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童話小説「ガルフの金魚日記1」
えー、ぷくぷく。
ごぽん、ぷく。
ぷくの名前は、いや、ぼくの名前は、ガルフといいます。
実は、ぼくは、キャリコ琉(りゅう)金(きん)という種類の金魚です。
朝顔形の金魚鉢の中で、飼われています。
これから始まるのは、ぼくの家族の話です。家族といってもぼくの本当のお父さんやお母さん、兄妹の話ではありません。もちろん、本当の親兄妹のことも、とても気になっているのですが、いまは、ぼくが飼われている、瀬戸内家(せとうちけ)の人とぼくのおはなしです。
瀬戸内家のお父さんは、冬(ふゆ)さんといいます。とてもやさしい、いい人です。ぼくを買ってきて、大切に育ててくれた人ですから。
そして、冬さんの奥さん、春(はる)さんです。ふたりは熱烈な恋愛をして、一緒になった、と聞いていますが、本当のことはよくわかりません。馴れ初めは後日、本人の口からじっくりと聞いてみたいと思っています。みなさんも聞いてみたいでしょう。
そして、冬さんと春さんの間には、子供がふたりいます。上の子がお姉ちゃんで、秋(あき)ちゃんといいます。この春から小学三年生になりました。
秋ちゃんは三年生になって、急におませになってきたようです。金魚のぼくから見ても、キラキラ耀(かがや)いていて、とてもかわいらしい女の子です。将来はとってもきれいな人になるのではないでしょうか。冬さんではなく、お母さん似でよかったです。ぷくぷく。
下の子は男の子で、今年から幼稚園にかようようになった夏(なつ)くんです。いたずらばかりしています。
幼稚園でガキ大将やっているようで、いつも子分を連れて、あちこち遊びまわっています。
子どもは元気がある方がいいといいますが、ぼくも困るほどです。ぶく。
この前なんて、ぼくのいる金魚鉢に棒をつっこみ、グルグル引っかき回され、しばらく目の玉がぐるぐるしていました。あのままもう少しかき回されていたら、気絶していたことでしょう。本当に困ったものです。
あとは、おばあちゃんの四季(しき)さんがいます。冬さんのお母さんで、いつも玄関横の出窓のそばに座り、ご近所のおばあさんやおじいさんと、ぽくぽくおしゃべりしています。
おしゃべりにつかれると、そのままお地蔵さんのようになり、こっくりこっくり舟をこぎ、お昼寝しています。
ですからぼくの家族は六人です。もちろん金魚のぼくも含まれています。
これからこの家族の毎日を、ぷくぷくお話しします。聞いてください。
明日の日記へつづく