『Universe』NIK
数年前から「NIK(ニック)」というアイドルグループの応援をしています。彼らは2020年に韓国・日本合同のオーディションで選ばれた11人で、昨年には韓国・日本の両方の国でデビューを果たしました。日本でのデビュー曲のタイトルは『Universe』です。
そのオーディションの内容は日本での元陸上自衛隊員による軍隊式トレーニングに始まり、お笑い芸人による羞恥心をなくすための一発芸トレーニングなどが続きました。その後は真冬の韓国に渡り、本場K-POPスタイルの歌とダンスのレッスンをへて、ミュージックビデオの撮影などでした。その本気さは芸事に疎いわたしにも伝わり、毎週放送がされるたびに惹きつけられました。
さて、その『Universe』は終始アップテンポでUniverse・宇宙へと誘う熱い曲です。どこかコロナ禍の息苦しさを振り払って別世界へ行こう、とも受け取れ、歌詞にも「ファンタジー」とあります。
では、一方で彼らが経験した「現実」とはどのようなことだったのでしょうか?一視聴者なりに考えてみます。
ひとつめはオーディションでの軍隊式トレーニングでしょう。チームの一人が遅刻をすると、その遅れた秒数の分だけ他のメンバーが腕立て伏せを課せられるなど、期間は短くとも厳しいものでした。自衛隊式なので本来は誰かを守るための訓練です。それをアイドル志望の彼らに課したのは、他人がなしえないことを実現するためには特別なトレーニングが必要だと、運営サイドが考えたからなのかもしれません。わたしたちは普段は見ることができない、華やかな世界に隠れる現実の厳しさがありました。
ふたつめはオーディションも終わりかけ、残るはデビューするメンバーが発表されるだけのタイミングで、当時広がり始めていた新型コロナに関係者の方が罹患してしまい、オーディションそのものが中断したことです。運営サイドが「再開時期は未定」とのアナウンスを出すほど、先が危ぶまれました。その他にも新型コロナによる渡航制限の影響で、ふたつの国のメンバーがそろうことが難しいなどの問題も抱えています。
ではそれらの困難な現実から逃れるために、ファンタジーを含んだ曲で世に出たのでしょうか?
現在も彼らはひとつのグループでありながら、韓国と日本、ふたつの国に分かれて活動をしています。これまでにない新しい活動スタイルに、彼ら自身も戸惑うことがあるのかもしれません。しかし個人ではどうしようもない制限を受けつつも、ライブでは両方の国をオンラインで結ぶなどの工夫を積極的にしています。そのような姿勢をからは、現実から逃れているのではなく受け入れた上で、あきらめずに自分たちだけの新しいスタイルを模索しようとする前向きさを感じます。
彼らが歌う「ファンタジー」は現実逃避のための儚いものではなく、地に足のついた努力をし続ける彼らだからこそ語ることができる「夢」なのかもしれません。
今後も世の中の暗さが続いたとしても、それでも彼らは強く輝いてくれるでしょう。そしていつの日かこの困難を乗りこえた彼らや私たちには、どのような『Universe』が広がっているのか、そう思わせてくれるのです。
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