童話小説「ガルフの金魚日記48」
秋ちゃんが、手になにかを持っています。あれはなんでしょう。
「ガルフ、ここにテルテル坊主をつっていい」
「いいですけど、そのかわいそうなお人形は、てるてる坊主というのですか」
秋ちゃんは、出窓の梁に、まぁるい頭に三角のからだ、首からひもでくくられたお人形を、つるします。これじゃあ、首つりです。いたくはないのでしょうか。ぷくー。
「はい。かまいませんが、それはなにをするものなんですか」
「明日お天気になるように、てるてる坊主さんにお願いするの。明日、三年生になって、初めての遠足があるの。みんなで連絡船に乗ってね、いくの。だからお天気になってほしいの」
秋ちゃんは、てるてる坊主さんに手をあわせました。
「あしたのおてんきですか」
ぷくは、西の空と東の空にうかぶ雲をみました。
「テレビの天気予報は、朝は曇りで、そのあと雨がふるっていってた。だから、てるてる坊主さんにおねがいするの」
秋ちゃんは、なきだしそうな、かなしい顔をしています。
ぷくはいいました。
「あしたのおてんきですけど、朝からピッカピカの晴れです。遠足はきっと楽しいとおもいますよ」ぷくぷく。
「ほんとう。うれしぃー」
「ぷくは、ここでずーっと空をみてきました。この雲なら、だいじょうぶです」
ぷくは、胸びれで太鼓判をおしました。
「やったぁー。ガルフ、ありがとう」
秋ちゃんは、ふんふんと鼻歌を口ずさみながらいってしまいました。
からだをフリフリして、秋ちゃんを見送ったてるてる坊主さんがいいました。
「そんな無責任なこといっていいんですか」
「その声は、てるてる坊主さんですね。もちろん、だいじょうぶです。ぷくはなんねんもこの出窓で、空や雲をみてきました。だからわかるのです」ぶくぶく。
「ここはそうでしょうけど、秋ちゃんたちが行く、遠足の場所は、ここらずーっと遠いところだよ。ぼくの予感では、雨のような気がするのですがねぇ…」
「えっ、このへんじゃないの。とおいところって…」
「連絡船に乗って、お城公園だそうです」
「それって、ここからは見えない…」
「はい。見えません。遠い、遠いところです。立派なお城のある公園だそうです。パンフレットを見せてくれました」
「ああー、どうしよう。こまったなぁ」ぷく。
次の日、秋ちゃんはリュックサックと水筒を持って、元気よく学校に行きました。
そして、夕方になって、秋ちゃんは遠足から帰ってきました。そして、ぷくにいいました。
「ガルフのウソつき。お昼から、雨がふってきた。それもどしゃぶり。カサもってなかったし。ぬれた。でも、ケンちゃんがカサかけてくれたの。うれしかった。ガルフのおかげね。でも、これからは、ガルフのいうこと聞かないことにするね」
秋ちゃんは、ふんふんと鼻歌を歌っていきました。
ぷく、ぶくぶく。
明日の金魚日記へつづく
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