童話小説「ガルフの金魚日記49」
きのうの天気予報は、大失敗でした。でも、秋ちゃんに、よろこばれました。雨がふって、それでケンちゃんのカサに、入れてもらったそうです。
秋ちゃんは、ケンちゃんが好きなんです。
よかったですね、ぷくぷく。
こんやは、とてもきれいな月がかかっています。満月です。一点のかけたところもない望月です。スーパームーンというそうです。
ぷくは、もちづきのかけたることもなし、というほうがしっくりします。だれかの和歌だそうですけど…。
「ねぇ、ガルフ。月がなくなるとどうなるの」
夏くんがきて、質問されました。
「そういうことは、春さんか、冬さんにきいてください」
「お母さんにきいたら、お父さんにききなさいって。それで、お父さんにきいたら、お母さんにききなさいって。ぼくどうしたらいいのか。ガルフどうしたらいい」
夏くんはかなしそうな顔をしてうつむいています。
夏くんは顔をあげました。
「ねぇ、どうなるとおもう」
「ぷくにはむつかしすぎます。夏くんはどうなるとおもいますか」
「月がなくなるとぉ…、お月見ができなくなる」
「ぶぶぶ、ぶく。そっ、そうだね。ぷくもきれいな月をみるのがだいすきです。だからお月さまがいなくなるとさみしいです」
そんなはなしを夏くんとして、なん日かたちました。
月がやせていき、とうとう今夜はお月さまがでてきせん。まっても、まっても見えません。お月さま消えてなくなり、ほんとうにまっくらのやみ夜です。
ちょっとこわいです。
虫の声も、ネコさんやカエルさんたちの声もきこえません。みんなもこわいのでしょうか。しずかに、じっとしているのだとおもいます。
このくらやみの中で、ザザザーっと、波の音だけがきこえてきます。
ぷくも金魚鉢のそこで、しずかにしています。
そして、目をとじて胸びれをぎゅっと、あわせました。
「あしたになれば、お月さまが顔をだしますように、夏くんの疑問がとけますように…」、とおいのりをしました。ぷくぷく。
夏くんがやってきました。ニコニコしています。
「月がなくなるとね、月におねがいすることができなくなる。それに、こいびとたちがデートできなくなるんだって。これ、おねえちゃんがいってた。それに、人魚さんがおうたをうたえなくなる。それから、オオカミさんが月をみながら、ほえることができなくなる。それから…」
夏くんがひとりでかんがえたのでしょうか。すごいです。いろんなことがわかったんですね。ぷくは、そうだよねぇって、きいていました。
夏くんは大きくなると、どんな青年なるのでしょうか。
次のもちづきのときに、お月さまにきいてみましょう。
ぷくぷく。
明日の金魚日記へつづく