十三神徒(オラクル)【漫画あるある。ー外伝のラスボスが紹介される雰囲気ー】

ここは科学都市セルリア。
ここでは大臣などの権力は意味を成さず、全ての権利は最高峰の科学者、ジンバルド博士に集中している。
ジンバルドはハズキ、デオジオと並ぶ国の三大科学者と呼ばれており、彼は主に人体の優れた場所を合成しキメラを作ること。
苛烈な場所にいたら人はどのように壊れるのかといった心理実験、2000年先の未来が見えているという機械工学による都市開発が主だ。

さらに、最近ではありとあらゆる病気を完全に治癒する夢の新薬、名を『マイウェイ』という大層なものだ。
試作段階なので、投与された患者は腕に時計のようなものをつけ、19時になるとアラームが鳴り、研究所に投薬しに行かなければならないらしいが、それでも良薬には違いないだろう。

しかもその薬は人に紹介し、セルリアに住むことで紹介料が貰えるという謎のおまけ付きだ。
その紹介料目当てでセルリアに移り住む人がいるほどこの都市も、薬も人気になりつつある。

「そんないい薬には思えないけどね…」

旅の薬師だろうか、その男はかなり現代的な服装をしているセルリアの人々からは明らかに浮いた格好で、着物を着用し、黒髪の長髪に腰には刀、薬入れとして使っているカバンを持ち歩いている。

「騙されてる気がするなぁ…みんな。君みたいに投薬を拒否したり色々疑念を持ったりするべきだよね、アキラくん。」

アキラと呼ばれた少年はその薬師の男の言葉に同意するように頷く。

しかし、彼はその薬師に逃げることが難しいと続ける。

「難しい?ただの科学都市でしょ?君のその目立つ青い乗り物で走って逃げたらいいと思うけども…」

薬師の男はアキラの乗っているバイクのような乗り物を指さして指摘するが、それでも嫌がっている様子だ。

「そう簡単にはいかない。ここにはジンバルドを守る護衛の十三人。名を『十三神徒(オラクル)』という。その軍団はヴァサラ十二神将とも、カムイ七剣とも肩を並べると言われてるんだ!!」


鍔迫り合いになっているのは小柄な少年だろうか。
随分と傷が多い様子だ。
このままでは死んでしまうと誰もが思う光景だろう。

「うあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

突然その少年が絶叫し、刀の速度と力が飛躍的に向上する。
そのスピードは敵を一瞬で切り裂き、力は周辺にクレーターができるほどに。
驚くべきはその後だ。
明らかに死んだであろう敵達がゾンビのように立ち上がり、少年に従う。

「君らも育てなきゃいけないなんてね…絶望だよ…」

神徒π (オラクル・パイ【No.13】:『絶望』のゲーデ)

「この人数相手にてめぇ一人?舐められたもんだな!」

「へへっ、殺してくださいってか?」

目立つようなの黄緑の長髪で物思いに耽っている男の前には盗賊達。
たった一人で盗賊団に出会うとは不幸だ。
しかし、男は低く響く声で男達を脅し返す。

「大したハンデじゃないさ、それよりもおたくらが助かるかが心配だな…」

その言葉に逆上した盗賊団は男を斬ろうとするが、すでに大鎌で体と胴が離されていた。

「え?」

「あれ…俺の身体が…え?」

「だから言っただろう」

男は獣のような目で盗賊団を睨む。

神徒ξ (オラクル・グザイ【No.12】:『聖獣』のデウエス)


「ヒャハハハハ!逃げても無駄なんだよ!ヒャハハハ!」

「な、なんなんだよあいつは!」

「逃げられねぇ!誰か助けてくれ!」

「まただ!またあれが来るぞ!」

「ヒャハハハ!」

逃げ惑う人々を暴風が襲う。
暴風と共に現れたのは狂気的な目をした男性。
持つ刀には竜巻を纏っている。

「ヒャハハハ!楽に死ねるなんて思うなよ!!」

男は刀を思い切り振る。

神徒ν (オラクル・ニュー【No.11】:『暴風』のマタサブロウ)


男はゆっくりと手袋をはめ、大量の敵がいる方を振り返り、何もない空間に手を翳す。

「何だぁ?手品師か?」

「そういう曲芸は実戦じゃ役に立たねぇんだよ!」

敵は技の発動を待たず男に斬りかかるが、その斬撃を何もせず体で受け止める。いや、受け止めるというのには語弊がある。刀は彼が着ているカラフルすぎる独特の服と一体化しているのだ。

「手品とは言ってくれるね。次は刀を出す手品でもしようか?」

男が指を鳴らすと敵の背中から刀が生え、心臓を貫く。

「ンフフ、チョロいチョロい♪」

神徒μ (オラクル・ミュー【No.10】:『錬成』のノーム)


「お、おい…俺たちはどこから狙われてるんだ!」

「わかるかよ!逃げろ!」

「逃げるってどこへ!!」

「銃の届かないとこだよ!」

「そんなところはないんだな〜♪」

木の陰から銃を構えている女性は姿すら見えない逃げる人々の頭を気配だけで射抜く。
その距離は絶対に普通の人では察知することは愚かそこに人がいるとすらわからないほど離れていた。

「気配ってものは口ほどに物を言うよね〜♪」

神徒λ (オラクル・ラムダ【No.9】:『魔弾』のリリス)


「天罰とはこういうものじゃて…」

老人は刀から空に光を放つと、その光が空中で枝分かれし、周辺の者に大量に降り注ぐ。

「悪しき者、貫かれ、善き者、生きる」

「悪しき者、即ち…言うこと聞かぬもの…我、唯一神なり」

老人は光で拘束した者を斬り倒していく。

神徒θ (オラクル・シータ【No.8】:『堕天』のソロモン)


「誰でもいいからやつの拳を止められる防護壁を張れ!」

「無理ですって!」

「逃げましょう!」

「ああ?逃げる?そんなこと許すかよ!俺の拳から逃げられるやつなんざこの世に一人もいねぇんだよ!」

拳を握る筋肉質な中年男性の腕に熱がこもる。

「溶けちまえ!オオラァッ!」

男が振りかぶったパンチは鋼鉄のバリケードを容易に溶かして敵を溶かす。

「ガハハハ!鍛えた拳は溶岩にもなる!」
神徒η (オラクル・イータ【No.7】:『溶拳』のフリート)


白衣にメガネの女性の周りには大量の人間のようなものがいる。
それは瞳だけを蜘蛛の複眼に変えられていたり、下半身をネズミのようにされていたりと、普通の人間とは明らかに違う。

「うーん…失敗みたいね…」

「次はどうしようかしら…カマキリ人間?松葉杖で四足歩行ってのも面白いわね…うーん。楽しみだなぁ…」

女性は動物の体を作りながらほくそ笑む。

神徒ζ (オラクル・ゼータ【No.6】:『悪療』のマギー)


「フン、阿呆みたいに敵が湧く」

「ま、お前らがどうにかこの街を潰そうと躍起になっていることも、俺には関係ないけどな」

赤髪緑眼の美しい男は、手に持っていた糸で敵の体を絡め、動きを止めてからゆっくりと絞め落とす。

「フッ、その程度の実力で国家転覆?哀れなやつだ」

男は皮肉交じりに笑うと遺体を繭状にし、木にくくりつける。

神徒ε (オラクル・イプシロン【No.5】:『美繭(びけん)』のクレイル)


「Casse-toi(消えろ。)」

異国の言葉だろうか、女性は刀を抜いた瞬間に目にも止まらぬ速さで目の前の男を切り裂く。

その速さと正確さはまさに達人そのものだ。

「正々堂々と来たことだけは褒めてやろう…なーんて!気持ち悪いんだよクソが!」

女性が振り抜いた刀のスピードが早すぎたのか、死体から血が吹き出し雨のように降り注ぐ。

神徒δ (オラクル・デルタ【No.4】:『血雨』のティタニア)


「〜♪♪♪」
ヴァイオリンだろうか。
綺麗な音色だ。
弾いているのは線の細いいかにも貴族な男性。

「うわっ!」

「なんだ!?」

この街で亡くなって長い人々の骨だろうか、地中から這い出て男に従い、周囲の人間を殺していく。

「すまないね…僕の音色を聴くには死ななければならないんだ」

男は全員が地中に引きずり込まれたのを眺めるとヴァイオリンの演奏を止める。

「逝ったかい?なら、演奏会を続けよう…」

神徒γ (オラクル・ガンマ【No.3】:『静魂』のレクイエム)


「うおりゃあああ!これこそが力!これこそが武力!」

「ぐわあ!!」

「ぎゃあ!」

「うわああ!」

大声で叫ぶ男の長いコートから無数の銃が出現し、敵を蜂の巣にする。

その銃からは五神柱全ての属性の弾丸が発射されているようにも見える。

「これこそが力なんだ!俺の体内には五神柱全てが流れてるんだよ!」

男は豪快に笑う。

神徒β (オラクル・ベータ【No.2】:『極砲』のアメミット)


男はあぐらをかき、何やらブツブツと呟いている。

「全ては過去に回帰し、いずれ忘却す…」

「あ?」

「何だぁ?俺達のこと見てもいねぇ…」

「知識、戦、記憶…即ち無…いやそれなら…俺は…」

「「「やっちまえ!」」」

刀を振り上げた男達はその男に斬りかかるが、一人一人違う極みで仕留められていた。

居合だろうか男の刀を振る速さも誰一人見ることができない。

「『極み』とは『知』で補填するもの…」
神徒α (オラクル・アルファ【No.1】:『追憶』のアルジャーノン)


「なるほどね…ちょっと骨が折れそうだけど…いけるかな…」

薬師の男は話を聞くと、アキラと都市を離れようとする。

「だから!抜けたらまずいって言ってんだろ!」

アキラの怒りに薬師の男は柔らかく笑う。

「私の名は廉。旅の薬師ですが、知り合いがいます…優秀な知り合いたちがね…その人たちは過去の隊長さんだったり違ったり。ね?心強いでしょう?」

アキラの動揺を察したのか、廉と名乗った薬師の男は敬語で伝える。

「私一人では少し骨が折れそうなのでね、彼らに助けてもらうことにします…ヴァサラ軍の歴代隊長が集まればいいのだけど」

「ヴァサラ軍!?ヴァサラ軍なのか!っておい!置いてくなよ!」

「早く歩かないと日が暮れますよ〜」

「おい!」

二人は希望を求めてヴァサラ軍の本拠地へと急ぐ。

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