二匹の猫と楽しい毎日-2(隣のデブ子がいなくなった)
(2)デブ子がいなくなった
隣人が引っ越して行った後の、家は窓ガラスが開け放たれ、<がらん>として、寂しさがあふれていました。
むろん、そこにはデブ子はいません。
家の中に入ると、リビングにはデブ子がいつも使っていた<エサ入れ>や<飲み水入れ>、そしてデブ子と遊んだ<おもちゃ>がソファの上に散らばっていました。
体全体から力が抜けてしまいました。
「ペットロス」
何かで見たその言葉が頭の中に浮かんだ。
そしてため息が出た。
「何してんのよ。いなくなったものはしょうがないじゃない。大体うちの猫じゃないんだから」
妻は平気なようだ。
午後も腑抜けた状態だったので、妻に連れられて映画を見に行きました。
映画を見てもあまり気持ちが入っていきません。
その後、レストランで食事をしたが、何を食べてもおいしくない。
そうそうに帰宅しました。
家に着くと、ふと目が門柱に吸い付けられてしまった。
一瞬<デブ子>かと思ったが、蛍光灯の光が木に反射して動いただけでした。
「ふー」とため息が出る。
「情けなわいね。猫嫌いだったくせに」
妻の叱責。
その日は酒を飲んでも酔えないままベッドに入りました。
翌日、妻はデブ子が使っていた<食器>や、<水入れ>、<おもちゃ>をまとめてゴミ箱に捨てました。
女性ははっきりしている・・・そんな生き物なんだと感心しました。
私は相変わらず「ペットロス」の状態。
情けないことに時々、窓から、空き家になった隣家を覗いていました。
・・・なんかの拍子にデブ子が戻ってこないか、と・・・
「失恋した後、男はグダグダと苦しむが、女性はさっさと次を探す」
誰かがそんなことを言っていたように思う。
翌日、妻とスーパーに買いものに行ったとき、ついペットフードの棚の前で立ち止まってしまったら、「なにしてんのよ」とまた妻に言われた。
翌日会社に行った。
それなりにいつも通りに頑張っているつもりだった・・・が、
「どうしたんだ。夫婦喧嘩でもしたのか。元気がないな」
上司が僕の目を覗いて聞いてきた。
「いえ」
答える声にも力がない。
「具合がわるいのですか」
隣のOLも心配そうな顔をして覗き込んだ。
「大丈夫」
上司は「体調が良くないなら早退してもいいぞ」と優しい言葉をかけてくれた。
言われるたびに頑張ってみたが、体に力が入らない。
そんな一日だった。
そして、その日も家に着くと、デブ子がいないかと、門柱を見てしまう。
家に入るとソファアにデブ子が寝転がっていないか、目で追ってしまう。
そんなむなしい一週間が続いた。
しかし土曜日友人と会って、夕方家に帰ったら、
とんでもない事が起こっていた。
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