しゃべるいちご大福
ふいに粟まんじゅうが食べたくなった。黄色いつぶつぶとあんことのハーモニーが絶妙なうまさなのである。
浅草に店があるのを知っている。その時私は池袋にいた。乗換案内を調べたら電車で40分以上かかる。ものぐさゆえに、そんな時間を電車に乗るのは面倒くさかった。
でも、粟まんじゅう食べたい。どうしようかなあ。
満月みたいな粟まんじゅうを頭に思い浮かべながら駅の構内をてけてけと歩き、東武デパートの前を通ったときである。東北物産展の広告が目に入った。
ほう。みちのくの女である私は立ち止まって、出店のラインナップをチェックした。
なんと粟まんじゅうの実演販売があるではないか!
こうして私は、めでたく、できたてのほかほか粟まんじゅうをその場で手に入れたのだった。
これは偶然とは思えなかった。私は食べ物に関しては引きがものすごく強いのだ。
前にもこんなことがあった。
職場の近くにある菓子店の店先に、いちご大福がディスプレイされていた。あまりにもうまそうだったので、食べたい!と瞬間的に目がロックオンしたものの、先を急がねばならなかった。
けれども、私はそのいちご大福にありついた。なんと別の部署の同僚がそのいちご大福を持ってたずねてきてくれたのだ。すごいタイミングでびっくりした。
「私の念が通じちゃいました?」と大福を頬張りながら冗談めかすと、彼女は「あ、だからか!」と納得したように声を上げた。
何でも、一度は菓子店を通り過ぎたのだが、後ろ髪を引かれる思いがして、わざわざ引き返したらしい。そうしたら、いちご大福が「お願い、買って~!」と訴えていたのだそうだ。
彼女はスピリチュアルでも何でもないが、「不思議だったのよねえ」と真面目な顔で首をかしげていた。
こっちは願いが叶ってニンマリである。
願えば叶うというが、秘訣は、頭と心の願いが一致していることらしい。願っているのに叶わないのは、頭ではそう思っていても、心がそうではないことが多いという。
私が食べ物に限って引きが強いのは、私の食べたいという願いが頭と心で一致し、かつ純度100パーセントだからに違いない。なんてったって、いちご大福にもの言わせるほどのパワーである。
一方、痩せたいという願いは少しも実現しない。痩せたいという頭の願望と、食べたいという心の願いが矛盾しているからなんだろうな。ぴえん。
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