見出し画像

模写の風景 画家の心 第24回「エドヴァルド・ムンク 叫び 1933年作」

 この絵を一度見たら、決して忘れることができない。それほどの強烈な衝撃を受ける。正直なところ、恐ろしく、気分が悪くなるほどだ。

 どうしてこんな気味の悪い絵が有名になり、みなが知ることになったのだろうか。
 ムンクはこの絵を描いた状況をこのように記している。

ふたりの友人と道を歩いていた。
日が沈みゆくそのせつな、
突然、空が血の色に染まり、
どこからか聞こえてきた叫び声が私の耳を貫いた。

 フィヨルドの上に広がる空は血の色に染まり、彼は恐ろしい叫び声に思わず耳を塞いだのだ。先を行く友人二人は何も感じていないようだ。
 ムンクはこの絵で心の内を表す「表現主義者」としての地位を確たるものにしたが、わたしはこの絵を模写していてこう思った。

 ムンクはゴッホになりたかったのだと。
 ゴッホはまったくの自然体で燃え上が糸杉や、渦を巻く太陽を描いた。
 ムンクはこの表現を必死になって模索し、悩み苦しんだ。
「なぜ、わたしの太陽は渦巻かないのだ」と。

 やがてそれができるようになると精神を病むようになる。表現主義者としての地位を得、絵が売れ、金持ちにもなったというのに…。

いいなと思ったら応援しよう!