デパートのペット売り場でウーパールーパーが売られていた。つぶらな黒い目に笑みを浮かべたような顔をして、水槽の中でじっとしている。
ウーパールーパーと聞くと、シンディ・ローパーからの「グーニーズ」を連想して、80年代半ばの雰囲気を思い出す。バブル景気に日本がわいていた頃。私は子どもだったけれど、大人たちが浮かれていて、楽しげな時代だった。
同じ頃、『川口浩探検隊』という番組があった。世界の秘境で未確認生物を求めて探検するのだが、はっきりいって壮大なやらせ。こちらも、どうせ雪男も巨大魚も見つからず煙に巻かれて終わりとわかっているのだが、つい見てしまう。やらせだろうなんて、誰も目くじらを立てたりしない、平和な時代であった。
私の記憶が正しければなのだが、謎の生物を発見! という派手なテロップとともに、一瞬だけ奇妙な生物が映ったことがある。洞窟の水たまりにいたその生物に凶暴な印象はなく、淡い黄色のサンショウウオみたいなユーモラスな見た目であった。
実物がはっきり映るなんて私が視聴している限り初めてのことだったから、テンション爆上げであった。未知の生物発見! すごいぞ、ヒロシ!
だが、それから間もなくウーパールーパーーブームが起こることとなる。その姿形は、あの謎の生物にそっくりであった。
またもヒロシにしてやられたと悔しくなったが、このことを周りに訴えても覚えている人はおらず、共感は得られなかった。
とはいえ、ヒロシのことは憎めない。私は大人になり、時代は令和になったけれど、今でも川口浩探検隊と聞くと心が躍る。
それにしても、ウーパールーパーはぴくりとも動かない。生きているのか死んでるのかもわからない。やっぱり謎の生物だ。
根負けして、私はその場をあとにした。