童話小説「ガルフの金魚日記11」
きのう、ブチネコに襲われたとき、ネコはぷくのエサ箱を金魚鉢にひっくり返して逃げていきました。
ぷくはそのエサを、もったいないのでパクパク全部食べてしまいました。
そのせいなのでしょうか、今日は朝からお腹が痛くてしかたがありません。金魚鉢の底でお腹を抱え、静かに寝ていると、
「ガルフ、へんだよ。よこになってる」
夏くんが棒を片手に叫んでいます。
「何をする気でしょうか。とても気になります。ぷくー…」
夏くんは金魚鉢に棒を突っ込むと、ぷくをツンツン、つつきます。
「いたい! やめてよ! グブグブ」
でも、夏くんはやめてくれません。
「お腹に当たったらどうなるの」
でも、夏くん、ぷくの様子を見て、にやりと笑いました。
ああー、あの笑い、あの顔。
これは不味いぞ。グルグル逃げ回りたいところだけど、こうお腹が痛くてはどうにも動けません。
それでしかたがありません。胸びれと腹びれで、お腹を抱えこむようにして、金魚鉢の底で体を丸め、動かずにじっとしていました。
夏くんは手にした棒を狙いすまして、ぷくの腹に向けてきます。
ぷくは、丸めた体をごろりと転がしなんとか棒の先をかわします。
ごろごろ金魚鉢の底をころがります。でも、それにも限界があります。
はーはー、息が上がってきました。
いっぽう、夏くんの棒のあつかいは、ますます研ぎ澄まされ、狙いは確かなものになっていきます。
ぷくも、むざむざつつかれるわけにはいきません。
胸びれと腹びれでお腹を守りつつ、尾ひれをひらひら動かし、夏くんの棒をなんとかかわしています。
夏くんがつんつんつつきます。
ぷくは、くにゅくにゅ、ころころ逃げます。
奇妙なかっこうの追いかけっこがはじまりました。
それも、やがて限界がやって来ました。
ぷくは疲れてしまいました。
夏くんの棒使いの腕前は上がる一方です。
とうとう夏くんの棒は、パンパンにはれたぷくのお腹に命中しました。
「ギャー」ブクブクブクー。
あまりの痛さに叫んでいました。と、同時にお腹に力が入り、
ブッ、ボワ~ン。
お腹が破裂したのかと思いました。お腹にたまっていたうんこが、一気に飛び出したのです。
「あー、すっきりした。ぷくぷく」
すると痛かったお腹が治っています。
「夏くんありがとう。君は名医になれるよ」
ぷーぷくー。
明日の金魚日記へつづく