教室に入っていきます。それについていきました。教室の後ろに並びますが、できるだけ子どもが見えやすい所まで「すみません」と移動します。ちょうど窓からの風が当たって涼しい。助かります。
 
先生が簡単なあいさつをして、授業がスタート。教科書を開くよう子どもたちに言います。内容は「北海道の交通手段」についてのようです。先生はその具体的な例をあげてと声をかけます。すぐに座っている子どもたちから「新幹線!」「バス」「歩くのは…?」とぱらぱらと返ってきます。先生はそれらを黒板に書いていきます。
 
すると、窓側の前の方から、「ロケット!」と元気な声がとんできました。白い半そでのTシャツを着た子のようです。
黒板の方を向いていた先生がその子の方を向きました。半分は体をゆらりと動かして、残り半分は黒目だけキュッと動かして。横目でその子を見て、「んー…それはちょっと違うかな」と、白い顔の先生。
 
さらに「人工衛星!」と続きますが、先生はもう黒板の方を向いていました。そして、その子に言葉を返すことはありませんでした。
 ――あぁ、この子が前に聞いた「廊下に出すよ」と言われた子だべなぁ。
 外での滝汗とは別の手汗が出てきました。
 
 
終わりの時間がきたので、こちらを振り返る子どもに小さく手を振って、屈みながらそこを出ました。また日差しのなか、自転車で帰ります。こぎながら先程の光景が思い出されます。
 ――もし自分だったら、あの子にどんな言葉を返したべか?
 北国の風が汗を乾かしてくれますが、ハンドルを握る手はベタベタしたままでした。