ジョン・レノン 失われた週末(ネタバレあり)
先週の映画の日に、THE LOST WEEKEND ジョン・レノン 失われた週末 鑑賞しました。
「失われた週末」は1973年秋から1975年はじめにかけて、ジョンとヨーコが別居していた1年8ヶ月の期間のこと。
その時期を、ジョンはヨーコ公認の愛人、メイ・パンと共に過ごします。
ジョンの生涯を振り返ると、「失われた週末」はヨーコと離れてその寂しさで
自暴自棄になり、お酒にドラッグにはちゃめちゃな、寂しい暗黒時代として捉えられることが多い印象です。
が、実はそうでもなく。
その間、多くのミュージシャンやアーティストと交流し、旺盛な想像力を発揮した
充実した時代でもあったということがわかってきています。
この映画は愛人のメイ・パンから見たジョンの活動、そしてジョンの素顔。
二人の間に起こっていたことが描かれています。
ここ数年は、SNSや音楽コラムなどで「失われた週末」でのエピソードを目にすることが増えており
確かに悪いことばかりではなかったのかも・・・と思うようになっていたので、
今回の映画はとても興味がありました。
蓋を開けると、想像以上でびっくりの内容でしたが。
※以下、ネタバレあり。鑑賞予定の人は注意※
ジョンのくつろいだ顔、メイのしあわせそうな笑顔
長い間メイはあくまでもジョンの愛人であり公私に渡る秘書、という認識でした。
性的なこと含め、私生活や仕事などあらゆる生活をサポートする役割。
あくまでもヨーコに任命された一時的な役割で、ビジネスとしてのつながりだったと思っていました。
が、映画を見ると、決してそうではなく。ジョンとメイは真剣に愛し合っていた。
最初、一時的な愛人としてメイをあてがったつもりだったヨーコが
予想外の展開に動揺するほどに。
当然ですが、物事は一つの側面からだけで判断することは難しいもの。
ましてや人間関係、特に恋愛に関しては一方の話だけではわかりかねることも多いものです。
この映画もあくまでもメイから見たジョンとの真実のわけで、
ジョンがいなくなり、ヨーコも高齢になった今
本当の本当を判断することはできないのですが
それでも散りばめられた映像からジョンとメイの間には確かに深いものがあったのだということが伝わってきます。
ジョンのくつろいだ表情にメイの心から嬉しそうな顔を見ていると
二人は恋人同士で、充実したすごくいい時間を過ごしていたんだなあと感じました。
また、残されている写真や映像から、一般的に事実と言われてきたことの中には相違があることもわかりました。
(例:ジョンとメイが一緒にいたのはLA滞在中だけではなく、実はNYに戻ってからも二人で暮らしていた、とか、史実ではジョンがゲストとして飛び入りしたエルトンジョンのコンサートでヨーコと再会し、そのままヨリが戻ったとされていますが、実はコンサート後もしばらくメイと暮らしていた、とか)
そんな貴重な映像や写真も多く、とても見応えがありました。
何よりショーンが生まれる前にもこんなくつろいだ顔をしたジョンがいたことを知れたのは本当によかったです。
で、ジョンの本当の気持ちは・・・
二人のそんな日々はある日あっけなく終わりを告げます。
別れに至るまでの詳細はジョンがいない今、ジョンの本音がどこにあったのか
本当のところはわかりません・・・
ただ、個人的に一つ気になったシーンがありました。
NYのアパートでジョンが描いた1枚のイラスト。
老後の太ってお腹の出たジョンが好きなものに囲まれてくつろいでいる。
雲の上にはメイがいて、メイの隣には二人の家があり、メイが家を守っているというものです。
これを見たとき、好きなものに囲まれているはずなのに
なぜジョンの隣にメイはいないのだろう?
そう思いました。
ジョンは、どこかでメイとはずっと一緒にいられない
一緒に年を重ねることはない
そうわかっていたのかな・・・
ジョンの隣にはもちろんヨーコもおらず
2匹の猫がのんびりお昼寝していました。
そこに人は誰もいなかった。
みんなと年を重ねることのなかった、長生きできなかった
ジョンと重なるものもある気がして、少し切なくなりました。
この映画は ひとつの恋の始まりと終わりを描いたもの
でもそれだけではなく・・・
この映画はひとつの恋の始まりと終わりを描いたもの。
ここには確かに心のふれあいがありました。
同時に、アメリカでの活動に行き詰まり、ヨーコとの関係も不安定だったあの時期メイは大きな救いでもありました。
ヨーコと出会い、べったり活動する中で置いてきたものを
取り戻す時期でもあったのかな。
ポールとの再会や、さまざまなミュージシャン、アーティストとの交流など
メイがこの時期のジョンを陰ながらサポートし続けてくれたおかげで
生み出されたものもたくさんあります。
前妻シンシアや息子のジュリアンとの再会もメイの力添えがあってこそ。
今も続く、メイとジュリアンのあたたかなつながりには涙が出ました。
ジュリアンは幼い頃から大変な経験をしてきました。
そんなジュリアンのそばにメイがいてくれて本当に良かった。
たらればの話になるけど・・・
たらればの話をしてしまうのは無粋ではありますが
もしジョンがヨーコのところに戻らずメイと一緒にいたら・・・
ビートルズ再結成はないにしても、何がしかの化学反応が起こったかもしれない。
新しいレノンマッカートニーの作品が聴けたかもしれない。
他のミュージシャンたちと曲を発表することもあったかも。
ジュリアンともますます仲良くなり、一緒に音楽活動したり。
旺盛な音楽活動を展開していたかもしれません。
そんな現実をこの目で見てみたかったな、という気持ちもやっぱりあります。
でもやっぱり、ジョンはヨーコがいて、ショーンが生まれて。
それがしあわせだったのかもしれません。
ヨーコが隣にいてこその ”ジョン・レノン”
今となっては分からないこと。
メイはとても聡明で、思いやりに溢れた素敵な女性。
メイが、映画の冒頭で
後年別の男性と結婚して生まれた子どもたちに向けて
「昔は母さんもイケてた」と語りかけていたけど
今も十分過ぎるくらいイケていたよ
表に出てこない、こういう歴史があったということ
その一面を知れて本当によかったです