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学芸美術 画家の心 第43回「梅原龍三郎 薔薇 1938年作」

梅原は古物に大変興味があり、中国に旅行した時にこの壺(万暦(ばんれき)赤絵(あかえ)壺(つぼ))が大そう気に入り購入したそうだ。そして帰国後、大好きな薔薇を生け、この絵を描いた。

模写「梅原龍三郎 薔薇 1938年作」F8

梅原の代表作として、裸婦像、薔薇(ばら)、富士、浅間山などがあるが、この薔薇絵は梅原が50歳になり、成就期に入り描かれた一枚だ。

この絵をよく見ると豪華な薔薇たちが貧弱に見えるほどこの壺は何ら劣ることなく、大きく胸を張り威風堂々とした存在感を示している。

画題は「薔薇」となっているが、梅原自身は薔薇よりもむしろお気に入りの壺を皆に見せびらかしたかったのではないだろうか。
それほどに気に入っていたということなのだろう。

梅原は言う。
「薔薇の絵はパリ時代から多くを手掛けてきたが、ついぞ上手く描けることがなく、この頃になって描きやすくなってきた」、と。

熟練した薔薇の絵とお気に入りの壺を描く。
この絵を描いているときの梅原は、最高の時間だったのではなかっただろうか。

実に羨(うらや)ましいことである…。

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