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二匹の猫と楽しい毎日ー9(子猫とそらの対面)
【前回】妻の友人の洋子さんが子猫を置いて帰った。
「どうしよう」
僕は思わずつぶやいた。
「<そら>の時とおんなじようにすればいいのよ。ミルクや缶詰もあるでしょ。それからベッドだって<そら>のお古があるから」
妻は当たり前のように言った。
少しして子猫が目を覚ました。
箱から出して、そっと畳の上に置いた。
「みゃあ~」
可愛い鳴き声。
思わず笑顔がほころぶ。
・・・と思ったとき、突然後ろで
「シャー」
という音が聞こえた。
振り向くと<そら>が口を大きく開けて威嚇している。
今にもとびかかろうとするような姿勢なので慌てて子猫を抱き上げた。
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「おーい、大変だぞ!」
キッチンにいる妻に声をかけた。
「どうしたのよ」
「<そら>が怒っている」
「どうして」
「どうしてって言っても・・・。<そら>を見てみて」
妻が部屋から飛び出てきた。
「<そら>ちゃんどうしたの」
妻が<そら>を抱き上げた。
<そら>は抱かれたまま、今度は妻に向かって「シャー」と吠えた。
妻は一生懸命<そら>をあやしている。
どうも<そら>はこの子猫がいるのが気に入らないようだ。
「子猫を私の部屋に入れて」
妻に言われ、子猫を箱に入れて妻の部屋に閉じ込めた。
「いきなり知らない猫がやってきたから怒ったのじゃない」
「もしかして自分の縄張りに入ってきたから」
「そうかもしれない」
僕はすぐにネットで「多頭飼い」について検索。
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「猫も嫉妬する」
「二匹目の猫を飼うときは、あくまで先住猫を優先にするように」
「二匹目は先住猫の縄張りにあとから入るという事を忘れてはいけない」
「最初は部屋を分けてお互いの生活空間を確保する」
「別々のトイレを用意する」
「先住猫に慣れさせるためには、後から来た猫をケージに入れる」
「猫にも相性がある」
・・・色んな注意が書いてある。
「まいったなあ」
僕は二匹の猫を飼うのが大変なのに気づいた。
確かに、自分の家にいきなり他人がやってきて住み込むのは嫌だ。
<そら>が怒るのも当然だと思った。
当たり前だが、猫といっても自己主張はある。
「人権」ならぬ「猫権」といっていいかもしれない。
「<そら>が可哀想だから、あの猫は洋子さんに返そう」
妻に言った。
「嫌よ。あんなに可愛いのに」
「相性が合わなかったらどうするの」
「どうやって相性を調べるのよ」
「わからない」
「飼わなければ判らないでしょ」
・・・・・・・・・・・・・・
結局飼ってみることになった。
「トイレとケージとベッドを買ってきて。当分の間は子猫は私の部屋で飼うから」
妻に言われてすぐにペットショップに走った。
結局、新しい子猫の道具一式を買い揃え、妻の部屋にケージを組み立てベッドやトイレ、食器などを置き、その中に子猫を入れた。
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暫くの間、妻は自分の部屋で子猫の相手をしていた。
晩御飯の時に部屋から出てくると、<そら>は妻の体の臭いを嗅いでいた。
そして時々妻の部屋の扉の前で鼻を鳴らし、ひっかくようになった。
幸い妻の部屋は玄関の横にあり、キッチンとの間にもうひとつ扉があるので、それも閉めた。
<そら>は不安なのか、その晩ずっと僕の布団の上で寝ていたようだ。
朝、目を覚ますと<そら>の顔が自分の顔の横にあった。
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